第6話 仕事ってなんだっけ?

「山根! また、こんな失敗をしやがって! すぐにやり直せ! 明日には先方に提出するんだぞ!」

 今日も阿呆の怒号が事務所に響く。なんの生産性も無い仕事。こんなもののために時間を割くとは、世のサラリーマンはよほど暇らしい。

 PCに自分の姿が映り込む。そこには、虚ろな目をした男がいた。

「聞いているのか!! この役立たず!!」


 SNSでの俺のフォロワーは、7千人を越えた。いわゆるインフルエンサーと呼ばれる存在にもなっている。俺の発信で多くの人が熱狂し、一つの流行を作り出せる。先ほどから怒号をまき散らしている男には、一体なにがあるのだろうか? くだらない仕事、部下、腹の周りにしがみ付くように付着した脂。お前の持っているモノは、俺からすればすべてゴミだ。


 出版した電子書籍は既に5冊。どれも出版すればベストセラーを獲得し、その印税は、すでに本業の給料を上回るものとなった。俺の収入は、ずっと吠えているあの男より多いだろう。俺は、いつまでこんな生産性の低い仕事をするのであろうか?

 朝早くに起き、通勤する。事務所では、理不尽極まりない言葉で罵られ、一日が終わる。作った企画書や資料は、使われずにシュレッダーへと流される。


「なんども言っているだろ!! 早く新しい資料をもってこい!!」

 俺は、跳ねるようにデスクから立ち上がると、そのブタに企画書を叩きつけた。

「やってられるか。こんな会社、ヤメテやる!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る