第11話 魔王はナルシストなクソ野郎 Part1
魔王の部屋に着いたハラユキ。
そこには、玉座に座る男が1人いた。
「ようこそ、冒険者よ。いや、底辺芸人とでも言った方が良いかな?」
何か、懐かしい声が聞こえる。
「魔王、いや、まさかお前は・・・」
「相変わらずキモい声で話しかけてくんなよ、ゴミ芸人が」
そこには、ハラユキが忘れたくても忘れられない、あの男がいた。
「久しぶりだな、ハラユキ。またタバコを口で消してみるか?」
そう、目の前にいたのは、かつてハラユキが世話になっていたダイヤモンドタウンの
劇場で大人気だった、アンボニーだった。
「お、お前が魔王だったのか?」
ハラユキは、驚きを隠せなかった。劇場にいた際、性格の悪さはモロ見えだったが、
魔王と感じさせるものは何も無かったからだ。
「気安く話しかけんなよ、底辺芸人が。テメーはここにいるだけでも
大罪に値するレベルなんだよ。ホント、城が汚れちまうぜ」
相変わらず、口が汚いアンボニー。
しかし、ハラユキには、もはやどうでもよいこと。
「本当に、魔王なのか?」
ハラユキは、にわかには信じられないので、念入りに確認しようとする。
「当たり前だろ、ここに座っているのが何よりもの証拠だ。それより、
お前はまさか、俺様を倒しに来たとか言うんじゃないだろうな?」
どうやら、魔王としてこの城にいる事は間違いないようだ。
「お前が、クリスタルを手に入れて魔王に?」
「その通りだ。おかげで強大な力を身につける事が出来た。
そしてこの城も作り、これから世界を牛耳ろうかと思ってな」
この城も、クリスタルの力で作り上げたのだろう。
しかし、厄介な奴が魔王になってしまった。
「せっかくだから、お前みたいなキモい底辺芸人が、
この城まで辿りつけた褒美に、俺様の話を聞かせてやろう」
突然、アンボニーは昔話を始めた。
「俺は昔から、女にはモテて仕方ない人生だった。
なんせ、こっちから迫らなくても、女からいくらでも来るんだからな。
だから、俺の好みの女は、片っ端から抱いてやったよ」
多くの非リアから反感買いそうな自慢話だった。
「そんでな、すっごく美人のお譲様が俺に恋したから、そいつも
抱いてやったんだ。キスもした事のない、完全たる生娘だったよ。
けど、1カ月もすりゃ、俺の手でド淫乱な女に開発してやったさ」
いつまでこんな話を聞かされるのかと、ハラユキはイライラしてきた。
おそらく、読者もイライラしてきた。
「ところが、そのお嬢様の親がけっこうデカい裏社会のボスでな、
お嬢様に手を出した事で、ボスは俺の命を奪おうとした」
ハラユキは、ざまぁと心の中で思った。
おそらく、読者も心の中でざまぁと思った。
「俺は追われた。命からがら逃げるのに必死だった。
けど、連中はいつまでも追いかけてくる。
とある森の中にも逃げ込んだが、あいつらはしつこく追いかけたきたよ。
万事休すだ。もうダメかと思ったさ。
しかし、神はイケメンを見捨てはしなかった。
俺が迷い込んだ森に、不思議な4つのクリスタルがあったんだ。
そのクリスタルを使うと、不思議な力を発揮する事が分かった。
そして、俺はこのクリスタルの力を使い、奴らを全員始末してやったのさ。
おかげで、俺は助かった。やはり、イケメンはこの世を支配する権利があるのだろうな。
その方が、女も喜ぶしな」
ただただ、アンボニーはウザかったが、そのクリスタルがいったい何なのか、
どこから来たものなのかは謎だ。
しかし、最悪な奴に手渡ったというのは事実のようだ。
「アンボニー、魔王になって、いったいどうするつもりだ?
すでに、劇場でもイケメン大スターとして成功しているだろ?」
ハラユキには、わざわざ魔王として世界征服する意味が無いように思った。
「確かに、俺は大スターだ。だが、俺は女には絶大な人気を誇るが、
男にはあまり人気が無い。まあ、男に人気が出ても嬉しくはないが。
しかし、どうせなら全ての人間を思いのままに操りたい。
世界を、完全に俺の思い通りにしたい、そう思ったのさ。
だが、一人ではしんどいし、クリスタルを1人で4つ使いこなすのは
大変だったのでな、3つは俺が見つけた女魔族を利用したのだ。
そいつらも、貴様のせいで今は戦力外だがな」
ハラユキは、今にも殴りかかりたい気持ちでいっぱいだが、追加で質問する。
「じゃあ、ミルフィーを何故あんな扱いしたんだ?
お前は、あの子の彼氏だったんだろ?」
アンボニーは、笑いながら話す。
「ハハハハ!!あいつか。そういやいたな、そんな奴」
信じられないような言葉を口にするアンボニー。
「あいつは俺の幼馴染でな、俺の事が好きだったんだよ。
だから、俺たちは付き合う事にした。
けどな、あいつは俺の彼女にもかかわらず、1度も抱かせなかったんだよ。
俺が彼氏なんだよ?
普通、処女でもすぐにヤらせるだろ。
それをあのバカは、結婚までそういう事はしないとかぬかしやがった。
無理やりヤっちまおうかと思ったが、それは俺の流儀に反するんでな、
どうせ愛人は余るほどいたし、この手に入れたクリスタルの力で、
あいつには城のバリア役になってもらったのさ。
まあ、それも大して役に立たなかったけどな。ハハハハハハ!!」
もはや、クズという言葉では言い足りないほど、アンボニーは腐っていた。
「元々お前の事は大嫌いだったけどな、今日は限界突破で嫌いになったよ。
おかげで、お前を始末する事にためらいは1ミクロも無くなった」
ハラユキは、怒りに満ち溢れていた。
「俺を始末する?お前ごときが?冗談は顔だけにしとけよハラユキ」
アンボニーは、他のクリスタルより、やや大きな黒いクリスタルの付いた
杖をハラユキに向ける。
「このペンタブラックのクリスタルの力、お前の体でたっぷりと味わえ」
その瞬間、炎がハラユキに襲いかかる。
「うわー!!!!」
ハラユキは、紙一重の所で避けた。
「おいおい、まだ序の口だぞ、このクリスタルは、強力な魔法を詠唱も無しに
出せる、究極のクリスタルだ。
このクリスタルのおかげで俺に逆らった奴は全て始末してきた。
さーて、まだまだ行くぞ!」
すごい勢いで炎を飛ばしてくるアンボニー、
ハラユキは、魔法を詠唱する時間を与えてもらえない。
「どうしたハラユキ、逃げるだけか?
では、そろそろ違う魔法も出しておくかな」
すると、今度は氷の魔法を飛ばしてきた。
「炎以外の魔法も出せるのか!?」
もはや、逃げるしか出来ない状況のハラユキ。
「おいおい、ちょっとはかかって来いよハラユキ。
これじゃ、ただの弱い者イジメになっちまうだろ?」
何とかアンボニーに攻撃を仕掛けたいが、近づく事が困難すぎた。
身を隠しながら、何とか方法を考えるハラユキ。
しかし、オリビアもいない今、打つ手が無い。
「隠れてばかりじゃ退屈だろ?これをくれてやるよ」
そう言って、アンボニーは杖を天に向ける。
そして、稲妻がハラユキの隠れていた位置へと落ちた。
「ぐあああああああああ!!」
直撃は何とか避けたが、大きなダメージが残る。
「おやおや、ずいぶんと痛そうだな~。なら、痛みを止めてやろう」
続けて、氷の魔法を放つ。
「ぐ、ぐああああああ!!」
ハラユキの体中を、冷気が包む。
ハラユキは、今にも気を失いそうな状態だった。
「苦しいかハラユキ?よし、ならちょっとだけ交渉してやろう」
「こ、交渉だと?」
「お前と一緒にいた、オリビアだったか?あいつを抱かせてくれよ。
かなりの美女だ。あれだけのタマを抱けるなら、悪くは無い。
もし抱かせてくれたら、苦しまずに一瞬で死なせてやる。
どうだ?悪い話じゃないだろ?」
クソ以下の交渉に、ハラユキは怒りをぶつける。
「ふざけるな!オリビアはお前のようなクズが抱いていい女じゃない。
それにな、それにな」
ハラユキは、力を振り絞って言い放つ。
「オリビアは、女が好きなんだよおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「だーーれが女好きかーーーーーーー!!!(怒)」
ものすごい勢いで、ハラユキは蹴り飛ばされた。
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