第6話 筋肉は世界の共有財産 Part3

死刑当日、なんとしても生き延びるために、

筋肉無き体で筋肉を魅せるポーズで乗り切るしかない。

筋肉審査員が並び、2人は審査員たちの前に出される。

まず、シャルルの兄がマッチョを披露する。

なかなかの筋肉の出来だ。

審査員も、熱いまなざしで筋肉を見る。

シャルル兄のマッチョアピールが終わり、審査が終了する。


「審査を終了する。筋肉死刑、保留!」


どうやら、審査は終わったようだ。

助かったというより、延命といったところだろう。


「さて、次は俺か」


ハラユキがマッチョポーズを取ろうとしたところ、審査員長から声が聞こえる。


「死刑」


ハラユキは、無条件で死刑となった。


「なんでだよ!俺まだ何もやってねぇよ!」

「お前には、筋肉そのものが備わっていない。生かしておく必要もない。」


審査員たちは、筋肉無き者に対しては冷酷だった。


「筋肉は正義!だが、筋肉無き者は人に非ず!よって、筋肉死刑決行!」


マリリンスの掛け声とともに、

マッチョに輪をかけたマッチョな男達がハラユキを囲む。


「な、何する気だよ!?」

「今から、この素晴らしき筋肉達により、お前は圧死する。

人生最後に、最高の筋肉を味わいながら昇天する。

これは、せめてもの優しさだ。」


何が優しさなのかまったく理解できないが、ハラユキは絶体絶命の状況だ。


「お、終わった・・・」


ハラユキは、死を覚悟した。


「ん、何か転がってるぞ?」


1人のマッチョが、変な丸い物を拾った。

すると、その丸い物から突然光が放たれる。


「うわっ、まぶしーーー!!」


そして、たくさんの丸い物がコロコロと転がってきては、

それが片っ端から光り出す。


「うわーー!!」


あまりの眩しさに、マッチョ達は目を開けられない状態になった。

もちろん、ハラユキも同じく目をくらましていたが、

気がつくと、なぜか体が宙に浮いていた。

というか、誰かに運ばれているような状態だった。


「よし、救出成功!」


その声は、オリビアだった。

どこからか持ってきた荷台に乗せられ、ハラユキは運ばれていた。


「オ、オリビアか?今の何?目が痛いんだけど。」

「バーニングタウンで買っておいた閃光弾が役に立ったな。

あの街の武器関係の店は全て顔見知りなんでな。

お安く売ってもらったのだ。」

「よく買ってたな、そんなもの・・・」


とりあえず、オリビアのおかげで命拾いしたハラユキ。

筋肉の圧で人生最後など、絶対に嫌だ。


マッチョ軍団に囲まれていた場所からかなり離れたところまで来て、

ハラユキの目も元に戻ったので、少し休憩をする事にした。


「しかし、オリビアもよく助かったな」

「ああ、シャルルの伯父が何とかあの荒波を切り抜けてな、この島の裏側の

端に辿りついた。そこは、誰もいない場所だった。かなり不気味な場所ではあるが」

「不気味な場所?」

「ああ。だが、もしかすると重要な場所になるかも知れん」


何かあるのだろうか?

1時間ほど休憩を取った後、その場所へ向かい歩きだした。


オリビアに案内され、シャルルの伯父が待っている島の裏に位置する場所に来た。


「おう、来たか!」


伯父さんも元気そうで何よりだ。


「けど、ここは何なんだろう?薄暗いし、他の人は見当たらないし」

「実はこの先に小さな洞窟があるんだが、ちょっと見てくれ」


オリビアに案内されるまま、小さな洞窟を見つける。

そこには、多くの屍があった。


「な、なんだこれ!?」

「な、不思議だろ。こんなところに人間の屍が大量にあるなんて」

「もしかして、マリリンス軍団に殺された人たちなのか?」

「私も、最初はそう思っていたが、そうでは無さそうだ。」

「違うのか?」

「ここにある屍の周辺には、必ず何かしらの荷物がある。

その荷物内容から、こいつらはマリリンスの手下ではないかと思う。」

「え、そうなのか?なぜ分かるんだ?」


オリビアは、何か入れ物のような物を見せた。


「これは?」

「この入れ物、どこかで見たことがあったんだが、思い出した。

これは、トレフゴルドの名物である高級プロテインだ。」

「こ、高級プロテイン?」

「そうだ。1年前までは、トレフゴルドの名産物として一部のマニアには

喉から手が出るほど欲しいプロテインだったが、今はもう手に入らない。

それは、マリリンスが自分の分と、お気に入りの手下用に占領しているからだ」

「そ、そうなの?」

「ああ。どうやら、マリリンスのお気に入りはこのプロテインを飲む権利を

与えられる。そして、このプロテインボトルを所持する事は、

マッチョの中で高いランクのマッチョを意味する」

「はぁ・・・」

「つまり、よほどの事でも無い限りは、死刑になる事も無いだろう。

そんな奴の屍が、この洞窟には山ほどある」

「たしかに。そこかしこにボトルが散らばってるな」

「この洞窟には、何か秘密があるはずだ。それが分かれば、マリリンスの討伐に

役に立つかもしれない。」


ハラユキとオリビアは、この洞窟に何か秘密が無いか探る事にした。

すると、シャルルの伯父さんが声をかけたきた。


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