第3話 読まれる。その先を求めて

 俺の本が、どんどん読まれている。アタマの中を書き散らした一冊にも関わらずだ。レビューも幾つかついた。

「こんなビジネス書、はじめてです!」

「表面的な成功論よりも、すごくためになります!」

 俺の表現したモノが読者に、世の中に受け入れられている。……こんなにも嬉しいことはない。会社では、こんなにも受け入れられることはなかった。ここは、俺にとっては聖域サンクチュアリだ……。


 こうなると次の作品だ。読者も俺の本を読みたいと言ってくれている。書かなければ……。いや、書きたい。俺の作品を多くの人に届けたい。

 俺は早速、本を買い漁った。ビジネス書、小説、エッセイ。まずは、情報を手に入れなければ、書くことはできない。こんなにも本を読み、学ぶのは、大学受験の際でもなかった。学ぶって楽しい……。


 当然、時間が足りなくなる。仕事・家族との時間を差し引くと、使える時間は少ない。そのために早起きをはじめた。家族が起きてくる前の静かな時間。この時間で読書と執筆を行う。誰かが言っていた。朝は、脳がもっとも活発になっているらしい。時間にして2時間。だが、圧倒的に捗る。いつの間にか、早起きが習慣になっていた。


 こうなると少しでも時間を有効に使うことに集中するようになる。耳で読書ができる朗読アプリをDLし、通勤の車の中でも欠かさなかった。会社までは、車で約30分ほど。耳読書は2倍速で聴けるため、1冊を5日程で読了してしまう。

 休日には、子どもたちと図書館に行く。妻は、「休日を今まで以上にゆっくり過ごせる」と喜んでいたのだが、一番喜んでいるのは俺だ。子どもたちが絵本を読むその隣で、ビジネス書を読みふける。俺の姿を見て、子どもたちにも本を読む習慣がついてくれればいいと思う。まあ、この歳になるまで本を読む習慣はなかったが。

そんな生活が1カ月ほど続き、習慣として定着してきたころ、次の作品が完成した。

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