第2話ついヤっちゃうんだ

その夜、俺は……。


 「ヒャッハァァァ!!!!汚物は消毒だあああああ!!!!」


 虜になっていた。


 早速獲物を探知し向かった先にいたのは、黒い人型。

 普通に怖い見た目なのだが……なぜだろう俺には金にしか思えなかった。

 高速でヤツに近づき吹かしておいたチェーンソーを振るう。

 意外な程何の抵抗も無く切れ、その瞬間形容しがたき快感が俺を襲う……。

 なんだろうトイレで出し切った後のような、そんなような快感だ。


 やっべえ超楽しい……!


 小型一体一万円

 中型一体五万円

 大型一体十万円以上

 他にも上がいるがこいつらが一般的な奴ららしい。

 今倒した奴は小型、最底辺かつ一番湧きやすく一番狩りやすい。

 スマホに映る反応は、5つ、そのすべてが小型。

 一撃見舞いするだけで一万手に入るそれがあと五体も……!

 そう思い興奮しながらも奴らが消えぬよう急いで向かった。


 ある時は、縦に。


 ある時は、横に。


 ある時は、走りながら切り裂く。


 そのどれもが手応え無く結果へといたる。


 チェーンソーと思えないような切れ味に若干引きながらも楽勝だなと思った時。


 地面が爆ぜる。

 目の前に巨大なシルエットが見え咄嗟にチェーンソーで身を守った瞬間破砕音が響き途轍もない重圧を受ける。

 体勢を変えるためチェーンソーでそらしながらステップで後退する。

 5メートルはあるだろうかつぎはぎの岩石で構成された妙にマッシブな巨人がそこにはいた。

 チェーンソーは無事だがおそらく生身で受けたら潰されるであろうパワー。

 巨人は鈍い音を響かせながら体勢を変え、構えを取る。

 スターターロープ(エンジンを始動させるヒモ)を引きエンジンを点け剣道の剣士が如く構える。

 睨みあいながら共ににじり寄り……打ち出される右ストレートに対し思いっきりチェーンソーを振り下ろす。


 火花が舞い金属が悲鳴を上げる。


 小型何ぞとは格がちがうのかすぐに切れはしない。

 だがそれでも深く刃が沈んでいき、それに巨人は驚いたのか拳を引っ込め後退する。

 引くのにあわせ懐に潜り足を思いっきり切断し後ろに引き、チェーンソーを縦に構える。

 だが奴は体勢こそ崩すが器用に片足で地面を蹴り下がり振り下ろすチェーンソーを避け立ちあがり仕返しとばかりに拳を打ち込んでくる。

 それを寸前で躱し、切ったはずの足を確認すると片方と形が微妙に違う。

 どうやら不完全では再生するっぽい、厄介なものだが核さえ潰せばいいのだろう……たぶん。

 さて奴の身体構造上明らかに胸にあるというのはなんとなくわかる……マッシブな体にへんな文様ついてるんだもん胸に。

 先行は巨人、地面を蹴り進むのに対し、おれはチェーンソーを脇に寄せ奴を睨む。

 高速で迫ってくる巨人、体がこわばって来るのがわかる。

 殴るためか急に止まる瞬間懐に潜りチェーンソーを全力で突き刺す。

 粉塵が舞いチェーンソーが震える、しかし着実に巨人の中に入って行き巨人も抵抗するが腕が届かない為体を振り回すだけだ。

 ガラスが割れるような音が響く。

 巨体が崩れ塵となってゆく。


 その場で倒れる。

 「つっかれたぁー」

 携帯に写されたスコアを見る

 「あいつ中級なのかよ……強すぎだろ」


 けど。


 「楽しかったなあ……」

 

 憎かった朝日が綺麗に見えた。

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