第43話   廃墟エリアでの白熱闘、花緒VSスケルトンキング!

 雷山エリアを抜けると、あーしは陰鬱な雰囲気を纏った廃墟エリアに辿り着いた。


 おお、あーしもついにここまで来たか。


 この廃墟エリアを抜けた先に、魔王の住処である魔王城がある。


 さすが、パパの情報は確かだね❤


 そんなパパの言うことを信じるなら、この廃墟エリアにはスケルトンキングという強力なアンデッドが生息しているという。


 身体の大きさ的には人間サイズだが、類まれなる魔法剣を使って攻撃してくるという。


 それはそれで闘うのは結構楽しみ。


 は……ダメダメ、花緒。


 あーしはそんな遊び気分で異世界に来たんじゃないのよ。


 この異世界とあーしがいた地球はダンジョンで繋がっていて、この異世界から地球に魔物が送り込まれていることに。


 これも1年間の修行のときにパパから聞いたことだ。


 今はまだ地球のダンジョン内に魔物は留まっているが、それも何らかのキッカケで地上に魔物たちが出ないとも限らないと。


 そうなったら大変。


 きっと地上の人たちは魔物に蹂躙されてあんなことやこんな目に遭わされちゃう。


 だったら、空手家のあーしがすることは決まっているよね。


 そう、この異世界の魔王を倒して地球に魔物がやってこれないようにするんだよ!


 そのためにあーしはこの異世界の戦魔大陸に来たんだ。


 絶対に倒してやる!

 

 魔王、覚悟しなさい!


 あーしは意気揚々と廃墟エリア内を突き進んでいく。


 廃墟エリアの上空には灰色の雲が垂れ込め、周囲には冷たい風が吹き荒れている。


 朽ち果てた建物が無数に並び、その間には雑草が生い茂り、不気味な静けさが辺りを包んでいた。


「雰囲気的にはお化け屋敷みたいな感じ……でも、地球のダンジョン内の廃墟エリアとはまるで違うわね」


 ピリピリと肌に凶悪な殺気が突き刺さってくる。


 これは廃墟エリア内の魔物たちの殺気だ。


 でも、魔物たちは遠目からあーしを見ているだけで一向に襲ってこない。


 これは他のエリアでも同じだった。


 あーしに襲ってくるのは、そのエリアのボス的な奴らだけで、中ボスや雑魚モンスターはあーしを遠目から睨みつけてくるだけで襲ってくることはなかった。


 理由はチョー簡単。


 あーしが強すぎるからだ。


 それに加えて、あーしの肉体には今まで倒してきたボスたちの匂いがまとわれている。


 詳しく言うと、倒されてきたボスの匂いだ。


 中ボスや雑魚モンスターは、きっとあーしを見てこう思っているはずだ。


 あの人間の小娘からは、俺たちが太刀打ちできないボスを倒したときの匂いがある。


 ひょえ~、おっかね~!


 襲うのはヤメピー、こうして遠くから睨みつけるだけで留めとこう。


 クワバラクワバラ……ってな感じで。


 まあ、それならいいうんだけどね。


 あーしも無駄な闘いはしたくないし。


 などと考えながら、あーしは廃墟エリアの奥へと進んでいく。


 そんな中、あーしはリスナーたちのたちのコメントを読んでいく。


『いよいよ次ぐらいに魔王と対峙するんだな』


『このエリアのボスも強そうだな』


『異世界のラスボスの手前のエリアだぞ。相手が強いのは当たり前』


『まあ、俺たちの花緒のほうが強いけどな』


『花ちゃん、頑張って!』


『花ちゃん、気をつけてね!』


『ボスが出てきてもぶっ倒しちゃえ!』


「ありがと、みんな。あーしは頑張るから――」


 と、コメントに応えていたときだった。


 廃墟エリアの半ばを過ぎた辺りで、崩壊した建物の裏手からスケルトンキングが姿を現した。


 全長3メートル強。


 漆黒の西洋鎧を着ているが、肉の部分がまったくない。


 巨大な骨格標本の上から鎧を着ているような感じだ。


 筋肉がないのにどうやって鎧を着ているんだろう?


 などというヤボな感じはソッコーで捨てた。


 多分、物理的現象を超えた魔法の力に違いない。


 マジ、受ける!


 あーしが分析していると、スケルトンキングの目が不気味に光った。


 厳密には目玉がないので、空いている穴が青白く光り出したのだ。


 それだけではない。


 スケルトンキングの全身から漆黒の蒸気のような〈気〉が迸った。


 強力な魔力の力だ。


 その力は全身に漲らせただけで大気を震わせ、強震のように地面を揺れ動かす。


 けれど、あーしの肉体はバランスを崩さない。


 ふん、その程度であーしを転ばせると思わないでよ!


 あーしが不敵に笑うと、スケルトンキングの目の輝きがさらに増した。


 そして――。


 オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


 スケルトンキングは耳をつんざく威嚇音を発すると、疾風の速さで間合いを詰めてきたばかりか、両手に持っていた特大のロングソードで攻撃してきた。


 骸骨二刀流だ。


「いいわよ、来なさい!」


 あーしは挑戦的な笑みを浮かべ、スケルトンキングに向かって叫んだ。ス


 同時に80倍〈光気功〉を発動。


 スケルトンキングを真っ向から迎え撃つ。


 オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


 スケルトンキングは余計な小細工は一切してこなかった。


 暴風のように日本の剣を薙いであーしの命を刈り取ろうとする。


 そんな攻撃をあーしは紙一重でかわしていく。


 おそらく、この闘いはリスナーのみんなには見えないだろう。


 それほどの速さの攻防だったからだ。


 でも、こんな闘いをいつまでもしているわけにはいかない。


 あーしはスケルトンキングの隙をつくと、最初から80倍〈光気功〉の〈万撃拳〉を繰り出した。


 ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンッ!


 だが、この〈万撃拳〉でも致命傷は負わせられなかった。


 それは感触でわかった。


 なので、あーしは立て続けに追撃した。


「――〈飛竜蹴り〉ッ!」


 ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!


 あーしの〈飛竜蹴り〉がスケルトンキングの腹部に突き刺さる。


 まだまだ!


「――〈旋風蹴撃〉ッ!」


 ドドドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!


 あーしの〈旋風蹴撃〉がスケルトンキングを空中に吹き飛ばす。


 ここだ!


 あーしはカッと両目を見開くと、空中でジタバタしているスケルトンキングを睨みつける。


 今のスケルトンキングは池から放り出された魚と同じだ。


 ここが勝機!


 あーしは〈光気功〉を90倍まで引き上げた。


 そして――。

 

「――〈万撃神拳〉ッ!」


 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


 あーしの90倍〈万撃神拳〉がスケルトンキングに叩き込まれる。


 オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


 廃墟エリア全体に鳴り響くほどの悲鳴。


 ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!


 やがてスケルトンキングは空中で爆発した。


 凄まじい爆風が周囲の建物を吹き飛ばす。


 すべてが静かになったのは、爆発から数分後のことだった。


 あーしは粉々になったスケルトンキング及び周囲の状況を確認。


 うん、どうやら他の魔物も逃げ去ったみたい。


「よし、廃墟エリアもクリア! さあ、次はいよいよ魔王城だよ!」


 あーしが配信画面にVサインすると、コメント欄がお祭り状態になる。


『ひょえええええええええええええええええええええええええ』


『やべえええええええええええええええええええええええええ』


『すげえええええええええええええええええええええええ!』


『バチクソ強すぎる!』


『これは推しになりますわ!』


『ついに魔王と直接対決か!』


『これは登録者1000万達成もすぐじゃん!』


『ダンジョン配信者で登録者1000万人行ったらダンジョン配信界で初だね!』


『異世界に行っている時点でダンジョン配信じゃなくなっている件についてwwwwwwwww』


『面白ければ細かいことはいいんだよ』


『花ちゃん、最後まで応援するよ!』


「ありがと、みんな! さっさと魔王を倒して日本に帰るからね」


 こうして、あーしは廃墟エリアを抜けて魔王城へと向かったのだった。




〈ギャル空手家・花ちゃんch〉


 最大同接数 990万0000人


 チャンネル登録者数 946万8000人


 

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