第3話   迷惑系ダンジョン配信者たちを一蹴!

 押忍、あーしは姫川花緒!


 トロール退治の大成功で配信も大盛況だし、リスナー数も急増中!


 でも、今日はちょっといつもと違うことが起きたんだ。


 いつものようにダンジョン配信をしてたら、妙な光景を目撃しちゃったの。


「あれは……」


 ダンジョンの奥で見かけたのは、高校生の男女3人が迷惑系ダンジョン配信者のグループに絡まれてる場面だった。


 あーしの配信画面にも、その光景がしっかり映ってた。


『あれって……』


『助けてあげて、花緒ちゃん!』


『あのチャラ男たち、やばいんじゃない?』


 高校生たちは探索者専門学校の生徒らしく、しかも遠目からでも感じて来る〈気〉の容量から推測すると、どうやらまだあまり強くないみたい。


 一方、相手は20代半ばのチャラい男たちで、見た目も態度も悪そう。


 彼らは高校生たちをバカにしながら、カメラを向けて笑い声を上げていた。


 しかもよく見たら高校生たちは顔にアザができていた。


 暴力を振われたんだ。


「許せない」


 あーしは瞬時に決断した。


 配信用のドローンを飛ばしながら、チャラ男たちに向かって歩を進めていく。


 彼らはあーしに気づくと、ニヤニヤと笑いながら近づいてきた。


「おいおい、こんなところで何してんだ?」


「何だ、このギャル! 空手着を着てやがる! コスプレイヤーかよ!」


「よく見たら可愛いじゃん。ようよう、俺たちが遊んでやろうか」


「――っざけんな!」


 あーしは一瞬で距離を詰め、チャラ男のリーダー格の男に強烈な突きを食らわせた。


 男は完全に油断していて、あっという間に地面に倒れ込んだ。


「な、何だこの女!」


「あんたらみたいな奴は、許せないんだよ!」


 条件反射的にもう一人のチャラ男があーしに襲いかかってきたが、あーしはその攻撃を軽々と避け、彼の腹部に蹴りを入れた。


 男は痛みに顔を歪めて、倒れ込む。


「まだやる気?」


 最後の一人も恐る恐る近づいてきたが、あーしの威圧感に圧倒されて、その場から一目散に逃げていく。


「大丈夫?」


 あーしは高校生たちに向かって微笑んだ。


 彼らは震えながらも、あーしに感謝の意を伝えてくる。


「ありがとうございます! 本当に助かりました!」


「いいって。あーしはただ、空手家としての正義を貫いただけだから」


 この一部始終があーしの配信に乗り、SNSや有名動画投稿サイトで大バズりすることになった。


 リスナーたちはあーしの勇ましさに感動し、コメント欄は大盛り上がりだった。


『花緒ちゃん、マジカッケー!』


『やっぱり花緒ちゃんは最強!』


『こんなに正義感ある配信者、初めて見た!』


 あーしは天狗になることなく、ただ静かに画面に向かって微笑んだ。


 そのとき、高校生たちが「お名前を教えてください」と言ってきた。


「あーしの名前は姫川花緒。花ちゃんって呼んで」


 それだけ言うと、あーしは再びダンジョンの奥へと向かった。


 だが、このときのあーしは知らなかった。


 実はこの高校生たちの中に探索者専門学校の理事長の娘がいて、ここからあ-しの名前はSNSや動画投稿サイトのみならず、探索者専門学校に顔と名前が知れ渡ったことに――。



〈ギャル空手家・花ちゃんch〉


 最大同接数 467人


 チャンネル登録者数 821人


 

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