第21話   パパとの修行、チートなスキルと強さの獲得!

 ダンジョン協会のビルから外へ出たとき、意外な人物があーしを待っていた。


「花ちゃん、待ってたぞ」


 あーしのパパだった。


「あれ? パパ、こんなところで何してるの?」


「何をしてるなんて言い方はひどいな。可愛い1人娘が短期間で成長したことに喜んでいるんだよ」


 パパはそう言うと、ダンジョン協会の玄関口でグスグスと泣き始めた。


 もう、パパったら空手バカに加えて親バカなんだから❤


 でも、今はパパに構っている場合じゃない。


「ごめんね、パパ。あーしの成長を喜ぶのはまた今度にして。今のあーしはやることができたの」


 そうである。


 最初は夏休みを利用したお小遣い稼ぎのために始めたダンジョン配信だったが、今のあーしはダンジョン配信界の行く末を握っていると言っても大袈裟じゃない。


 あーしはダンジョンで異世界に通じる場所を見つける。


 その使命感に燃えているのだ。


「なるほど、よくわかった」


 パパはハンカチで鼻をかむと、大きくうなずいた。


 ……ん? 何がわかったんだろう?


「花ちゃんがそれほど本気で取り組めるものが見つかったのなら、パパは全力で応援する。そして、パパはそんな花ちゃんを今よりもレベルアップさせるためにここへ来たんだよ」


 パパはそう言うや、開いた右手を何もない空中に突き出した。


 そして言い放った。


「ステータス・オープン」


 直後、パパの右手の先にが出現した。


「ええええええええ」


 あーしは目玉が飛び出るほど驚いた。


「パパ、何それ!」


「何ってパパのステータス表示画面だよ」


 当たり前のように告げたパパ。


 そんなパパにあーしは「いやいやいやいや」と首を振る。


「それって昔のRPGでよく見るヤツだよね。え? 何でそんなものをパパが出せるの?」


「だってパパは異世界帰りの元〈大武闘家〉なんだよ。ステータスぐらい当たり前のように出せるさ。それで見てくれ。これがパパが異世界で修得したスキルだ。あまり数は多くなくて恥ずかしいんだが……」


 へえ、スキルってあれでしょ。


 異世界で会得できる、この世界の特技とは違う意味の特技みたいな?


 あーしはどれどれと、パパのステーテス画面とやらを食い入るように見つめた。



 ――――――――――――――――――――


 ■名前

 姫川龍一郎


 ■種族

 人間


 ■職業

 大武闘家(空手家)


 ■年齢

 40


 ■レベル

 9208


 ■固有スキル 

〈空手無双〉

〈常時清潔〉

〈打撃耐性〉

〈斬撃耐性〉

〈魔法耐性〉

〈毒耐性〉

〈恐慌耐性〉

〈麻痺耐性〉

〈無視耐性〉

〈疎外耐性〉

〈疲労耐性〉

〈病気耐性〉

〈恐怖耐性〉

〈痛覚耐性〉

〈灼熱耐性〉

〈極寒耐性〉

〈魔力察知〉

〈気力察知〉

〈敵意察知〉

〈殺気察知〉

〈危機察知〉

〈剣士察知〉

〈盾人察知〉

〈賢者察知〉

〈魔女察知〉

〈聖女察知〉

〈魔物察知〉

〈魔人察知〉

〈異世界人察知〉

〈薬草察知〉

〈毒草察知〉

〈鉱物察知〉

〈稀少物察知〉

〈身体強化〉

〈千里眼〉

〈韋駄天足〉

〈大怪力〉

〈言語理解〉

〈変装〉

〈変身〉

〈手話〉

〈精神念話〉

〈精神憑依〉

〈生存術向上〉

〈快眠〉

〈快食〉

〈隠蔽〉

〈異世界道場〉


 ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!


 スキル多おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおい!


 あーしは心中で叫びに叫び抜いた。


「これって全部パパのスキルなの!」


 そうだよ、とパパはさも当然のように答える。


「そして、花ちゃんのスキルでもあるんだよ」


「え? どういうこと?」


「それはね、これからパパは花ちゃんにこのスキルを全部あげるってこと」


 パパは満足そうにうなずくと、いきなり「異世界道場!」と叫んだ。


 すると、パパのステータスがまばゆい光を放った。


「きゃああああああああ」


 と、あーしは両目を閉じて叫んだ。


 数秒後、目の前の光が弱まったことを感覚で知った。


 あーしはおそるおそる目を開ける。


「えええええええええええええええええええええええええ」


 あーしは再び叫んだ。


 当たり前だ。


 ダンジョン協会の玄関口にいたはずなのに、いつの間にかあーしとパパは体育館ほどの大きさの武道場の中に立っていたのだ。


 壁は木造で、床一面は立派な畳式である。


「パパ……ここって?」


「ここは異世界道場っていうパパのプライベートなスキル空間だよ」


「いやいやいや、もうちょっと詳しく教えて」


「仕方ないな」とパパはウキウキで語り始めた。


 どうやらここは現実世界とは別の空間に存在している場所であり、道場の他にも様々な部屋があるという。


 寝室、キッチン、お風呂、トレーニングルーム、シアタールーム、サウナ、娯楽室、図書室とかだって。


 パパはドヤ顔で言う。


「異世界に存在するもので〈収納スキル〉や亜空間魔法がこれに値するけど、この異世界道場はそれらのスキルや魔法の最上位互換なんだよ。宿主の許可なく絶対に第三者は入れない。しかもどんなに汚しても部屋から出れば完璧に元通りになって、冷蔵庫や冷凍庫の食材はどんなに食べても無くならない。シアタールームは日本で観られる映画やサブスクは見放題だし、娯楽室には数十年前の古い名作の漫画から最新刊の漫画や小説まで何でも揃ってる。ここで一生暮らすこともできるぐらいだ」


「凄すぎ……でも、何でパパはこんなスキルを持っていたの?」


「いい質問だね。異世界はパパたちのいる地球とは比較にならないほど過酷な環境なんだ。勇者PTや冒険者PTが魔王討伐に向かう冒険に出たとしても、そのほとんどが魔王にやられる前に過酷な環境に殺されるんだ」


「へえ……ト〇コやHUN〇ER✕HU〇TERみたいな世界なんだね」


「パパにはよくわからないけど、まあ多分そんな感じだよ。だからこういったプライベート空間のスキルを持った人間は異世界では有利なんだ。疲れたらこの空間に入ってしまえば体力を回復できるからね」


 確かにそうかもしれない。


 過酷な冒険をしている中で、敵の襲撃を一切気にせず体力を回復できたらどんなに楽だろう。


「パパはもうこんなスキルは使うつもりはないから、花ちゃんが異世界の魔王を倒しに行くならこのスキルをあげるよ。欲しい?」


「欲しい!」


 パパはこくりとうなずいた。


「よし、じゃあ早速修行を始めよう。花ちゃんなら異世界道場を始め、全部のスキルを会得するのに1年ぐらいで済むはずだから」


「え! 会得するのに1年もかかるの! あーしにはそんな時間はないよ!」


「大丈夫。この異世界道場で1年を過ごしても、元の世界の時間は1分しか経過してないから」


「なるほど、時間の流れが違う系ね!」


「イエス!」


 パパは一本だけ突き立てた親指を向けてくる。


「わかった! それじゃあ、あーしに修行をつけて!」


「モチのロンだよ、花ちゃん!」




 それから1年後(現実世界では1分後)――。


 あーしはパパが持っていたすべてのスキル+あーし専用の固有スキルを会得し、再びダンジョンへと潜った。


 ついでに1年のパパとの修行で〈光気功〉の潜在能力が100倍は上がった。


 さあ、配信を続けながら異世界の魔王を倒しに行くぞ!



 〈ギャル空手家・花ちゃんch〉


 最大同接数 169万6000人


 チャンネル登録者数 164万0000人

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