第39話   毒沼エリアでの烈闘、花緒VSヴェノムスネーク!

 氷の洞窟を抜けると、次に待ち受けていたのは毒沼エリアだった。


 毒沼エリアのこともパパから聞いて知っている。


 普通の人間だと空気に触れただけで即死する危険エリアだ。


 あーしは進みながら、いくつもの毒沼を見る。


 毒々しい紫色の液体が池になっていて、その臭いは鼻を突くほど強烈だった。


 うん、でもあーしは〈毒耐性〉スキルがあるから全然平気❤


 まあ、そんなことよりも。


 この毒沼エリアは毒の風や毒沼も危険だけど、もっと危険なのはヴェノムスネークという巨大な蛇の魔物が生息していることだ。


「こうして歩いていれば出てくるのは確実ね」


 あーしがそう言うと、ドローンの配信画面に心配のコメントが流れてくる。


『マジでここは危険なエリアっぽ!』


『花ちゃん、気をつけて!』


『毒も無効化って人間辞めてるレベルwwwwwww』


『ワイはもう慣れた』


『ここで花緒を心配するのはニワカだろ』


『古参ファンは何の心配もしてない』


 そんなコメントを読んでいると、あーしの肌に粟立った。


 何か来る!


 あーしが足を止めると、鬱蒼とした茂みの中から巨大な影が現れた。


「大きい!」


 あーしは思わず叫んだ。


 十数メートル先に現れたのは、全長30メートルはある巨大な蛇だった。


 間違いなくヴェノムスネークだ。


 その姿はまさに恐ろしいの一言。


 鱗は黒光りし、目は冷酷な光を放っていた。


 巨大な口からは毒液が滴り、牙は鋭く、どんな獲物でも一瞬で仕留める力を持っていそうだった。


 キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア


 ヴェノムスネークが威嚇してくる。


 というか、あーしを捕食する気まんまんだ。


「残念! あーしはそう簡単にやられないわよ!」


 あーしの全身にアドレナリンが駆け巡った。


 同時に70倍〈光気功〉を発動。


 完全に臨戦態勢を整える。


「さあ、来なさい!」


 キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア


 ヴェノムスネークは巨大な体をうねらせ、あーしに襲いかかってきた。


 その動きは素早く、まるで水面を滑るような滑らかさと迅速さがあった。


 あーしとヴェノムスネークの距離が一瞬で縮まる。


「――〈飛竜蹴り〉!」


 あーしは真正面から突っ込んできたヴェノムスネークに、渾身の〈飛竜蹴り〉を繰り出した。


 ドンッ!


 あーしの〈飛竜蹴り〉が眉間に突き刺さり、ヴェノムスネークは苦しそうに呻きながら後退した。


 しかし、攻撃を受けたにも関わらず、その目にはまだ闘志が宿っている。


「やるわね。だったら――」


 あーしは〈千歩神拳〉を放った。


 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


 黄金色の気弾がヴェノムスネークの頭部に直撃。


 ギシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア


 ヴェノムスネークは悲鳴を上げるが、まだ頭部はそのままで反撃の色が瞳に残っている。


 なので、あーしは間合いを詰め、近距離から必殺技を繰り出す。


「―― 〈千撃拳〉!」


 ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンッ!


 あーしの〈千撃拳〉はすべてクリーヒット。


 でも、ヴェノムスネークはまだ生きている。


「もう、しぶとい!」


 あーしは続けて〈万撃拳〉を繰り出した。


 ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンッ!


〈万撃拳〉もすべて命中したものの、それでもヴェノムスネークは致命傷になっていなかった。


 それどころか、ヴェノムスネークは口内から血を吐き出しながらも反撃してきた。


 毒の牙があーしに向かって襲いかかってくる。


 そこであーしは80倍〈光気功〉を発動。


 必殺技のコンボを繰り出す。


 あーしは毒の牙の攻撃をかわすと、そのまま懐に飛び込んだ。


 そしてヴェノムスネークの顎に真下から揚げ突きを放った。


 ドゴンッ!


 あーしの揚げ突きでヴェノムスネークの首が真上に吹っ飛ぶ。


「まだまだまだ!」


 あーしはカッと両目を見開いた。


 ヴェノムスネークの無防備になった腹に、80倍〈光気功〉の〈万撃拳〉を放つ。


 ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンッ!


 ギョオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


 空気を震わせるヴェノムスネークの悲鳴。


 確実にダメージを負っている証拠だ。


 ならば追撃あるのみ!


 あーしは地面を蹴って跳躍する。


「――〈疾風旋蹴〉!」


 あーしは黄金色の光をまとった足で、ヴェノムスネークの首を切り落とした。


 ドオオオオオオオオオオオオン


 切り落としたヴェノムスネークの首が地面の音を立てて落ちる。


「ふう……いよいよ80倍〈光気功〉がスタンダードな闘いになってきたわね」


 これは魔王と闘う頃には100倍〈光気功〉で闘うのがスタンダードになるかもしれない。


 だとしても、あーしは逃げない。


 絶対に魔王を倒してみせる!


 そんなことを考えながら配信画面を見ると、リスナーたちの歓喜コメントが滝のように流れていた。


『やっぱりすげええええええええええええええええ』


『かっけええええええええええええええええ』


『花ちゃん、マジ闘神!』


『凄すぎて引くレベルwwwwwwwwwww』


『ハリウッドで有名な映画監督が、花緒を主役にした映画を撮りたいっ言ってたぞ』


『こっちの世界に帰ってきたら世界レベルの英雄だな』


 みんなの応援コメントがあーしの心に染みわたる。


「ありがと、みんな。そっちの世界に帰るまで応援よろしくね❤」


 こうして、あーしは次のエリアへと向かったのだった。



 

〈ギャル空手家・花ちゃんch〉


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