第4話「手紙」ー2
そうそう、私、昔から、千春のこと大嫌いだったの。ごめんね。大学2年の時だったかなぁ。売れっ子の女優と人気モデルの不倫騒動でマスコミが騒ぎ立ててたじゃない? 憶えてる? 男の方には妻がいて…… 女優の方はこの騒動で干されちゃって、世間もさ、「どっちもどっち! 奥さん可哀想……」って言いたい放題。あの時、千春も言ってたよね? 「不倫なんてする男も女も最低! 私、そういう正しくないことするヤツら許せないっ!」って。顔真っ赤にして怒っちゃってさー。ああ、千春は“強くて、正しい人間“ なんだなって思ったの。私は内心、女優に同情してたよ。この人は、本当にこの男のことを愛していたんだろうなぁって。自分が今まで築いてきた人気、イメージ、富……すべてを棄てる覚悟で男を愛したんじゃないのかな? 彼女がしたことは、世間的には“正しくなかった“ ただそれだけのことなんじゃないかな? って。
少し話が逸れちゃったね。雅也さんとの話の続きがあるの。結婚式の数ヶ月後に千春、出産のために実家の福島に帰ったじゃない? あの頃、私、雅也さんと何度も会っていたの。誘ってきたのは彼の方だよ? やっぱり、彼は私の方が好きなんだって。千春と結婚したことを後悔してるんだって思ったの。「彼と一生一緒に居られるなら世界中の人を敵にまわしてもいい」って言ったよね? こんな思想を持ってる私にとって、アンタ1人を敵にまわすことくらい、痛くも痒くもなかった。でも、アンタが出産してこっちに帰って来るのを機に、また捨てられたんだ。「わー! やっと地上に出られるぞー!」ってウキウキしながら地中から這い上がってきた蝉が、カマキリに殺されておしまい!
支離滅裂な文章でゴメンね。私、そろそろ逝かなくちゃ。書き残したことはないかな? あっそうそう! 最期にご忠告! あなたの旦那様、私の他にも何人か付き合ってる女いるらしいよ。気をつけてね! あわよくば、あなたの家庭が崩壊しますように……
さようなら。 “強くて正しい”千春ちゃん。今まで“親友”でいてくれて、ありがとう。
2010年8月8日 逢木 夏月
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