第14話   草原エリアの続戦、ダーク・フェンリルの出現!

 草原エリアの血のように赤い月が浮かぶ夜空の下、あーしは次なる敵との戦いに備えていた。


 草原には薄い霧が立ち込め、神秘的でありながらも不気味な雰囲気を醸し出している。


 静寂を破るのは風に揺れる草のざわめきだけだった。


「さぁ、みんな。次は何が出てくるかな?」


 ドローンが上空から配信を始め、リスナーたちのコメントが画面を埋め尽くす。


 画面の向こうには、興奮と期待に満ちた視聴者たちが待っている。


『花ちゃん、気をつけて!』


『え? 続戦するの?』


『少し休んでもええんやで』


「大丈夫、平気平気。このまま続戦するよ」


 と、あーしが言ったときだった。


 不気味な唸り声が草原の奥から響き渡った。


 暗闇の奥から現れたのは、全身が闇のように黒く光る狼だった。


『ダーク・フェンリルだ!』


『イレギュラーじゃん!』


 ダーク・フェンリル。


 聞いたことがある。


 動物系の魔物の中でも上位種にある最強の存在。


 配信外でフェンリルに遭遇して闘ったことはあるけど、十数メートル先にいるダーク・フェンリルは通常のフェンリルよりも一回り大きかった。


 そして、その目には暗黒の輝きが宿っている。


「こいつがダーク・フェンリル……よし、次の相手はあいつだ!」


 あーしは〈光気功〉を発動し、体が黄金色に輝く。


 全身に力がみなぎり、身体能力が数十倍に引き上げられる。


 五感も強化されたことで視界がよりクリアになり、周囲の動きがスローモーションのように感じられる。


「行くよ、ダーク・フェンリル!」


 ダーク・フェンリルは一瞬で距離を詰め、鋭い爪であーしを襲いかかってくる。


 そのスピードは驚異的で、まるで影のように速い。


 風圧が顔に当たり、冷たい感触が肌を刺す。


 グルアアアアアアアアアアアッ!


 ダーク・フェンリルは前足で薙ぎ払ってくる。


 あーしはギリギリでその攻撃をかわし、反撃の一撃を繰り出す。


 けれど、ダーク・フェンリルはその攻撃を軽々と避け、再び襲いかかってくる。


「やるじゃん!」


 あーしは〈光気功〉の力でさらにスピードを上げ、ダーク・フェンリルの攻撃をかわし続ける。


 だが、その攻撃はどれも一撃で致命傷になり得るものばかりで、気が抜けない。


 緊張感が高まり、全身の筋肉が張り詰めるのを感じる。


「ここで負けるわけにはいかないの!」


 あーしは気合を入れ直し、ダーク・フェンリルとの攻防を繰り広げる。


 鋭い爪や牙を避けつつ、隙を見て反撃を試みる。


 しかし、そのスピードにはなかなか追いつけず、苦戦を強いられる。


 心臓が激しく鼓動し、アドレナリンが体中を駆け巡る。


『花ちゃん、頑張れ!』


『ダーク・フェンリル、やばすぎる!』


『負けるな、花緒ちゃん!』


 そんなリスナーたちの応援コメントが想像できる。


 みんな、あーしがどこまで行けるのか見たいのだ。


 だったら、あーしがすることは1つ。


 みんなの期待に最後まで答えること。


 それだけだし、それしかない!


 あーしはその声援に応えるため、新たな決意を固める。


「みんなの声援があーしの力になる! 行くよ、新技――〈無影神拳むえいしんけん〉!」


 あーしは〈光気功〉の力をさらに高め、全身がまばゆい光に包まれる。


 その光はダーク・フェンリルの目を眩ませ、あーしの姿を一瞬見失わせる。


「これで終わり!」


 あーしはダーク・フェンリルの懐に飛び込み、〈無影神拳〉を繰り出す。


 その一撃は、まるで影のように無数の拳が一瞬で打ち込まれるような技だ。


 拳が光の残像を残しながらダーク・フェンリルに命中し、その巨体が震える。


「どうだ!」


 あーしの拳がダーク・フェンリルの体に次々と命中し、その衝撃で地面が揺れ、周囲の草が吹き飛ぶ。


 ダーク・フェンリルはそのままバランスを崩し、地震かと錯覚するほどの地鳴りを轟かせながら地面に倒れる。


 口から大量の血泡を垂れ流し、ピクリとも動かなくなった。


 あーしは息を整えながら、その勝利を確認した。


「あーしの勝ち!」


 あーしは勝利のピースサインを配信画面に突きつける。


 もちろん、みんなを安心させるために満面の笑みで。


『ひょええええ、花ちゃん、最高!』


『〈無影神拳〉、めっちゃカッコよかった!』


『さすが花ちゃん、最強!』


『やべええええええ』


『ワイ、マジで感動してる』


 リスナーたちのコメントが爆発的に増え、画面は歓喜の声で溢れた。


 心の中に安堵感が広がり、達成感が全身を包み込む。


「さあ、次のエリアに行くよ!」


 あーしはドローンが無事に飛行しているのを確認し、次なる冒険に向かって歩き出した。



〈ギャル空手家・花ちゃんch〉


 最大同接数 47万6000人


 チャンネル登録者数 53万0000人






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