第10話 オリビアにだって、隠したい過去の一つぐらいある。 Part2
「ハラユキ、レメシスは私がやる。手をだすな」
「勝てるのか?」
「分からん。ただ、レメシスの強さは良く知っているつもりだ。
かなりの強敵である事も、当然な」
オリビアとレメシスは、しばらく睨みあった。
そして、同時に動きだす。
「おおおおおおおお!!!」
オリビアが、気迫で剣をレメシスに向け、振り下ろす。
「ふんっ!!」
それを捌くレメシス。
二人の剣が何度もぶつかりあい、両者一歩も引かない戦いを見せる。
「おお、これならいけそうだな!」
ハラユキは、オリビアが勝てると確信したかのように戦いを見守る。
しかし、様子が少し変わってきた。
「はあはあ、くそ・・・」
「どうしたオリビア、もう限界か?」
レメシスは息切れ一つ無い状態にもかかわらず、
オリビアは、すでに息切れが激しくなっていた。
「お、おい、どうしたんだよオリビア!?」
オリビアが弱くなった?
いや、違う。
レメシスの体力が異常なほど高いのだ。
「はあはあ、相変わらず、タフな体だな」
レメシスは、余裕の笑みを見せながら言う。
「それが私の自慢でな。逆に、お前は相変わらずスタミナが無いな。
そういえば、ベッドでもすぐにバテてたっけな」
オリビアは、悔しさと度々暴露される過去話にイライラしていた。
「おい、オリビア、手を貸そうか?」
「いらん!!こいつは、私が倒さねばならん相手だ!」
何を意地になっているか分からないが、オリビアはハラユキの力を借りる気は無い。
「無理するなオリビア。その男の手を借りてもいいだぞ」
レメシスは余裕を見せる。
それだけ、オリビアとの戦力差があるように見える。
「うるさい!お前には、絶対に負けん!」
オリビアは、がむしゃらにレメシスに向かっていくが、
体力が減ったこともあり、技にキレが無い。
「では、私もそろそろ本気を出していくかな」
レメシスは、一瞬でオリビアの懐に入り、剣を振る。
「ぐあっ!」
オリビアの左腕に、剣がかする。
「オリビア、大丈夫か!?」
オリビアはやや痛そうな表情をしているが、大きな傷では無いようだ。
「心配するな、大した事は無い」
しかし、オリビアがより不利な状況になった事は確かだ。
「まだだぞオリビア。本当の地獄は、これから始まるのだから」
その瞬間、ものすごいスピードでオリビアを攻撃してくる。
「な、なんという速さだ!!」
なんとか剣を裁くものの、防戦一方になり、オリビアは攻撃をさせてもらえない。
「どうしたオリビア、お前は逃げる事しか出来ないのか?」
勢いが加速するレメシスの攻撃。
やがて、裁ききれない分がオリビアの体のあちこちを傷つける。
「くっ・・・」
オリビアも、さすがに厳しいと感じたのか、レメシスに対して腰が少し引けていた。
「オリビア、無理するな!ここで死んだら意味が無い。俺も加勢するぞ!」
ハラユキが攻撃体制に入ろうとすると、
「やめろ!」
オリビアが止めに入る。
「なんでだよオリビア。このままじゃ、死んでしまうぞ」
オリビアが、落ち着いた表情で言う。
「ハラユキ、もしお前まで死んだら、誰が魔王を倒すんだ。
お前だけでも生き残れば、可能性はある。
だから、私がレメシスと刺し違えてでも、必ず倒す」
オリビアは、最悪死ぬ覚悟もしているようだった。
「美しい友情だな、オリビア。だが心配するな。お前たち2人共、
ここで死んでもらう。だから、同時にかかってきてもいいんだぞ」
憎たらしいほど、レメシスは余裕を見せていた。
しかし、レメシスの強さは本物。余裕があるのも頷ける。
「大丈夫だハラユキ、必ずレメシスを倒してみせる」
オリビアから強い闘志が感じられる。
オリビアの心は、決して折れてはいなかった。
「そろそろ、覚悟を持ってケリを付けなければな・・・」
オリビアは深呼吸をし、レメシスに視線を合わせ、冷静な顔つきで剣を向ける。
「やめておけオリビア、無駄だ。ここで降参しろ。お前だけは助けてやる。
降伏するなら、私の傍に置いてやる。そして、また愛してやるさ」
私には絶対に勝てないと言わんばかりの発言。
「悪いが、お前とヨリを戻す気はさらさら無い」
そして、剣を構えるオリビア。視線をまっすぐレメシスに向け、
勢い良く飛びかかる。
「愚かだな、オリビア。その攻撃は、私には通じない」
レメシスは、飛び込んできたオリビアの腹部目がけて、
剣を突き刺した。
「ぐはっ」
オリビアの腹部を、レメシスの剣が貫通した。
「オリビアーーーー!!!」
ハラユキの悲痛な叫びが飛ぶ。
「隙が大きすぎるな、オリビア」
これで終わった。かのように思えた次の瞬間
「ばかめ、刺されたのはワザとだ!」
オリビアは、体を犠牲にレメシスの懐へ飛び込む覚悟だった。
オリビアは、刺さった剣を左手で握りしめ、離さない。
「バカが、こんな事をしても無駄だ!」
レメシスは、剣を突き刺したまま、後ろの壁に押し込もうとした。
その時、
「ブタさんの串刺しだにょ~ん♪」
オリビアは、鼻先を指で押さえ、ブタの鼻のようにしながらギャグをかます。
「ぷっ」
すると、レメシスが!?
「ぶはははははははははは!!!!!!!!!!」
大爆笑し始めた。
「な、なんだソレは、オリビア、ふざけるなよ!ぶははははははは!!」
レメシスは、爆笑しているため、動きが止まった。
そして、オリビアは隠し持っていた短剣を出し、レメシスの胸を突き刺す。
「ぐあああああああああああああああああああ!!!!」
レメシスの断末魔が聞こえる。
「そ、そんな・・・こんな手段で、やられるとは・・・」
レメシスは倒れ、動かなくなった。
「オリビア、大丈夫か!?」
ハラユキは、慌ててオリビアに近づき、街で買った薬をオリビアの傷に当てる。
「ちょっと・・・無茶してしまったな。しばらくは、動けん・・・」
何とか一命は取り留めたが、とても戦える状況ではない。
「ハラユキ、ここからはお前一人の戦いだ。魔王を倒せば、世界は平和になる。
もうひと踏ん張りだ、私は大丈夫だから、すぐに行け」
オリビアはそう言うが、ハラユキは心配で仕方が無い。
「オリビア、いくら何でも置いては行けない」
しかし、オリビアは叱咤する。
「バカが!今、魔王を仕留めなければ、世界は救えないぞ!
私の心配は良い。今は、目的を果たせ」
そして、先ほどレメシスにトドメを刺した短剣を渡す。
「これを持って行け、少しは役に立つだろう」
ハラユキは、オリビアから短剣を受け取った。
そして、一人で魔王に向かう決心をした。
「じゃあ、行ってくるよオリビア。そして、魔王を倒してくる。それまで、待っててくれ」
ハラユキは、気持ちを切り替えて魔王に向かって行こうとした。
「ハラユキ、一つ言いたい事がある」
オリビアは、魔王の所へ向かおうとするハラユキを止めて、話し出す。
「言っておくが、私は基本ノンケだからな。あれはな、あの時の私は色々あって
精神的不安定になっていたのでな、ついその・・・そうなってしまったのだ。
人間、気の迷いが発生することなど良くあるだろう。
そう、あれは一時的な気の迷い。決して、愛だの何だのという話ではない。
ハラユキ、お前にも、分かるよな?」
「・・・・・じゃあ、行ってくる」
ハラユキは、スルーした。
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