第8話 クリスタルパワーと負のオーラ
ギルドへ向かう途中、オリビアは王の部下に呼ばれ、
城へと向かって行った。
そのため、ハラユキは1人でギルドへ行く事となった。
ギルドに着くと、そこには警察署長がいた。
「あっ、署長さん、お久しぶりです」
「ハラユキ君、やはり私の見込んだ男なだけはあるな。見事だよ」
「ところで、署長は何しに?」
「王様から呼び出しがあり、例のクリスタルが3つ集まったから、
ついに魔王のエリアに入る事が可能だと」
「えっ、あのクリスタルにそんな力があるんですか?」
「そうらしい」
「どこから聞いたんだろう?」
「何でも、王様の元へ訪れた、占い師の女性から聞いたらしい」
「・・・その情報、怪しすぎません?」
王様がうさんくさい情報をつかまされている気がしてならないが、
王様が3つのクリスタルを持ってきてほしいと署長に頼んでいたようだ。
署長はシューラから2つのクリスタルを預かっており、
ニケニケ討伐にて手に入れたターコイズのクリスタルと合わせ、
署長と共に、王様から呼び出された場所へ行った。
「来たか、ハラユキ」
指定の場所へ行くと、オリビアが待っていた。
「なんだ、オリビアも来ていたのか」
「ああ、これまでの詳細を、王様に報告していたのでな。
それで呼び出されていたんだ」
「なあ、魔王に会うためには、クリスタルがいるらしいんだけど、
どういう事なんだろう?」
「それなんだがなハラユキ、どうやら、魔王のいるエビルソイルという
場所に入るには、クリスタルの力を使って
エビルソイルの侵入を塞いでいるバリアを破らないといけないらしい」
「バリア?」
国がSランク指定としているエビルソイルという場所は、
バリアのようなもので守られているようだ。
それを破るべく王様や研究者達が試行錯誤してみたものの、
まったく打開策が無かった。
しかし、とある日に王の元を訪れた占い師が、
クリスタルの力を使えばバリアを破れると話し、
他に手も無いため、一か八かその方法で試すとの事だった。
しばらく待っていると、王様が複数の部下達とともにやってきた。
「例のクリスタルを持ってきたか?」
「はい、これが例のクリスタルです」
署長が、王様にクリスタルを見せる。
「おお、まさに占い師の言った通り、クリスタルは存在した。
魔王討伐は、もう間近なのかも知れんな。
よし、皆の者、エビルソイルへと向かうぞ」
ハラユキ達は、王様達と共に、エビルソイル付近へと向かう。
エビルソイルに近づくと、そこ一帯が大きなバリアのような物に包まれ、
中はぼやけて見えない状態だった。
「これが、エビルソイル・・・」
中の状態が見えない分、ものすごく不気味な雰囲気を醸し出していた。
近づいてみると、体がピリピリする。
さらに近づくと、電撃のようなものが走り、吹き飛ばされる。
「なるほど、これはやっかいそうだな・・・」
そして、王様はクリスタルをハラユキに渡す。
「あの、王様?」
「ハラユキよ」
「はい?」
「バリアの前に立ち、お前の自虐ネタを披露せよ」
・・・!?
「えっと、王様、わけがわからないです」
「ハラユキよ、このバリアはクリスタルだけでは破れん、
なぜなら、負の魔力が全体を覆っているからだ。
その負のオーラを破れるのは、負の力しかない。
そこで、ギャグ魔法が使えるハラユキであれば、
そのオーラを破壊出来るはずじゃ」
よく分からない理屈だが、それしか方法が無いならやるしかない。
しかし、こんな状況で多くの人の前にし、自虐ネタを披露するのはかなりキツい。
「い、いくらなんでも・・・」
躊躇しているハラユキに、オリビアが話しかける。
「ハラユキ、お前は何を目指している?」
「えっ?人気お笑い芸人だけど」
「そうだ。お前が目指す場所は、人気お笑い芸人だ。
いついかなる時でも、人を笑わせられる、お笑い界の大スターだ。
それを目指すお前が、たった自虐ネタ一つで躊躇してどうする?
お前のお笑いに対する思いは、その程度だったのか?」
そうだ。ハラユキは一流の芸人を目指しているんだ。
そして、いつか多くの人を大爆笑させるべく、日々頑張っているんだ。
たかが自虐ネタの一つや二つ、ためらってどうする。
「そうだな。なら、俺の自虐ネタ、たっぷりと聞きやがれ!!」
そして、ハラユキの自虐ネタショーが始まる。
「17歳の時、好きな子から告白されたんだ。そして、即効でOKしたんだけど、
その直後に他のカースト上位男女が10人ぐらい現れて、
これは罰ゲームなんだよ~んて言われたんだぜ!
俺は、悲しみのあまり、しばらく家に引きこもったんだ。
その後、その子が家まで来て、謝ってくれたんだよ。
そして、その子は本当は罰ゲーム関係無しに俺の事が好きって言ってくれたんだよ。
あまりの嬉しさに号泣して、大粒の涙を流しながら告白をOKしたら、
再びカースト上位男女が10人ぐらい現れて、
これは罰ゲームの追加オプションだよ~んて、言われたんだぜ!
それから、俺は2年ほど太陽すら見なくなったぜHAHAHA!!」
ハラユキは笑ってもらえると思って言った内容だったが、
あまりのむごい内容に、失笑状態になっていた。
あのオリビアですら、憐れみの目を向けている。
「や、やめて、俺をそんな目で見ないで・・・(泣)」
また、(泣)という古い表現を使った矢先、
クリスタルが光りながら宙に浮き、バリアに向かって進みだした。
「な、なんだ!?」
そして、クリスタルが向かったバリアの場所に空間が出来た。
「おお、これでエビルソイルに入れるぞ!
ハラユキ、オリビアよ、すぐにここからエビルソイルへ侵入するのだ!」
ハラユキとオリビアは、急ぎ空間へ入る準備をする。
そして、優しい目でオリビアが言う。
「ハラユキ、生きていれば、何かいい事あるからな」
ハラユキは本気で泣きそうになった。
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