第4話 ギルド姫はじめ

バーニングタウンの、とても立派な姿をしたギルドに着いた。

中に入ると、広々としたすごい造りになっていた。

あの劇場を思い出すほどに。


「この立派なギルドを見てくれ、こいつをどう思う?」

「すごく、大きいです」

「大きいのはいいからさ、さっさと登録してこいよ」


扱いが実に雑い。

まずは受付に向かって行く。

どうしていいか良く分からないが、とりあえず受付嬢に聞いた。


「ようこそギルドへ!受付のシューラと申します」

「あの~、登録はここで可能ですか?」

「はい、こちらの書類に必要事項を書いて、こちらに提出してください」


言われた通り、書類に必要事項を書く。

氏名、年齢、性別、現在の職業、現在の住居、etc

まるで、市役所にいるような気分だった。


「書きました」

「はい、登録受付ました。証明書を発行しますので、しばらくお待ち下さい」


30分ほど待つと、受付嬢が戻ってきた。


「お待たせしました。こちらが証明書になります。

あと、これよりハラユキさんはC級ライセンス保有者となりますので、

こちらのバッジをお渡しします。

これで、C級冒険者の証明になります」


とりあえず、登録は無事に完了したようだ。

さっそく、言われたクエストを実行するべく、詳細を受付嬢に聞いた。


「あのー、シューラさん。さっそくですが、この『A級クエスト』となっている

どれかに行きたいんですが」

「申し訳ありません。こちらは、A級ライセンスをお持ちの冒険者の方のみ

受ける事が可能でございます」

「それは知ってるんですが、諸事情により、A級ライセンス持ちの剣士と

一緒に行く事になってまして」

「えっ!?A級ライセンスの方がいらっしゃるんですか?」

「はい、あちらに」


ハラユキは、オリビアを指差し説明した。

すると、オリビアが手招きしている。


「なに?」


パーン!!


ハラユキは、いきなりビンタされた。


「な、なにすんの!?」

「私に気安く指をさすな」


理由は、それだけだった。

怖い。

そして、受付嬢には王様の命令もあり、今回このA級クエストを

達成しなければならない旨を頑張って説明した。


「なるほど、そういう事情があったんですね。出来れば、危険なので

初心者のハラユキさんにはやめていただいた方が良いのですが」

「はい、僕もやめたいです」


オリビアから、ちょっと殺気のような物を感じた。


「最近は、A級ライセンス保有者もめっきり減りました。

魔王が倒されてからというもの、別の仕事に就いた人がほとんどですからね。

残っていたA級ライセンス保有者も、今あるA級クエストに向かったはいいのですが、

まだ誰も返ってこないんです」


・・・!?


「だ、誰も返って来ないんですか?」

「はい、今のところ・・・」


なぜハラユキがスカウトされたのか、最初は不思議に思っていたが、

このような状況が原因である事を悟った。

しかし、ガチのA級冒険者がまともに太刀打ちできないクエストを、

素人冒険者芸人に達成出来るとは思えない。


「オリビアさん、危険な事はやめましょう!!」


まっすぐな、真剣な目でオリビアに訴えた。

するとオリビアは、


「私に殺されるか、魔族に殺されるか、好きな方を選ばせてやる」


というわけで、ハラユキはクエストを承諾した。

リンストルという、魔族に支配されてしまった街を救う内容だ。。


「こちらは、アスタロットンという魔族が支配している街です。

この魔族が現れるまでは平和で活気のある街だったのですが、

今は活気などカケラも感じないほどになっています」


どうやら、かなりヤバい魔族が支配しているようだ。

1か月ほど前、ここに向かったかなり凄腕の剣士が向かったようだが

今だに帰っては来ない。

おそらく、その剣士はもう・・・


「よし、決まりだな。明日、さっそく向かうとしよう。

ハラユキ、必要な物は近くの店で買え。

金貨1枚分の買い物は許可されている」


どうやら、所長が任務費用として、金貨1枚を用意してくれていたようだ。

しかし、元々冒険者でも無いハラユキにとっては、何を買い物しておけば良いかわからない。


「何を買ったらいいんだろ・・・」


すると、シューラがアドバイスをくれる。


「まずは、短剣と鎖帷子を購入するのが良いと思います。

いきなり大剣や頑丈な鎧を装備しても、身動きが難しいと思いますので。

あと、薬草類も忘れずに買っておいてくださいね。

金貨1枚あれば、必要分は買えると思います」


シューラのアドバイスに合わせ、短剣と鎖帷子。

薬草類をとりあえず購入し、準備は整った。

買い物が終わる頃、どこかへ出かけていたオリビアが帰ってきた。


「どこ行ってたんだ?」

「私も買い物だ。素敵なアクセサリーを見つけたのでな、

金貨5枚も取られたが、それに見合う素晴らしいアクセサリーだ。

美しい私にはピッタリだな!」


・・・!?


「えっ?、金貨5枚!?

おかしいだろ。何で俺は1枚でそっちは5枚なんだ?」


そこで、ハラユキは一つの仮説を立てる。


「もしかして、本当は俺達2人で3枚づつで買い物できるように、

所長から貰っていたんじゃないのか?」


オリビアは言う。


「今日は早く寝ろ。明日は早いぞ!」


もっと色々言いたい事はあったが、あまり言うと何されるか分からなかったので、

宿場に行き、おとなしく寝る事にした。


だって怖いんだもん。

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