第2話 不思議なエルフとギャグ魔法
どこか、自分を受け入れてくれる劇場のある街は無いかと旅を続けるハラユキ。
いつか、どこかの劇場で大歓声を浴びて心が絶頂する妄想にふけながら、
ダイヤモンドタウンで大成出来なかった事に悲しさと悔しさを感じている。
行く当てはあって無いハラユキが、旅の途中にある森の中で
変な声が聞こえたので、その方向へ向かっていった。
「ひぼぼぼえ~、ひぼぼぼえ~」
ものすごくかわいいロリボイスにもかかわらず、
意味不明な言葉が聞こえてくる。
ハラユキは、不気味と思いながらも面白く感じていたので
その声を辿っていった。
すると、1匹のエルフが切り株の上で倒れていた。
「もしかして、このエルフから聞こえていたのか?」
恐る恐る近づいてみると、
「ひぼぼぼえ~、ひぼぼぼえ~」
聞こえた、間違いない。
勇気を出して、エルフに声をかけてみる。
「あ、あのー、大丈夫ですか?」
「あっ、すみません。私のボイストレーニング、うるさかったですか?」
・・・ボイストレーニング!?
いったい、何のボイストレーニングなのか不明だが、
エルフ特有(?)のボイストレーニングだったのだろう。
「実は、かれこれ3週間ほどぶっ通しでトレーニングを続けていたのですが、
気がつくと、この切り株に倒れ込んでおりました」
そりゃ倒れるのも当たり前。ちょっと頭が弱いエルフと思われる。
「そんなに無理して、ひぼぼぼえ~というのはいったいどういう意味があるんです?」
エルフはこう答えた。
「平和な世界を~!というセリフをトレーニングしていたのですが、
ちょっと簡略化しようと思い、試行錯誤した結果、ひぼぼぼえ~となりました」
アホだった。
そんなアホでも、衰弱している以上は見捨てられない性分のため、
持っていた水と食料と栄養剤を分けてあげた。
「いきかえるわ~」
エルフの顔色がすごく良くなった。
せっかくなので、二人で楽しく食事をする事にした。
話も弾み、思いのほか楽しい時間となった。
「なるほど、ハラユキさんは色々と大変だったんですね。
では、助けていただいたお礼に、すごい能力をあなたに差し上げます」
「すごい能力?」
「ハラユキさん、あなたはギャグを活かした芸人。
つまり、ギャガーという事になります」
「はあ」
「そして、あなたにはギャグを作成する才能が飛びぬけています。
だから、そのギャグを活かした魔法が使えるようにします」
なんと、ギャグで魔法が放てる(?)ようになると言う。
が、別にハラユキは魔法を習得しようなどと考えていなかった。
なんせ、芸人だから。
「いや、結構です。別に魔法が使いたいわけでは無いので」
しかし、エルフは勝手に力を込めて、その魔力をハラユキに向けて放った。
「オヴォロロログオレレロルルローーーーー!」
魔物の断末魔のような言葉とともに、ハラユキに謎の魔力が直撃する。
だが、痛みなどは何も無かった。
「お、おい、俺の体に何をしたんだよ?」
「大丈夫です。あなたはギャグ魔法を習得しました!おめでとうございます!!」
「いや、別にいらないから!!」
「話を聞いてください。あなたからは、何か不思議な力を感じました。
何というか、人間には無い、不思議な力を」
「不思議な力?」
「ええ。」
ハラユキには、何か不思議な力があると言うが、具体的には分からないようだ。
ただ、ハラユキはいたって普通の家庭に生まれ、
普通に育ってきた人間だ。特別な血筋というわけでもない。
なので、エルフの言う事に信憑性を感じなかった。
「けど、ギャグ魔法って、何が出来るんだ?」
「あなたが持つギャグに、3つの属性が付与されています。
それは、火、水、雷 の3つです。
ギャグ内容に合わせて、どれかの属性魔法を放つ事が可能です」
「えっ、そうなの?じゃあ、迂闊にギャグやったら、
客席に被害が飛ぶという可能性もあるのでは?」
「えっと、その・・・まあ、加減すれば大丈夫です。
コントロール出来るよう頑張ってください」
「いや、今すぐこの能力を解除しろよ!!!」
ハラユキは、エルフの首を絞め、何とか魔法能力を解除してもらおうとした。
「そ、それはもう出来ません。一度、付与された能力は二度と外せません。
それに、私のノルマの問題もありますので、あなたにはギャグ魔法を使い
こなしていただくしかないのです!」
「ノ、ノルマ?」
「わ、私は某組織に所属するエルフなのです。そこでは、今後この世に必要な
人物を見つけ、その人間に力を付与し、能力を開花させる仕事です。
これは、世界を救うためには必要なのです。
近々現れるであろう、巨悪に立ち向かう力を持つ者が!!」
話を聞く限りは、勇者となるような人物を探しているかのような感じだ。
近々現れる巨悪?
魔王のような存在でもいるというのだろうか。
何か、恐ろしい事が起こりそうな気がする。
が、それはともかく。
「いや、だから俺は芸人なんだって。いきなり力を与えられても
何も出来やしないんだって。
他に適した人物がいるだろ?
そいつを探して、適した力を与えてくれ。
そんで、何とかして俺から魔法の力を解除してくれよ、頼むから」
ハラユキは、別にヒーローになりたいわけではない。
だから、この反応も当たり前なのだ。
というか、力を押し売りで渡されても困る。
今後、仕事に差し支えが出る可能性もあるから。
「・・・あっ、そろそろ本部の仕事に戻らないと。
じゃあ、頑張ってください。ギャグの勇者様!」
そう言って、エルフはどこかに消えてしまった。
何となくだが、解除する方法もあったのではないかと思われる。
しかし、エルフがいなくなった以上、この力を持って行くしかない。
ハラユキは、次あのエルフに会ったら、
アイアンクローを全力で喰らわせようと心に誓った。
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