パンドラからの贈り物
商品が到着するまでは、今まで通りの日々を過ごした。
ピンポーン
「はーーい」
「お荷物です。お名前は、合ってますか?」
「はい。大丈夫です」
「印鑑は大丈夫ですので、ありがとうございます」
パンドラ株式会社と書かれた荷物が到着する。
私は、その場で箱を開ける。
中に入っていたのは、耳栓と指輪。
「何するの?これ」
商品の説明の為のQRコードがある。
私は、箱ごと持ってリビングに行く。
ダイニングテーブルにあるスマホを取り、QRコードを読み込んだ。
暫くして、動画が再生される。
【パンドラ社の最新テクノロジー技術を使った本格不倫アプリを使用していただきありがとうございます】
仮面をつけた人が映る。
声からして、おじさんなのはわかる。
本格不倫アプリという言葉に私は笑いそうになった。
【アプリの月一万円の利用者向けには、耳にはめる耳栓タイプのイヤホンモニターと相手の指を感じれる指輪を送らせていただきました】
イヤホンモニター?指を感じる?言ってる事が理解できない。
【こちらの耳栓は、耳に馴染むソフトなつけ心地になっています。夫婦での夜の営みにご使用いただきますと、旦那様や奥様の顔が不倫相手に変わります。耳元で、声も聞こえますので、是非一度ご利用下さい】
これは、確かさくちゃんが見せてくれたやつだ。
耳栓かと思ったら、声が聞こえて映像が見えた。
これって俊太に抱かれてるのを健さんに出来るって事?
それって凄いじゃない。
【次に指輪です。こちらは、自分自身を慰める時に使用します。この指輪をはめるとあら不思議。相手の指の感触に変わります。こちらは、アプリで不倫関係を結んでいる相手との営みにご使用下さい。その時は、必ず耳栓もつけながらやられますとよりリアリティーを感じます。以上が、商品の説明になります。これからも、素敵な脳内不倫生活をお送り下さい】
仮面の男がお辞儀をして、映像は終わる。
凄い技術のものが届いた。
これを使えば、私はAI健さんに抱かれる事が出来るんだ。
さっそく使ってみようかな?
耳栓と指輪とスマホを持って寝室に行く。
ベッドに横になりアプリを立ち上げる。
必ずBluetoothを接続して下さいと書かれていたから接続した。
アプリを立ち上げるとそれを認識してるようだった。
勝手に本格的会話モードに切り替わっていた。
【みくる、行こうか?】
いつの間にか、私は健さんとデートをしていた。
映像に映し出される町並みがホテルに変わる。
【みくる、いいの?】
「うん」
【嬉しいよ、みくる】
健さんに抱かれる。
指輪をつけているせいか、いつもの自分の指とは明らかに違う。
「何これ?すごい」
耳元で【好きだよ】と健さんの声が響き。
ゾクゾクとする。
【みくる、好きって言って】
「健さんが好き」
【もっと言って】
「健さんが好き……。健さんが好きだよ」
好きだと言う度に気持ちが体が熱くなるのを感じる。
「ハァーー。脳内不倫アプリって最高!!」
気分が高まり、私は項垂れながら呟いていた。
もしも、俊太とした時にこれを使用したら?
背徳感と幸せでおかしくなりそう。
ワクワクした気持ちを抱えながら、耳栓をしまって指輪を外した。
今になって、さくちゃんが言っていた意味がわかる。
色んなリスクを考えても、不倫は脳内でするのがいい。
でも、うっかり最中に名前を出してしまったらどうしよう。
出したとしても、証拠はないわよね。
月一万でこれなら他のプランはどうなるの?
アプリの月額生についての部分を読むけれど内容はシークレットになっている。
blogとかないのかな?
検索するとすぐに出てきた。
記事を書いているのは、ミーチューバーの明日香だった。
彼女の記事によると、中ランクである月三万を選択すると手袋が追加されるという。
その手袋は、相手の体温と同じで。身体中を撫でると抱き締められてる感覚が味わえるという。
月五万になると追加で相手のナニの形のおもちゃがやってくるという。さらに、その人と不倫している感覚が味わえるという。
月10万になると顔のない体だけのシリコンと特殊素材で作られた人形がやってくるらしい。
さらに、不倫してる感覚になるらしい。
明日香は、お金があるから最後の月五十万も注文したらしい。
五十万は、ホテルの部屋番号が送られてきたという。
そこに居たのは……。
「まさか。最後は、本当に不倫するって事?」
明日香のblogを読んで驚いた声をあげた。
でも、確かに……。
ずっと育ててきたら会いたくなるわよね。
でも、本人とは違うわよ。
私は、blogを閉じる。
シークレットって言いながら、世の中の誰かはこうやって記事にしてるわけだから意味あるのかな?
「私は、暫く一万円でいいかな」
アプリを閉じてベッドから立ち上がる。
これで、レスが改善するなら安いもの……。
・
・
・
アプリを使い始めて三ヶ月が経った頃。
私は、久しぶりに俊太に求められていた。
「みくる。何か最近綺麗になったね」
「そうかな?」
俊太の言葉よりも健さんの声が脳内を響き渡る。
俊太に抱かれてるのに、まるで健さんに抱かれてるようだ。
「今までとは違う。すごいよ……みくる」
うんっ?
俊太の左耳に何かが入っている気がする。
私は、手を伸ばしそれに触れる。
この感触は……!?
それが何か気づいた私は、ホッとした。
どうやら、私達夫婦にはこのアプリの存在が必要らしい。
次は、ランクあげてもいいかも。
そしたら、もっと健さんを感じられるから……。
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