第40話   火山エリアでの闘い、繰り出される花緒の新・必殺技!

 毒沼エリアを抜けると、次に辿り着いたのは火山エリアだった。


 火山エリアの灼熱の空気が肌にじりじりと焼きつく。


 地面から立ち上る熱気が視界を歪ませ、足元の岩は赤く熱せられている。


 でも、あーしとドローンは平気だよ。


 またしても〈灼熱耐性〉スキルが役立つエリアで大助かり❤


 まあ、それはさておいて。


 確かパパから聞いた話だと、ここにはフレイムゴーレムという全身が炎で構成されたゴーレムがいるんだって。


 え? それってゴーレムとは呼べないって?


 でも、パパたちがそう呼んでいたから、あーしもそれに倣うことにするよ。


「さあ、この火山エリアを抜けて早く魔王城へ向かうよ」


 あーしはドローンの配信画面を見ながら言う。


 リスナーたちのコメントも、砂漠エリアと同様に心配するコメントが多かった。


『火山エリアとかやばそう!』


『花ちゃん、気をつけてね!』


『溶岩とか大丈夫?』


 あーしは「大丈夫。全然平気」と応えながら、火山アリアの中を進んでいった。


 もちろん、他のエリアと同じく慎重かつ大胆に。


 だって足場に火山岩がゴロゴロ転がっているんだもん。


 足元に注意を払いながら進むと、熱波が肌を刺すように感じる。


 さすがに〈灼熱耐性〉のおかげで心身に異常をきたすダメージは負わないが、それでも汗が額から流れ落ち、目に入るとしみる。


 だが、あーしは一歩一歩、確実に前進した。


「この暑さ、まるでサウナにいるみたいだね」


 熱せられた空気は息をするのも苦しいほどで、喉が渇き、肌が焼けつくような感覚が続く。


 視界に見えるのは赤々と燃える溶岩流と、煙を上げる岩の裂け目。


 灼熱地獄の中を進むたびに、リスナーたちからの応援メッセージが心の支えとなった。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


 やがて、地面が大きく揺れ始めた。


 ごうごうとした音と共に、マグマの池から全長10メートルほどのフレイムゴーレムが姿を現した。


 その全身は赤熱した溶岩の上に炎をまとっていて、周囲の温度を一層上げている。


 地面に落ちる溶岩の滴が、ジュウジュウと音を立てて蒸発していた。


「あれがフレイムゴーレムか……なかなか手強そうだね」


 フレイムゴーレムは大きな炎をまとった溶岩の拳を振り上げ、あーしに向かって攻撃してきた。


 あーしは真後ろに大きく跳躍して回避する。


 ドガアアアアアアアアアアアアアン


 攻撃を避けられたフレイムゴーレムは、意志がないのか機械的にあーしに連続して攻撃してきた。


 その拳が地面に叩きつけられるたびに、地面が震え、熱風をともなった溶岩の飛沫が飛び散る。


 しかし、あーしはまともに攻撃を食らわない。


 常に80倍〈光気功〉で身体能力と上げているためだ。


「今度はこっちの番だよ!」


 あーしは問答無用で〈千歩神拳〉を繰り出した。


 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


 黄金色の気弾がフレイムゴーレムに直撃する。


 ドガアアアアアアンッ!


 だが、その一撃は溶岩の表面に小さなひびを入れるだけだった。


 そしてフレイムゴーレムは一瞬動きを止めたが、すぐに突進して反撃してきた。


 その動きは鈍重だが、一撃一撃が致命的な破壊力を持っている。


「うっそ、マジ!」


 あーしは〈光気功〉で上げた身体能力で次々と攻撃をかわしながら、今度は〈千撃拳〉を繰り出した。


 ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンッ!


 けれども、この〈千撃拳〉も身体の表皮をいくらか削っただけで決定的なダメージは与えられなかった。


「だったらこれだ――〈万撃拳〉!」


 ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンッ


 やったかな?


 大きく後方に倒れそうだったフレイムゴーレム。


 でも、フレイムゴーレムは結果的に倒れなかった。


 ぐっと踏ん張ると、元の体勢に戻って突進してくる。


 これにはリスナーたちもメッチャ動揺した。


『なにいいいいいいいいいいいいいいいいいい』


『花ちゃんの必殺技が効かないだとおおおおおおおおおおおお』


『やべええええええええええええええ』


『ど、ど、ど、ど、ど、ど、どうすんの!?』


『えーらいこっゃ! えーらいこっちゃ!』


『頑張れ、花ちゃん!』


『負けないで!』


『花ちゃん、ファイト!』


 大丈夫、絶対にあーしは負けないよ!


 あーしは心中で応えると同時に、いよいよ奥の手を出そうと決めた。


「できれば魔王城に着いたら使いたかったけど、出し惜しみしてて負けたらカッコ悪いもんね」


 あーしは両足を大きく左右に広げると、左右の拳を脇に引いた。


 そして全身にまとっていた〈気〉の大部分を左右の拳に集中する。


 ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――――ッ!


 やがて、あーしは打ち放った。


「――〈千撃神拳〉!」


 それは〈千撃拳〉と〈千歩神拳〉の複合技だった。


 簡単に言えば、〈千撃拳〉から気弾を撃ち放つ技だ。


 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


 大砲をマシンガンのように打つ放つ〈千撃神拳〉が、フレイムゴーレムを遠距離から粉々に打ち砕く。


 ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン


 フレイムゴーレムは木っ端微塵になった。


「どうだ! あーしの新・必殺技の威力は!」


 あーしが配信画面にVサインすると、リスナーたちの歓声コメントがナイアガラの滝の如く流れていく。


『すげえええええええええええええええええええええ』


『うひょおおおおおおおおおおおおおおおおおお』


『やっべええええええええええええええええええええええええええ』


『強えええええええええええええええええええええ』


『強さが神すぎるwwwwwwwwww』


『やった! フレイムゴーレムを倒した!』


『花ちゃん、すごい!』


『次も頑張ってね!』


「うん、あーしは負けない! だから応援よろしくね!」


 こうして、あーしは次のエリアへと向かったのだった。




〈ギャル空手家・花ちゃんch〉


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