第10話 オリビアにだって、隠したい過去の一つぐらいある。 Part1

魔王の城は、絵に描いたような、いかにもなデザインの立派な物だった。

こんなお城で、一度は住んでみたいと誰もが思うだろう。


「しかし、変だな」


オリビアが辺りを見渡しながら言う。


「何が変なんだ?」

「不思議なぐらい、城が無警戒なんだ。確かに、幻による世界で

バリアのような状態にはなっていたが、それにしても不用心すぎる」


城周辺には、兵士らしき者も、魔法使いらしき者もいない。

それどころか、門番すらいない。


「まさか、これもワナ?」

「どうだろう、少なくとも、城の外に敵の気配は一つも感じないんだ」


二人は警戒しながらも、立ち往生しても仕方ないと考え、

正門から堂々と入る事にした。

扉を開けてみると、普通に開いた。


「もしかして、留守なのかな?」


門を開けた先も、誰もいない。

本当に、留守なのだろうか。


「他に拠点でもあるのか?本当に気配が無いな」


もはや無人だろうという感覚になったため、

二人とも気楽な状態で城を奥の方まで進んで行く。


「本当に留守っぽいな」

「だな。別の場所を当たってみるか」


二人は城の入口まで戻ろうとした。が、次の瞬間


「くくく、まだまだ甘いんだな、オリビアは」


女性の声がする。


「だ、誰だ!?」


辺りを見渡すが、誰もいない。


「どこを見ている、私はここだぞ」


声のする方を見てみると、そこには金髪の美女がいた。

本当に、超1流モデルのトップオブトップとでも言いたいほど、すごい美女だ。

パリコレでも出ようもんなら、彼女以外は目に入らないと思うほどに。


「な、なぜお前がここに!?」


オリビアが、今まで見たこと無いような驚く表情で言う。


「相変わらずだなオリビア。本当に、あの頃と変わっていないな」


どうやら、二人が知り合いである事は確かだ。


「オリビア、友達か?」


オリビアは、慌てたように言う。


「し、知らん。こんな奴、見たことも聞いたこともない!」


オリビアは、キャラが変わりそうな勢いで慌てていた。


「何を言ってる?色々思い出もあるだろう。私たちは」

「だまれ!お前なぞ知らんと言っているだろ、レメシス!」


墓穴を掘るオリビア。


「やっぱり、知り合いだったか」


ハラユキがそう言った瞬間、なぜかげんこつが飛んできた。


「寂しいなオリビア。あの時、あれほど愛し合った間柄だと言うのに」


・・・!?


「言うなああああああああああああああああああ!!!」


ハラユキは理解した。

この二人は、過去に禁断の関係だったという事を。

そして、どこまで触れるべきか真剣に考えていた。


「オリビア、大丈夫だ。愛には、色々な形がある」


ハラユキなりに、気のきいた言葉だった。


「だまれ!」


綺麗なストレートが入った。


「相変わらず、感情が激しいなオリビア。普段は男勝りで短期で、どんな相手にもひるまず向かって行く無鉄砲ぶり、本当ににぎやかなキャラだよ、君は。

いつでもどこでも、人前では絶対に弱みを見せず、常に気丈に振舞っていたね。

ベッドの上では、あんなにお淑やかなのに」


とても、お子さんには聞かせられないような話をする。


「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!!!!!!」


オリビアは、顔を真っ赤にしながら叫んだ。

城全体に声が届く勢いで叫んだ。


オリビアは叫び倒して疲れが出たのか、ちょっと冷静になる。


「そ、そんな事より、お前は何故魔王のもとにいるのだ?」


レメシスは言う。


「魔王を愛してしまったのだ。あの方の、強大な力を目の当たりにし、

私では叶わぬと悟った。そして、その力に魅了されてしまったのだ」

「な、なに!? それほどまでに魔王は強いのか!」


魔王討伐と簡単に考えていたが、魔族のトップとして君臨している者だ。

元は人間らしいが、脅威に変わりはない。


「それで魔王のもとにいるというわけか。見損なったぞレメシス」


オリビアは、少し呆れたような顔つきでレメシスに言う。


「そうだ。私が、全てをささげても良いと思うほどに、魔王様は素晴らしい方だ。

だから、魔王様に仇名すものは、例えオリビアであっても、容赦はせんよ。

かつて愛した、お前でもな」


レメシスは、剣を抜いた。

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