第5話 身も心も支配された街、リンストル Part1

リンストルに着いたハラユキとオリビア。

街は異様な雰囲気が漂っていた。


「みんな、怯えて暮らしているようね」

「ヤバい環境だとは思ったけど、予想を上回ったよ」


住人は皆、死んだ魚のような目をしている。

ここを支配しているアスタロットンは、相当危険な奴だということだ。


「とりあえず、情報集めからするか」

「よし、行って来い」


オリビアの、容赦ない命令が下る。


(くそー、早く仕事終えて自由になりてぇ)

と、そんな事は口が裂けても言えないので、心の中で叫ぶハラユキ。

まずは街の人にストレートにたずねる。


「あのー、アスタロットンってどこにいますか?」


しかし、住人は怯えたように


「や、やめてくれ。そんな事をしたら、俺達は・・・」


それ以上の事は何も話してくれなかった。

他の者に聞いても、同じような反応がかえってくる。


「変な感じだな。なんというか、ただの恐怖とは違うような・・・」


すると、オリビアが奇妙な事に気付く。


「良く見ると、女性が1人もいないな。どういう事なんだろう?」


この街には、男ばかりだ。それも、精気を吸いとられたような

顔をした男ばかりが住んでいる。

その時1人の男が近づいてきた。


「あんたら、アスタロットンの討伐に来たんだろ?

なら悪い事は言わん。今すぐ帰った方がいい」


アスタロットンは相当ヤバい奴なのか、体を震わせながら

そう言ってきた。

また、その男の忠告に合わせ、他の住人もうなづいていた。


「どうする、オリビア?」

「どうするも何も無いだろ。アスタロットンを始末するべきだ!」


確かに、ほっといて良い雰囲気では無い。

というか、引き返したらオリビアに殺される。


「ただ、どこか泊めてくれる施設は無いようだな。

どこか待機出来る場所を探し、そこでしばらく様子を見るか」


街の北に小さな山がある。

とりあえず、そこに向かう事にした。


山の中にボロついた小さな小屋を見つけ、そこで待機する事にした。

ここから街の様子がある程度見渡せる環境なので、都合は良さそうだ。


「しかし、不気味な街だな。何で男しかいないんだろう?」

「さあな。アスタロットンとやらが何か関係していると思うが」


男達は、精気を吸いとられているかのように、覇気が無い。

相手は、サキュバスか何かなのだろうか?


「けど、男しかいないという事は、女性はみんな殺された可能性もあるよな。

オリビア、危険なんじゃないか?」

「は?私はA級ライセンスの持ち主だぞ。そんじょそこらの女どもと同じにするな。

敵は見つけ次第、即効で始末する」


A級を持っているので、腕は立つようだから安心はしているものの、

やはり女性がいないというのは不気味すぎる。

ハラユキは、いくら強いと言っても女性であるオリビアに何か危険な事が

あるんじゃないかと少し心配になる。


「とりあえず、今日は寝るか」


しばらくは、ここから街の様子を見て行動する事にした。

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