第6話 筋肉は世界の共有財産 Part4
「待ちな二人とも、この洞窟を探索するなら、これを持って行け。」
「これは?」
「これは、水中でも10分間だけ息が出来るようになるアイテム、
ボンベーマークⅢだ。」
「何故これを?」
「この島を見た感じの構造から、おそらくだが時間帯によっては潮が満ちてきて
溺れる恐れもあるからな。俺の経験上、そうじゃないかと思ってな。
だから、念のためこれを持って行け。
ただし、10分しか持たないから気を付けろよ。」
シャルルの伯父さんから、携帯型酸素ボンベと思わしき物をもらい、
洞窟の奥へと進み、調査する事にした。
さっき散らばっていたマッチョ達の遺骨。
その秘密があるとすれば、マッチョ達を倒せる方法が分かるかもしれない。
そうなれば、マリリンスも討伐出来るはずだ。
洞窟を歩き続けて奥まで進んでみた。
しかし、特に目新しい物は何も無かった。
とうとう行き止まりになり、そこには大きな水たまりがあるくらいだ。
「なんだ、ここまでか。結局、何も無かったな。」
「何か手掛かりがあるかと思ったんだが、ただの洞窟でしか無いのか?
しかし、なんかすごく疲れたな。」
「えっ?そんなに歩いたか?」
「ああ、何というか、いつもより力が入らない感じがする」
体力おばけのようなオリビアにしては、めずらしい状態だった。
長旅で疲れたのだろうか?
洞窟は、決して大きいわけでもない。
ハラユキですら疲れていないのに、不思議な事が起こった。
「とりあえず、少し休憩しようか。」
二人は出っ張った石に腰かけ、ゆったりとしながら会話を始めた。
「なぁ、何でオリビアはA級ライセンスを取ろうと思ったんだ?
女性冒険者がそこそこいるのは知っているが、剣士や魔法使いの人でも、
女性で取れる人はほとんどいないと聞いてたし、
A級取るとより厳しい仕事が回ってきたり、国から厳しい仕事の依頼が
来るから、あえて取らない人も多いらしいけど」
「なぜそんな事を聞く?」
「いや、なんとなく・・・」
オリビアは、あまり話したくないのだろうか、顔をそむける。
「ま、まあ話したくなければ別にいいんだけど」
「・・・それは昔、」
オリビアが何か話しだそうとした瞬間、妙な音が聞こえてきた。
「なんだ、ゴゴゴという音が聞こえたような・・・」
すると、急に水面が上がってきた。
「な、なんだ!?」
突然、水たまりから溢れ出る海水。どうやら、それは水たまりではなく、
海と繋がっている穴だったようだ。
「やばい、このままでは!」
「すぐに戻るぞ!」
しかし。すごい勢いで海水は二人を飲み込む。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
二人は、穴の中へ吸い込まれていった。
二人とも、あわててシャルルの伯父からもらったマウスピースを装着する。
時間も限られているため、何とか逃げられる場所を探した。
「どこか、どこか助かる場所は!?」
冷静にいようとするも、焦りを隠す事は出来ない。
すると、オリビアがトントンと肩をたたき、指をさす方向を見た。
そこには、扉らしき物があった。
他に助かりそうな場所も無いため、一かバチか、その扉を開けた。
水中だったが、思いのほか簡単に扉が開く。
二人は、その中に入り、事無きを得た。
「よかった。中は空気が通っている。しかし、ここはなんだろう?」
「わからんが、ひとまずは助かった。ついでに、ちょっとここを調べてみるか」
謎の扉の中は、特に何も無いように見えたが、
良く見ると、下へ進む階段があった。
「なんだろう?この階段。」
「とりあえず降りてみるか。」
二人は、階段を進んでみることにした。
階段を下りると、部屋を一つ発見した。
「この部屋は何だろう?」
「暗くてよく見えないな。よしハラユキ、小さめの炎を出して、
このランプに火を付けろ。さっき使っていた、洞窟用のランプだ」
ハラユキは、ギャグ魔法を控えめに唱える。
「ち~さな、ち~さな、おならがプッ!」
ケツから、小さな火が出た。
「ちっ、汚ねぇ着火だ」
汚い方法ではあるが、ランプに火がついて周囲の様子が確認出来た。
「ここは、何かの研究所か?」
「そのようだな。何の研究に使われていたのだろうか。
中を詳しく調べてみる事にしよう。」
二人は研究所内をくまなく探索した。
すると、金庫のようなものを発見した。
「何か大事な物が隠されているのかな?」
「そうかも知れんが、こんな変な場所に造られている研究所だ。
よっぽど特殊な研究をしていたんじゃないかな。」
オリビアは金庫を開けようとした。しかし、まったく開く気配が無い。
「オリビアのオーガも逃げる腕力でもダメか」
「ハラユキ、遺言なら聞いてやる」
ハラユキのHPがかなり減ったところで、ハラユキが試しに開けてみる。
「あ、開いた」
「うそだろ!?何でお前のような非力人間に開けられるんだ!?」
金庫を開けると、中から1つの手帳が出てきた。
中を見てみると、以下の内容が書かれていた。
『この手帳を得た者へ。この手帳を手にしたという事は、
筋肉など無縁の者なのだろう。この金庫は、私が開発した特殊な金庫だ。
筋肉がある者には開けられん。
この手帳を受け取りし無筋の勇者よ、
この研究所の隅にある黒ずんだ箇所に手をあてよ。
さすれば、道は開かれよう。』
二人は、手帳に書いてある通り、部屋の隅にある黒ずんだ箇所を探した。
「あった。これだな。」
ハラユキは、その黒ずんだ箇所に手を当ててみた。
すると、突然研究所が揺れだし、黒ずんだ箇所が自動ドアのように開きだした。
「隠し部屋か?」
隠し部屋に入ると、爆弾のような物と取扱説明書が置いてあった。
「なんだこの説明書は?」
説明書を見てみる。
--------------------ここから説明書の内容-------------------------------------
この説明書を見ているという事は、筋肉無き者にて隠し部屋が
開かれたという事だろう。
そして、我々がこの世にいない状況になっている頃だろう。
ここは、マリリンスを討伐せんとする勇士たちによって造られた研究所。
マリリンス達の筋肉に対抗可能な兵器の開発を研究し続け、ついに兵器が完成した。
なんとか2つだけが完成したが、何かの時のために
1つは研究所の奥にしまっておくことにした。
そしてもう1つを持って、この国を守るべく戦いに出る。
奴らもそろそろこの研究所の事に気付き始めている可能性があるため、
早めに手を打つことにした。
しかし、奴らは筋肉の中の筋肉だ。失敗すれば、タダでは済まんだろう。
そこで、ここにもう1つの兵器と、取扱説明書を置いておく。
この兵器は、マッチョ達の筋肉を弱くする兵器、"キンニックヘボビタンE"だ。
これは、筋肉があればある者ほど効果がある。逆に、筋肉の無い者には無害だ。
これを使えば、マリリンスを倒す事が出来るだろう。
マリリンスは、側近も含めすさまじいまでの筋肉所有者だ。
いくら兵器が出来たとしても、簡単には太刀打ちが出来ない。
失敗する可能性の方が高いかもしれない。
だからこそ、ここに保険を置いておく。
この意思を受け継いでくれる勇者よ、この兵器で我々の仇を取ってほしい。
あと、この兵器は半径200メートルしか効果が無い。
大事に大事に使ってくれ。
これをフラグにするなよ。
絶対にするなよ!
--------------------説明書の内容ここまで---------------------------------------
フラグビンビンなメッセージまで残されるとかすごく嫌な感じだが、
これでマリリンスを倒す道が開かれた。
「なるほど、そういう事か。」
「そういう事?」
「さっきの洞窟で、大量のマッチョ達の骸骨を見ただろ?
あれは、もう一つのキンニックヘボビタンEを使用したんだ、
ここにいた研究員達がな。本当は、マリリンス相手に使いたかったのだろうが、
その前に洞窟で遭遇してしまったのだろう。
そして、やむおえず使ったようだ。」
「そうか、その影響でオリビアがやたら疲れやすくなったのか。」
「おそらくな。」
「研究員達は、どうなったんだろう?やっぱり・・・」
「言うなハラユキ、あのマッチョ達に立ち向かおうと決意しただけでも
立派な勇者だよ、研究員達は。」
二人は黙祷した。
「よし、これを持って討伐に行こう!」
「まてハラユキ。この兵器は1つしかないので、慎重に使わないとまずいぞ。
それに、下手に近づくと危ない。しっかりとした作戦を立ててからだ」
「そうだな。あのマッチョ達の巣窟に近づくのも危険だしな。」
「まだマウスピースは使える。この研究所から北方向に光がさしていたから、
おそらく外に出れる場所がある思う。一か八か、そこに向かおう。」
そして、二人は研究所を出て、北方向に向けて泳ぎだした。
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