第15話   都市伝説の実態、魔物の村を壊滅させろ!

 草原エリアを抜けると、あーしの目の前に広がったのは、またしても信じがたい光景だった。


 草原アリアの先は崖になっていて、崖下の向こう側に村があったのだ。


 円形の柵に囲われたもので、一ヵ所にきちんとした正門が見える。


「嘘でしょ……」


 あーしは思わず本音を漏らした。


 その村の中に動いているのは人間じゃなかった。


 魔物だ。


 おそらく数百体はいるだろう。


 ゴブリン、オーク、コボルト、トロールなどの亜人系の魔物の他にも、スライムやキマイラ、ゴーレムやフェンリルなどの魔物の姿が見えた。


 それだけじゃなかった。


 中には稀少中の稀少な魔物――ドラゴニュートと呼ばれる竜人がいた。


『ええええええええええええ』


『魔物の村だ!!』


『マジで! 都市伝説かと思ってたわ!』


『早くダンジョン協会に知らせなきゃ!』


『ちょっと待て。マジの魔物の村ってことは、あいつらの食料って……』


 配信は続けていたため、あーしはみんなのコメントを読みながらゾッとした。


 あーしも魔物の村の噂ぐらいはネット記事で読んだことがある。


 魔物の村の住人は、配信者や探索者を誘拐してきて食料として飼っている。


 あーしは〈光気功〉を発動して五感を強化。


 その中で視力を強化し、100メートル以上は離れている魔物の村の様子を視認する。


 あっ、とあーしは声を上げた。


 村の一角にさらに円形の柵に覆われた空間があり、そこに全裸の人間の男女が家畜同然に鎖で繋がれていたのだ。


 噂は本当だった。


 あの村では人間が家畜として飼われている。


「許さない! あの人たちはあーしが助ける!」


 あーしはその村を一刻も早く滅ぼすため、何の躊躇もなく崖から飛び降りた。


 垂直の崖を足場に数十メートル下の地面に無傷で着地。


 そのまま魔物の村に向かって全力疾走する。


 当然ながらドローンもあーしの後についてくる。


 高速で移動したあーしは、あっという間に正門の前に到着した。


 正門前には門番たちがいた。


 当然、人間じゃない。


 巨大なキング・オークたちが立ちふさがっていた。


 分厚い志望の下に垣間見える、筋肉の塊。


 そんなキング・オークたちは、凶暴な目つきであーしを睨みつけた。


「ブギイイイイイイイイイ」


 キング・オークたちは人間のあーしを見て驚いたのだろう。


 あーしを指さして意味不明な言葉を叫び始める。


「ふん、あーしを通さないつもり? でも、通るに決まってんでしょ!」


 あーしは拳を握りしめ、キング・オークたちに向かって一気に突進した。


〈光気功〉の力で身体能力が強化され、動きが一瞬で速くなっているあーしだ。


 キング・オークたちが動く前に、あーしの拳が1匹のキング・オークの顔面に炸裂した。


 キング・オークの頭が吹き飛び、その巨体が地面に倒れ込む。


 残りのキング・オークたちが怒り狂って襲いかかってくるが、あーしの動きはさらに速くなっていた。


「この豚アアアアアアアアアアアア!」


 あーしは〈光気功〉の力で次々とキング・オークたちを倒していく。


 拳や蹴りが光の残像を残しながら命中すると、キング・オークたちはそのまま地面に倒れ込み、まったく動かなくなる。


「さあ、ここから本番よ」


 あーしは村の入り口に立ちはだかる高さ5メートルはある鉄扉に目を向けた。


 扉の向こうには、さらなる恐怖が待ち受けていることは間違いない。


 だけど、あーしはリスナーたちの声援を背に、恐れることなく進む決意をした。


『花ちゃん、頑張れ!』


『あの鉄扉、どうやって破るの?』


『おいおい、ちょっと待てって! いくら何でもソロでは無理だ!』


『ここは一旦地上に戻ろうぜ! 仲間を集るんだ!』


「心配ありがと、みんな。でも、ここまで来て引き返すなんて選択肢はあーしにはないよ!」


 あーしは〈光気功〉の力をさらに高めた。


 全身がまばゆい光に包まれ、あーしは右足に力を込めた。


 直後、あーしは全力で鉄扉に向かって蹴りを繰り出した。


 その一撃はまるで雷鳴のように轟き、鉄扉が大きく揺れる。


 そして、ついにその巨大な扉が破壊され、村の中が見えるようになった。


 鼻につく腐臭と獣臭、そして濃厚な血の匂いが漂ってくる。


 同時に凶悪な殺意の目が、あーしの肉体に突き刺さってくる。


 でも、負けない!


「姫川花緒――推して参るよ!」



 〈ギャル空手家・花ちゃんch〉


 最大同接数 55万6000人


 チャンネル登録者数 69万4000人

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