第23話  〈扉〉を守るガーディアン、そして未知なる異世界へ!

 あーしは魔物の村を抜けると、異常な〈気〉が渦巻いている場所へと向かった。


 パパとの1年の修行で五感も著しく強化されたのだ。


 そして向かった先にあったのは、古びた西洋風の廃城だった。


 うん、ここに間違いなさそうね。


 あーしはこの廃城に異世界へ通じる何かがあると悟った。


 なので、あーしは何の躊躇もなく城内へと入る。


 もちろん、様々なトラップや魔物が襲いかかってきたが、あーしは鼻歌交じりにそれらをすべて一蹴。


 やがて王の間とも呼ぶべき部屋へと辿り着いた。


「はは~ん、あれね」


 あーしは部屋の一角にあるモノを見つけた。


 扉である。


 全長3メートルぐらいの鉄扉だ。


 しかもその鉄扉は壁に付いていなかった。


 玉座の手前に不自然に置かれていたのだ。


「みんな、多分あの扉の先が異世界だから、ここから視る人は覚悟してね」


『え?』


『へ?』


『は?』


 などの疑問系のコメントが滝のように流れる。


「だ・か・ら、あの扉の先には本物の異世界があるかもだから視ている人たちは楽しみにしてってこと❤」


 あーしがリスナーのみんなにウインクしたときだった。


 バリバリバリバリバリバリバリバリッ!


 突然、鉄扉の前に黒い稲妻が迸った。


「汝、ここから先は行かせん」


 黒い稲妻から現れたのは、漆黒のフードと黒い鎧を着た骸骨騎士だった。


『うわああああああああ』


『あいつはまさか!!!!』


『花ちゃん、逃げろ!』


『あれはキング・スカルナイトだ!』


『ダンジョン協会や探索者ギルドで、討伐不可能と呼ばれた伝説の魔物か』


『さすがのギャル空手家の命運もここまでか』


『お願い、花ちゃん! 今すぐ逃げてくれえええええ』


 あーしは「大丈夫」とリスナーたちに断言する。


「今のあーしは数時間前のあーしじゃない。言うなれば「真・姫川花緒」なんだから、あんな骸骨の1体や2体相手じゃないよ」


「フハハハハハハハハハ、小娘の分際でほざきよる! 泣いて許しを乞えば楽に殺したやったものの、こうなったらこの世に生まれてきたことを後悔させるほどの絶望と苦痛を与えて――」


 と、骸骨騎士が言うのを待つほど今のあーしは気長じゃない。


「15倍〈光気功〉」


 だから、あーしは初っ端から15倍〈光気功〉を発動させた。


 ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――――ッ!


 あーしの〈気〉は部屋全体を揺るがすほど高まった。


「なにいいいいいいいいいいいいいいいいいい」


 骸骨騎士は余裕の表情から一変。


 全身をガクガクブルブル震わせて後退りする。


「ば、馬鹿な! なぜ、この世界の人間がこれほどの力を――」


 あーしは最後まで喋らせなかった。


「――〈千歩神拳〉!」


 あーしは予備動作を排した、その場での正拳突きを繰り出した。


 正拳突きから黄金色の巨大な気弾が放たれる。


 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!


「ぐああああああああああああああああああああああああああ」


 偉そうにしていた骸骨騎士は、あーしの〈千歩神拳〉をまともに食らって爆裂四散した。


 爆風と強震がおさまったあと、あーしは鉄扉が無傷だった姿を見て確信した。


 異世界へ通じる〈扉〉は不思議な力に守られていて、たとえ核爆弾を落としても傷1つ付かないらしい。


 ということは、やっぱりあの鉄扉の先は異世界に繋がっているのだ。


 あーしはリスナーのみんなにあらためて確認する。


「いい? みんな、これからあーしは……ううん、あーしたちは本物の異世界に行くからね!」


 そしてあーしはドローンを連れ、意気揚々と異世界へ旅立った。



 

 目覚めると、そこには抜けるような青空が広がっていた。


 周囲を見渡すと田舎のような光景が広がっている。


 もちろん、コンクリートで舗装された地面や電柱の姿はまったくない。


 どうやらここは森が近くにある街道沿いの近くらしく、その街道には馬車で移動したような痕跡が残っている。


 つまり、そういうことである。


「おお、ここが異世界か! あーしがいた日本とあんまり変わらないね!」


 あーしは思いっきり両手を広げ、大きく伸びをして深呼吸する。


 すごい、メッチャ空気が美味しい!


 こうして異世界に来るとよくわかる。


 空気に余計なものが混じってないのだ。


 たとえるなら日本の空気がコ〇・コ〇ラだとすると、この異世界の空気は名水100選の上位に来るほどの真水だ。


 そんなあーしが異世界の空気を堪能していると、ドローンの配信画面から滝のようなコメントが流れてくる。


『花ちゃん、いくら何でも冗談がすぎるよ!』


『いつの間に地上に戻ったの?』


『あんな廃城にも地上に繋がるワープホールがあったのか』


『異世界wwwwwwwwwwwwwwww』


『んなわけないwwwwwwww』


『いや、俺は花ちゃんの言うことを信じる! そこは異世界なんだ!』


『登録者200万人間近の配信者が嘘を言ったらダメだろ』


 などという内容のコメントばかりだった。


「マジだって。みんなにはわからないかもだけど、ここはマジで異世界なんだってば」


『いやいやいやいや、仮にそこが本物の異世界だってとして、どうやってドローンが動いてるんだよ』


『さすがに異世界まで電波は届かないだろ』


『あとバッテリーももたないんじゃね?』


 ああ、そのことか。


「それは大丈夫。今のあーしが使っているドローンはダンジョン協会と迷宮庁が合同で開発した特殊なドローンなの。そのドローンにあーしの固有スキル〈魂魄共有〉を付与しているから、このドローンはあーしが死なない限り半永久的に稼働するから」


 するとコメント欄から一斉に『???????』が流れてきた。


 うん、そうだよね。


 いきなりこんなこと言われてもわからないわよね。


 そう思ったあーしが簡単にリスナーたちに説明しようとしたときだった。


「誰か助けてくれええええええええええええ」


 遠くのほうから男性の悲鳴が聞こえてきた。


 あーしはハッとした。


 この感じは緊急事態ね!


 あーしは配信者である前に空手家だ。


 誰かが助けを求めているのなら、何を置いても助けに行かなければならない!


 待ってて、悲鳴を上げた誰かさん!


 姫川花緒が今すぐ助けに行くからね!



〈ギャル空手家・花ちゃんch〉


 最大同接数 230万1000人


 チャンネル登録者数 198万9000人


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る