第6話 筋肉は世界の共有財産 Part5

無事に陸まで辿りつき、どうにかシャルルの伯父のいた場所まで戻ってきた。


「おお、無事だったかい。」

「何とかね」

「洞窟で、何か分かったかい?」

「ああ、マリリンスを倒す手段を手に入れた」

「本当か?なら、シャルルの兄貴も助けられるのか?」

「うまく行けばね。ただ、簡単には行かなそうだ。

まず、あいつらの拠点となる場所まで行かないと厳しいが、

どうやって近づけばよいかが難しいんだ。」

「なるほどな。たくさんのマッチョがいるってんなら、

あんたらだとすぐに跳ね飛ばされちまうな。となると・・・」

「となると?」

「空から攻めるしか無ぇな。」

「空?どうやって?」

「実は、船にいいものがある。」


そう言って、シャルルの伯父は船の中にある倉庫まで案内した。

そこには、大きな筒のような物があった。


「これは何です?」

「かつて、海賊と戦った時に使った大砲だよ」

「大砲!?」

「そうさ。こいつに乗って、ドカ~ンと打てば、空から敵の中心部に行ける。」

「いやいや、飛ばされた勢いで死んでしまいますよ!」

「大丈夫だ、これもある」


シャルルの伯父は、傘を取りだした。かなり大きな傘だ。


「これは?」

「こいつは昔、一山当てようと開発した、大人数収容傘だ。

これ一つで10人は入るぞ!ただ、全然売れなかったがな!

おかげで借金がけっこう出来ちまったよ、はははw」

「はははじゃないですよ、これをどうしろと?」

「わかんねぇか?飛ばされた後、これを広げて無事着地よ!」

「無理に決まってんだろ!!」


さすがに無理がある。どう考えても無理がある。

しかし、オリビアが


「大丈夫だ。お前は一応主人公だ。多少の補正はあるだろう」

「何メタ発言してんの!だったら、一応ヒロインで戦闘力も高い

オリビアが行けばいいじゃん!」


オリビアの熱い拳が、ハラユキの腹部に直撃した。

そして、ハラユキは大砲と傘を利用して、敵の本拠地へ行く事にした。


「ハラユキ、出発前に筋肉弱体化兵器を見せてくれ、ちょっと気になる事がある。」

「気になる事?」

「ああ。ちょっとな。」


ハラユキは、持っていたキンニックヘボビタンEをオリビアに渡した。

そして、何かを調べた後、キンニックヘボビタンEを返してもらった。


「よし、これで問題無い。ハラユキ、さっそく大砲に入れ!」

「・・・いやだなぁ、飛びたくないなぁ」

「は や く や れ」


ハラユキは嫌々大砲に乗り、飛ぶ準備を始めた。


「おう、乗ったか。じゃあ、作戦はこうだ。

大砲でド~ンと飛んだら、傘バ~ンと広げて、兵器を敵めがけてポ~イだ」

「いや、言われなくてもそんくらい分かるわ」


大砲に、火が点けられる。


「発射カウントダウ~ン、10、9、8、ひとつ飛んで3.2」

「おい、ひとつじゃねえだろ!」

「1、ゼ」


どーーーーーーーーーーん!!


大砲は見事に飛んだ。


「カウント飛ばした上に間違えてんじゃねぇぇぇぇぇ!!!!」


ハラユキの悲鳴が、ちょうど良い感じにこだました。

カウントはおかしな事になっていたが、

シャルルの伯父の腕が良かったのか運が良かったのか、

マリリンスの拠点に向かってうまく飛んでいた。


「よし、そろそろ傘を広げるか!」


傘を広げてみると、傘に所々穴が空いていた。


「なぁぁぁぁんでだよぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


落下する勢いは止まらない。


「このままじゃ死ぬ!」


落ちれば確実に死亡確定レベルの勢いだ。


「うわあああああああ、死ぬううううううううううううう!!!!」


悲鳴を上げていると、それに気付いたマッチョ達が騒ぎ出した。


「何事だ!」

「マリリンス様ー、空から筋肉無き罪人が!」

「なんだと!?いますぐ捕まえろ!

まだ殺すな、奴は神聖なる筋肉死刑にて始末する」


マッチョ達が集まり、空を見上げる。


「我らが筋肉よ、風を呼び起こせ!」


全マッチョが一斉に胸筋を高速でピクピクさせる。

そのピクピクの勢いで、下から風が吹いてくる。


「おお、汗臭い風で煽られて(?)いる!」


マリリンスが殺すなと命令したおかげで、直下による死亡は免れた。

しかし、下には大量のギラギラしたマッチョがいる。


「よし、ゆっくり近づいて、こいつを使おう!」


ハラユキは、キンニックヘボビタンEを準備した。


「くらえ、マッチョ共!!」


ハラユキは、キンニックヘボビタンEを投げた。


「愚か者め、そのような物が通じるはずが無いだろ!」


マリリンスの目が光り、キンニックヘボビタンEは簡単に吹き飛んだ。


「あ、あれ・・・」


ハラユキは、顔を真っ青にしながら汗臭い風のクッションに乗り、

徐々に下りてくる。


「はっはっは!バカな奴だな。そんな堂々と変な物を投げれば、こちらだって

対応出取るに決まってるだろ。アホかお前は」

「し、しまったー!」


そして、マリリンスを始めとした多くのマッチョ達が、筋肉をピクピクさせながら

ハラユキが下りてくるのを待っている。


「お、終わったー!!(泣)」

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