第1話「夏月」
彼女は、突然、いなくなった。
彼女というのは、私の大学時代の親友、
彼女の棺が火葬炉に入る瞬間、今まで晴れ渡っていた空が突然、厚く黒い雲に覆われ、まるで、さっきまで笑っていた子供が突然表情を歪ませて泣き出すかのように、大粒の雨の
「きっと、夏月ちゃんが泣いているんだわ。無念だったのよ、きっと……」
と、彼女の親戚と思われるご婦人が言って泣き出すと、周りに居た人たちも、彼女につられて泣き出した。
私は、その時、私の結婚式の時に夏月が言った言葉を思い出していた。
***
『ねえ、千春。私が結婚したらさ、千春と千春の旦那さんと、私と私の旦那の4人で海外旅行に行こうよ!』
『おおっ! それはいいね!
『それはいいね! 約束だからねっ!』
***
勝手に約束破っておいて、死ぬなんてズルイ! 我が儘にも程がある! 私は、彼女に裏切られた気持ちになった。そして、思わずにはいられなかった。
どうして……どうして、もっと、強く生きられなかったのか? と。
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