第22話   パワーアップしたギャル空手家の躍進!


 パパと涙の別れをしたあーし、は再びダンジョン配信を開始した。


 1年(1分)の修行でパワーアップしたあーしは、とりあえず魔物の村まで最速で辿り着いた。


 時間にして約15分。


 RTAがあったら、あーしは世界最速だっただろう。


 実際、ダンジョン配信したらコメント欄が荒れに荒れていた。


 アンチがたくさん沸いたというわけではなく、リスナーのみんなは画面越しでもあーしがパワーアップしたことがわかったみたい。


『花ちゃん、どうしたの!!!!!!!』


『見た目変わってないのに、メチャクチャ力が上がってる気がする!』


『つうか下層の魔物の村まで爆速で辿り着いたんじゃね!?』


『花ちゃんラブ、花ちゃんラブ、花ちゃんラブ』


『これが登録者100万人越えの配信者の実力か!!!!!』


『途中にイレギュラーとか出たのに高速で倒しててウケるwwwwwww』


 というコメントばかり流れてくる。


 ありがと、みんな。


 でも、今のあーしの実力はこんなもんじゃないよ。


 あとからもっと驚く配信を見せちゃうんだから❤


 何てことを考えながら、あーしは自分が壊滅させた魔物の村を見渡した。


 正直、ここには用はない。


 用があるのはこの先である。


 だから、こんなところはさっさと通り過ぎよう。


 と、あーしが思ったときだった。


「あれ?」


 あーしは頓狂な声を上げた。


 魔物の村の中央に来ると、周囲から異様な気配を感じたのだ。


 そして、は現れた。


 アンデッドだ。


 ゾンビやグールなどの魔物ではない。


 あーしが以前にこの魔物の村で倒した魔物たちが、アンデッド化してあーしの前に現れたのだ。


 ちなみに普通の魔物がアンデドッド化すると、その戦闘能力や耐久力は数十倍に跳ね上がるという。


「あらあら、一度死んじゃったのにご苦労さま」


 あーしは余裕の表情で言ったのだが、一方でリスナーたちはコメントで阿鼻叫喚していた。


『これはダメだ!!!!』


『倒した魔物たちがアンデッド化してる!?』


『これはやばいぞ……』


『花ちゃん、逃げてええええええええええええ』


『さすがにこれは死んだな』


『せっかく見つけた俺の推しがこんなところで死ぬなんて』


 そんなコメントが滝のように流れてくる。


 もちろん、あーしはすべてのコメントの内容が把握するほど動体視力が著しく向上している。


 なので、あーしはリスナーたちに満面の笑みを向けた。


「だいじょうブイ! こんな奴らにあーしは負けないよ!」


 あーしは力強く言い放ち、有言実行を始めた。


「さあ、チャチャッといくよ! 10倍〈光気功〉!」


 あーしは全身に以前の10倍の〈気〉をまとうと、手刀でアンデッドたちを容赦なく切り裂いていく。


 それはさながら光の刃だった。


 どんな切れ味かって?


 う~ん、簡単に説明すると国宝級の日本刀の切れ味を数百倍まで高めた感じ?


 まあ、とりあえず。


 あーしは10秒もかからずに数十体のアンデッドたちをバラバラに斬った。


 うん、余裕余裕❤


『花ちゃん、強すぎる!』


『アンデッド相手にこんなに余裕があるなんて!』


『さすがだ!』


『すげええええええええええ』


『強さがデタラメすぎる……』


『他のインフルエンサーが子供に見えてきた』


『あれ? 花ちゃんってここまで強かったっけ?』


 あーしは汗一つかかずに次々と敵を倒し、そのたびにリスナーからの応援コメントが画面に溢れたのだけど、まだあーしは警戒を解いていない。


「そうだよね。あんたもアンデッド化してるよね」


 あーしの予感は的中した。


 突然、空気が重くなり、辺り一帯が異様な静寂に包まれた。


 その中心に現れたのは、かつてのギガバーンがアンデッド化した――ハイギガバーンだった。


「へえ……それなりの圧力はあるじゃん」


 あーしはやる気とともに拳の骨をポキポキと鳴らす。


 一方、リスナーたちから再び阿鼻叫喚のコメントが流れ始める。


『ハイギガバーン……これはガチのマジで本当にやばい!』


『花ちゃん、さすがに逃げるんだ!!!!!!!』


『あれは大災厄級だぞ!!!!!!!!』


『はい、死んだ! マジで死んだ! ガチで死んだ!』


 慌てふためくリスナーたちにあーしはVサインを突きつける。


「大丈夫、あいつもあーしがサクッと倒すよ!」


 あーしは決意を固め、ハイギガバーンとの戦闘に臨んだ。


 その巨体から繰り出される一撃一撃は地面を揺るがし、周囲の木々を粉々に砕くほどの威力があった。


 間違いなく、以前の数十倍の戦闘能力がある。


 でも、関係ないよ。


 今のあーしも以前のあーしじゃないんだから!


「とりゃあああああああああああああああ!」


 あーしは〈千撃拳〉の威力や速度を向上させた進化技――〈万撃拳〉でハイギガバーンに高速連打の拳を繰り出した。


 ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンッ!


「ゴギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」


 ハイギガバーンは悲痛な叫びを上げながら、以前よりも木っ端微塵に砕け散った。


 さすがにこれ以上は復活できないだろう。


『ひょえええええええええええええええええええ』


『ええええええええええええええええええええええええ』


『強えええええええええええええええええええええ』


『気持ちいいいいいいいいいいいいいいいいい』


『うわああああああああああああああああああ』


 リスナーたちの歓喜(?)のコメントを見て、あーしは両腰に手を当てて大きく胸を張った。


「どう、これが異世界道場で修行した姫川花緒の新たな力よ! でも、こんなのはまだまだ序の口。だってこれからあーしは新たなステージに行くからね」


 あーしがそう告げると、リスナーたちのコメントは「?」で埋め尽くされた。


 それでもあーしは続ける。


「あーしはこれから異世界に行く。そんでもって魔王を倒すよ!」


 この発言にリアルタイム勢のリスナーたちは驚愕した。


 それは全世界を揺るがす発言だったことは、あーしも十分にわかっていたのは言うまでもない。


 だけど、マジなんだから仕方ないよね❤



〈ギャル空手家・花ちゃんch〉


 最大同接数 209万7000人


 チャンネル登録者数 196万6000人


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