第13話   下層に浮かぶ赤い月、バジリスクとの死闘!

 あーしは目の前の異様な光景に目を奪われた。


 ダンジョンの下層なのに、まるで外界のような広大な草原が広がっている。


 それだけじゃなかった。


 夜空には血のように赤い月が浮かんでいた。


 その不気味な光景に、あーしの胸がざわつく。


 地上階層の草原エリアに似ているが、周囲から漂ってくる気配が桁違いだった。


 やっぱり、下層はすごいわね。


〈光気功〉による五感強化をしなくても、とんでもない魔物たちがそこら中に存在しているのが気配である。


 でも、あーしは逃げない。


 ここまで来たら、まだ誰も到達したことがない最深層に行ってやる。


「これはいよいよ本腰入れないとね」


 まあ、それはともかく配信配信❤


 ドローンが上空を飛び、あーしは配信を始めた。


「やっほー、みんな。今から下層での配信をするよ」


 あーしが配信を始めると、待機してくれていたリスナーたちのコメントが次々と流れてくる。


『今回の配信も楽しみにしてる』


『花ちゃん、気をつけて!』


『赤い月とかヤバそう……』


『どんな魔物が出てくるんだろう?』


 などのコメントを読みながら、あーしは慎重に草原の中を進んでいく。


 その時、突然地面が揺れ、巨大な影が草原の中から現れた。


「あれってバジリスクってやつ?」


 バジリスクは全長10メートルを超える巨大な蛇のような姿をしており、その目には石化の力を持っていると言われている。


 あーしはその威圧感に一瞬怯むが、すぐに闘志を燃やす。


「さすがに逃がす気はないようね。それじゃあ、こっちもそれなりの対応をするよ」


 バジリスクが低く唸り声を上げ、その鋭い目であーしを睨む。


 あーしはその視線をまともに受けながら、〈光気功〉を発動させる。


 身体が黄金色に輝き、身体能力が一気に引き上げられる。


「今日は最初っから全開だよ!」


 あーしはバジリスクに向かって駆け出し、その巨大な身体に向かって渾身の突きを放った。


 バジリスクもまた、鋭い牙を剥き出しにして襲いかかってくる。


「ハアアアアアアアアアァァァッ!」


 気合一閃。


 あーしの拳がバジリスクの鱗にぶつかり、激しい衝撃が走る。


 しかし、バジリスクの鱗は硬く、その一撃では倒せない。


 あーしはすぐに次の攻撃に移る。


「――〈疾風旋蹴〉!」


 あーしは空中で回転しながら強烈な蹴りを繰り出す。


 その一撃がバジリスクの側面に直撃し、巨大な体が揺れる。


「まだまだ!」


 バジリスクは怒り狂い、尻尾を振り回してあーしを攻撃してくる。


 その猛攻を〈光気功〉で強化された身体能力で避けつつ、あーしは反撃のチャンスを狙う。


 コンマ数秒後、あーしはそのチャンスを見つけた。


 そして――。


「――〈千撃拳〉!」


 あーしのパンチの豪雨がバジリスクに突き刺さる。


 そのスピードと力に、バジリスクの皮膚が凹んでいく。


 ヒギャアアアアアアアアア


 バジリスクは悲鳴を上げたものの、倒れるまではには至らなかった。


 最後の力を振り絞り、あーしに容赦なく襲いかかってくる。


「これで終わりよ、バジリスク!」


 あーしはとどめとばかりに全力で〈飛竜蹴り〉を繰り出す。


 ゴシャッ!


 その一撃がバジリスクの頭に直撃し、巨大な身体がどうと地面に崩れ落ちた。


「やった、みんな! あーしの勝利!」


 あーしが勝利の雄叫びを上げると、リスナーたちのコメントが爆発的に増え、配信画面は歓喜のコメントで溢れた。


『花ちゃん、最高!』

 

『〈飛竜蹴り〉、めっちゃカッコよかった!』


『おいおい、嘘だろ! マジで強えじゃん!』


『この強さはS級の探索者と並ぶだろ』


『これって普通の空手じゃないよね?』


『初見です。トレンドから来ました』


『さすが花ちゃん、最強!』


 あーしは満面の笑みでピースサインをする。


「いつも応援ありがと! この調子でもっと奥へ進むよ」




〈ギャル空手家・花ちゃんch〉


 最大同接数 39万4000人


 チャンネル登録者数 43万9000人


 

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