第5話 それは誰の時間?

 一日が24時間では足りない。タスクが多いのだ。読書、執筆、SNSへの書き込み。気を抜いていると一日があっという間に溶けていく。スマホやPCに向かっている時間がながくなる。だが、そうしなければSNSでの人気や電子書籍の売り上げは落ちる。この時間で、俺は、家族に貢献しているのだ……。

「今度の土曜日、イロハのお遊戯会だからね」

 そんな言葉が聞こえた気がする。日曜日の朝7時。俺の意識が遮られる。既に日課の朝活。休日は、朝4時に起き、読書、執筆にその時間を充てる。家族が起きてくるまでの静かな時間。一週間の中でもっとも集中できる時間だ。


「ちょっと、弘毅、聞いているの?」

 どうやら聞き間違いではなかったらしい。妻は、パジャマ姿でリビングの入口に立っている。表情には、軽い侮蔑の色が含まれる。俺は、お前たちのためにも頑張っているっていうのに。その顔は一体、ナンダ……?

「わかっている。絶対に見に行くよ。イロハも最近、がんばっているのは知っているからな」

「最近、帰ってきてもそればっか。子どもたちとの時間だって少なくなっているじゃないの! あの子たちも『パパは忙しいから邪魔しちゃいけない』って我慢しているのよ!」

 朝からやめて欲しい。集中が削がれていく。

「わかったよ。今日は子どもたちを連れて、図書館に行ってくるよ。最近、気が付かなくて悪かったな」

 心が乗らないコトバを返す。何で俺は、こんなに配慮をしなければならないのだろうか?


「弘毅。そういうところだよ。なんか変わったよ」

 棘を含んだコトバが朝のリビングに反響した。

 家族とのジカンってなんだ……?

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