第6話
「私、その方と結婚したくない.............!」それを聞いた瞬間、レオンは驚いた表情を浮かべた後で、困ったような表情を浮かべて黙り込んでしまった。
その表情を見た途端、私は自分が口にしてしまった言葉の意味を理解してしまい、恥ずかしくなって俯いたまま黙り込んでしまったのだった。
しかしその直後、突然レオンが私の手を握ってきたかと思うと、真剣な眼差しで見つめてきたため、私は緊張してしまったせいか心臓の鼓動が激しくなり始めていた。
そして彼はゆっくりと口を開いた。
「リジー、安心して............。僕が絶対に何とかするから!」彼の言葉を聞いた瞬間、胸が熱くなるような感覚を覚えた私は、思わず涙が溢れ出てきそうになってしまったのだが、それを堪えつつ小さく頷いたのである。
そうして私たちは密かに誓いを立てたのだった。
翌朝、目が覚めると真っ先に鏡の前に立った私は、自身の姿を確認してみたのだが、特に変なところは無いように思えた。
しかし念には念を入れておこうと思い、メイドに手伝ってもらいながら身嗜みを整えた後で、朝食のために食堂へと向かったのだった。
食事を済ませた後はいつものように勉学に励むつもりだったのだが、頭の中に浮かぶのは昨夜レオンと交わした約束の事ばかりであり、そのせいで集中力を欠いてしまっていたのである。
それでも何とか気持ちを切り替えようと努力したおかげで、午前中は何とか乗り切ることが出来たのだが、午後の授業が始まってからは次第に疲労感を感じるようになってきたため、休憩時間にレオンに会いに行くことにした。
(早く彼に会いたい................)そう思うと居ても立っても居られなくなってしまった私は、足早に彼の元へと向かったのだった。
そして、私がレオンと会う約束をした場所を訪れると、彼は笑顔で迎えてくれたため、私も嬉しくなって自然と笑みがこぼれてしまった。
「リジー、いらっしゃい!どうしたんだい?もしかして会いたかったの?」
そう言って悪戯っぽく笑う彼の顔を見た途端、私の鼓動が激しくなった。
だが、それでも平静を装って彼に近づいていくと彼の隣に腰掛けたのである。
それからしばらくの間、私たちは雑談を楽しんでいたのだが、途中で会話が途切れてしまい静寂が訪れたことで緊張感が増し始めたため、私は意を決して彼に問いかけた。
「ねえレオン、あなたは、本当に私とカーティス王子が婚約することになっても良いの............?」それを聞いた瞬間、彼は驚いたように目を見開いて固まってしまった。
だが、すぐに悲しそうな表情を浮かべて口を開いた。
「本当はいやだよ、君を誰にも渡したくなんかない」その言葉を聞いた瞬間、胸が締め付けられるような思いになった私は、涙を流してしまった。
そんな私を心配したのか、レオンはすぐに駆け寄ってきて抱きしめてくれたのだがーーその温もりに包まれることで安心感を覚えた私は、思わず泣き出してしまったのである。
「リジー、泣かないで。僕が君を必ず幸せにする」そう言ってレオンは再び強く抱きしめてくれたため、私はもう我慢が出来なくなり、顔を埋めて泣き続けた。
その後しばらくの間はお互いに無言のままだった。やがて、私が落ち着いた頃を見計らってレオンが口を開いた。
「リジー.............僕と一緒に、カーティス王子と話し合おう。」
その言葉に驚いた私が顔を上げると、真剣な眼差しで見つめられていたことに気がついた私は、戸惑いながらも問いかけた。
「どういうこと..............?」すると彼は真剣な表情のまま話し始めたのだった。
「僕がさっき言った言葉は本心なんだ............。君が他の男性と結婚するなんて、絶対に耐えられない。」
そう言って彼は、私の手を握ると訴えかけるようにして言葉を続けた。
「だからお願いだ.............リジー、どうか僕を信じて欲しい.............!」
彼の言葉を聞いた瞬間、私の心は大きく揺れ動いたのだがーー。
それでもまだ不安が完全に拭えたわけではなかったが、私は首を縦に振ることしかできなかった。
そして、そのまま二人でカーティス王子の元へ向かうと、彼は既に待ち構えていたらしく、私たちの姿を見つけるなり笑顔を浮かべて出迎えてくれたのである。
.............あの人が、カーティス王子。
初めてお見かけする彼は、黒く艶のある髪に聡明さを感じさせる碧い目をしていた。
彼は、レオンとはまた違う華やかさがあった。
私たちは応接室へと通されたのだが、そこで最初に口を開いたのは、私ではなくレオンの方であった。「..............カーティス王子、単刀直入に申し上げますがリジーとの婚約を解消して頂きたいのです」
それを聞いた瞬間、私は心臓が止まりそうになった。
しかしそれと同時に焦りが込み上げてきたため、抗議しようとしたがーーそれよりも先に、カーティス王子が口を開いた。
「ふむ............君たち二人が恋仲であることは以前から知っていたが、まさかここまで早い段階で婚約破棄を迫ってくるとはな...........」そう言って、彼は見定めるような表情で私たちを見つめると、深い溜め息を吐いた。
すると、レオンはカーティス王子に向かってこう問いかけたのである「では、リジーと結婚することに関しては問題ないということですね?」
それを聞いた瞬間、私は驚いてしまった。
まさか彼が私との婚約の話を、自ら進めるなんて思っていなかったからである。
だが、それに対してカーティス王子は少し考えた後に、答えを出したのである。
「いや、それは出来ない話だ」
その瞬間、私の心臓はぎゅっと止まるかと思った。そんな私を見たレオンは、私の手を優しく握りながらこう言ったのである。
「リジー、ごめんね。でも、こうしなければ僕たちの未来は閉ざされてしまうんだ.............。」
その言葉を聞いて、私は思わず涙を流しそうになったのだが、レオンが私の肩を抱き寄せてくれたため何とか堪えることが出来たのだった。
そして同時に、彼から温もりを感じたことで安心感を覚えた私は彼に身を委ねることにした。
すると次第に心が落ち着いてきたのである。
それからしばらくの間、この空間は沈黙が続いたのだが、やがてカーティス王子がゆっくりと口を開いたのである。
「君たちの気持ちは分かった............だが、私は認めるつもりはない。」それを聞いた瞬間、私たちは絶望感に打ちひしがれてしまった。
しかし、それでもレオンは諦めずに食い下がっていったのである。
「何故ですか?僕たちが結ばれることをら望んでいらっしゃらないというのですか?それとも、何か理由があるのでしょうか?」そんな彼に対して、カーティス王子は冷静な視線を向けつつ、淡々と語り始めた。
「..............確かに君たちの幸せを願いたいのは山々だが、今回は、私たち両親の勧めの上での婚約だ。」
それを聞いた瞬間、レオンの表情が凍りつくのが分かった。
そして同時に、私の心の中にも様々な感情が芽生え始めたのだがーーそれでもレオンは諦めようとはしなかった。
彼は再びカーティス王子に向かって問いかけたのである。
「それでは、僕たちの気持ちを無下にしてまで政略結婚を強行するというのですか?それがこの国のためだとおっしゃるのですか?」
しかし、カーティス王子は首を横に振って答えた。
「いや、そういうわけではない。君たちの気持ちは尊重するが、それでもやはり私には立場というものがある。だからこそ、君たちとの結婚は認めるわけにはいかないのだ。」
私は目の前が真っ暗になっていくような感覚に襲われた............そしてレオンは私が倒れないように肩を抱き寄せてくれたのだが、その手は少し震えていた.............。
そんな私たちの様子を見つめながらも、尚も説得を続けようとしたカーティス王子であったが、そこで突然部屋の扉が開いて一人の男性が中に入ってきた。
ーーそれは国王であった。
そして、彼は私たちの姿を見るなり、不思議そうに口を開いたのである。
「何やら騒々しいことになっているようだが、何があったのだ?」
すると、カーティス王子が事情を説明し始めたのだが、それを聞いた瞬間、国王の表情が曇っていくのが分かった。
「ふむ...........なるほどな...........。」
その後しばらくの間黙り込んでしまった国王であったが、やがてゆっくりと口を開いたのである。
私は内心ドキドキしていた。
何を言われるのがわからないのが怖い。
もしかしたら、レオンと私の結婚を認めてくれるのかもしれない..............しかし次の瞬間に発せられた言葉を耳にした瞬間、そんな私の希望はすぐ打ち砕かれることとなった。
「.................残念だが、君たちとの結婚を認めることはできない。」そう断言した国王の表情は、とても真剣であり、その言葉を聞いた瞬間、私は目の前が真っ暗になっていった。
そしてレオンもショックを受けたのか、呆然とした表情を浮かべていたのだが、それでも諦めずに再度説得を試みようとしたその時、カーティス王子が口を開いたのである。
「少しばかり、考えるお時間をいただけませんか。」
彼はそう言うと、国王の方を向きながら訴えかけたのだった。
「リジー、まだ諦めちゃ駄目だ..............。何か方法があるはず。」そんなレオンの言葉を聞いた私は、胸が熱くなるような感覚を覚えたのだが、それと同時に不安も感じていた。
なぜなら、彼の口調からは自信のようなものが感じられず、どこか弱々しさを感じたからだった。
そんな中、国王は深く溜め息を吐いてから私たちに向かって口を開いた。
「レオンよ.............、君の気持ちもよく分かるが、やはり君たちの結婚を認めるわけにはいかないのだ」彼は苦しげな表情を浮かべながら言葉を続けた。
「君たちを引き裂くような結果になってしまって申し訳ないと思うが、どうか分かって欲しい」
それを聞いた瞬間、私の目から涙が溢れ出てきそうになったのだが、レオンが私を慰めるように頭を撫でてくれたことで、何とか耐えることが出来た。
それからしばらくの間沈黙が続いたのだが、やがて国王がゆっくりと口を開いたのである。
「カーティス君よ、今回の決断は非常に残念だと思うが................これも一つの運命なのだ」それを聞いた瞬間、私は心臓が止まるような思いになった。
何故ならその言葉は私にとって、宣告に等しかったからである。
だがそれでもレオンはまだ諦めていないようで、必死に食い下がったのだった。
「待ってください、僕たちは想い合っているのです。父上、どうか考え直してはいただけませんか................!」
しかし、そんな彼の言葉に対して、国王はゆっくりと首を横に振って答えた。
そして次の瞬間、彼は驚くべき言葉を口にしたのである。
「もし本気で一緒になる覚悟があると言うのならば、リジー、君はこれからこの国を出ていきなさい。レオンと共にな」その言葉を聞いた瞬間、私は頭が真っ白になってしまった..............。
レオンと一緒にいられるのは嬉しいけれど、愛したこの国から出るとなると、話は別だ。
あまりのショックに言葉が出ないまま呆然としていると、不意にレオンが私の手を握ってくれたため、ハッと我に返った私は慌てて彼の顔を見つめた。
すると、そこには笑顔を浮かべながらこちらを見つめるレオンの姿があったのである。
「リジー、大丈夫だよ。僕が守ってみせるから、安心して欲しい」そう言って彼は優しく微笑みかけてくれたため、私は心の底から安心感を覚えたのだった。
それから、やがてカーティス王子が口を開いた。
「逃がす理由は何でしょうか...............?」それを聞いた瞬間、国王はゆっくりと首を左右に振った後に答えたのだ。
「これは私自身からの命令に近い。」それを聞いた瞬間、レオンの表情が少しやわらかなものになったのが分かった。
それでもなお食い下がるように彼は口を開いた。
「なぜですか?理由を教えてください!」すると国王は再び首を横に振った後で口を開いた。「残念ながら、その答えを教えることは出来ない」それを聞いた瞬間、レオンは拳を強く握りしめながら歯を食いしばっていたが、それでもまだ諦めなかった。
彼は国王に対して訴えかけたのである。
「父上!どうか少し考え直していただけませんか!?」それを聞いた国王は静かに首を横に振りつつ口を開いた「.................残念だが、これは両家の決定事項だ。覆すことはできない................」
そう言いながら彼は申し訳なさそうに顔を伏せた。
その様子を見て、レオンは諦めたような表情を浮かべ、言葉を発した。
「では、リジーと共にこの国から出ること以外に、認めていただける方法はありますか?」
国王は、しばらくの間沈黙を続けた後に、ゆっくりと口を開いた。
「それは難しいな。リジーと共にこの国から逃した時点で、お前たち二人の結婚は、正式に認められないことになる」
レオンはまだ諦めていなかったようで、必死の形相で訴えかけた。「そんな..............、別の方法はないのでしょうか。」それを聞いた瞬間、国王は再び黙り込んでしまった。
その様子を見た私は、嫌な予感がしてたまらなかった。
ここまで言って、気持ちを受け取ってもらえないのなら、難しい状況なのではないか................。
すると次の瞬間、突然部屋の扉が開き、一人の男性が中に入ってきたのである。
その人物を見て、私は衝撃を受けた.............何故なら、それはカーティス王子の叔父にあたる人物であり、隣国の宰相だったのだ。
彼は、部屋の中を見渡した後、深々と溜め息を吐いた後で、国王に向かって話しかけたのである。
「国王陛下、一体何をなさっておられるのです?」それを聞いた瞬間、私は背筋が凍りついたような感覚を覚えた。
何故なら、宰相がここにいるということはーー。
何か良くないことが起こる予感がしたからである.............。
レオンも嫌な予感を感じ取っていたのか、身構えるような姿勢を取り始めたのだが、それに対して国王は落ち着いた口調で答えた。
「これは、私の一存では決められぬことだ」そして暫しの間黙り込んだ後で、彼はゆっくりと口を開いた。
「レオンよ..............この件は、また話し合おう。今はリジーを連れて、この部屋を出ていきなさい」その言葉を聞いた瞬間、レオンは戸惑っていたようだったが、やがて覚悟を決めたように口を開いた。
「分かりました.............父上の命令に、従います」それを聞いた宰相は、ゆっくりと首を縦に振った後で私たちに向かって言った。
「カーティスよ、もう部屋に戻ってよいぞ。後はこちらで話を進めておこう」それを聞いたカーティス王子は静かに頭を下げると、部屋から出て行ったのである。
そして私とレオンも、彼に続いて部屋を後にしたのだが、その間ずっと心臓がバクバクと激しく脈打っていた。
私は自室に戻った後、ベッドに腰かけて物思いに耽っていたのだが、その時不意に部屋の扉がノックされた。
私は、慌てて立ち上がると急いで扉を開けたのだが、そこにいたのはなんと、カーティス王子だった。
彼は心配そうな表情で、私のことを見つめていた。「リジーさん、大丈夫?」
私は戸惑いながらも首を縦に振った。
すると、彼はホッとしたような表情を浮かべた後で、口を開いた。
「さっきは辛い思いをさせてしまってすまなかった..............。」申し訳なさそうに謝る彼を見て、胸が締め付けられるような感覚を覚えたが、それと同時に、彼の優しさに触れて心から感謝していた。
その後、しばらく沈黙が続いた後、彼は再び口を開いた。
「国王陛下の判断は間違ってはいないと思う...............だけど、今日君と話してみて、君はいい子だということはよくわかった。もしよかったら、お友達からどうかな。」それを聞いた瞬間、私の心は大きく揺れ動いた。
それは、まるで嵐の中の小舟のように揺れ動いていたのだが、やがて静かに口を開いたのである。
「ありがとう、カーティス様」
しかし、その後すぐにまた口をつぐんでしまったため、彼は少し不思議そうな顔をしていたが、それでも私の気持ちは変わらなかった。
そして私は意を決すると、カーティス王子に向かって微笑みかけたのである。
「お友達からお願いいたします.............!」それを聞いた瞬間、彼の表情がパッと明るくなったのが分かった。
それから私たちは、しばらくの間会話をすることになったのだが、彼が気をつかってくれたおかげなのか、楽しむことが出来た。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
翌日、私はカーティス王子と共に、王城内の一室に向かった。そこで待っていたのは、国王陛下だった。
彼は、私たちの姿を見つけるなり驚いた表情を浮かべた後で、口を開いた。
「おお、お前たちか!一体どうしてここにいるのだ?」それに対してカーティス王子が答えた。
「昨日私がお願いした件についてです」彼は真剣な表情を浮かべていた。
すると国王陛下は満足げな笑みを浮かべながらも、口を開いた。
「うむ、いいだろう...........ただし条件があるぞ」
..............それからしばらく間を空けた後で、再び口を開いた。
「リジーよ、君は今からカーティスの婚約者として振る舞うのだ。わかったな?完璧にこなせたら、レオンとの婚約について考えよう。」私は国王陛下の言葉に衝撃を受けたものの.............それでも必死になって考えを巡らせた末、首を縦に振ったのだった。
それからというもの、私の日々は一変することとなった。
カーティス王子と共に過ごす時間が増えただけでなく、今までとは比べ物にならないほどの、責任と重圧が私にのしかかってきたのである。
..................しかし、それでも私は諦めるつもりはなかった。
それは、レオンとの婚約を夢見ることだ。
そのためには、どんなことでもやってみせる覚悟があった。
私はその日以来、カーティス王子の婚約者として振る舞い続けることとなったのである。
私が、皆の前でカーティス王子の婚約者として振る舞ってから数ヶ月が経過した頃ーー遂にその時がやってきた...........レオンとの再婚約のチャンスが巡ってきたのだ。
国王陛下からの命令により、私とカーティス王子は今まで以上に頻繁に顔を合わせるようになり、親密になっていった。
そしてついにある日ーーカーティス王子の口から、驚くべき言葉が出てきたのである。
それは「私は、レオンとの婚約を認める」というものだったのだ。
それを聞いた瞬間、私は驚きと喜びが入り混じったような感情を抱いていたのだが、それと同時に不安も感じていた..............。
何故なら、このタイミングでカーティス王子がこんなことを言い出した理由はただ一つ。
私が貴族の婚約者として粗相の無いよう、立派に振る舞うことが出来るかどうかを、試しているのだと思ったからだ。
だからこそ、私は自信を持って答えたのである。
ーーそれからは忙しい毎日が続いたが、それも今では落ち着いてきた頃のこと.............私は、カーティス王子と共に国王陛下と謁見していた。
すると彼は満足そうに微笑みながら口を開いたのである。
その言葉を聞いた瞬間、私の心は大きく弾んだ。
遂に、レオンと結ばれる日がやってくるのかと思うと、いても立ってもいられない気持ちになっていたのだがーーそれと同時に、私の胸の内には大きな疑念が渦巻いていた。
だって、私がカーティス王子の婚約者として振る舞えるようになったからって、レオンとの再婚約を認める理由にはならないはずだ。
つまりこれは、全て国王陛下が仕組んだことなんじゃないか...............?そして、私を試しているんじゃないだろうか................? そんな考えが頭の中に浮かんできて、なかなか消えないのである。
私は、その日以来ずっと不安な気持ちを抱えたまま過ごしていたのだが、ついにその不安は現実のものとなってしまうのだった。
それはある日のことーーいつものように、レオンの元へ向かおうとした矢先のことであった。
突然背後から声をかけられたかと思うと、そこに立っていたのは国王陛下だったのである。
彼は真剣な表情で私を見つめながら口を開いた。
その眼差しからは強い意志が感じられる.............一体何を言われるのだろう...............?不安と緊張が入り混じりながら彼の言葉を待っていると、遂にその時が訪れたのである。
国王陛下はゆっくりと口を開いた。それは、私が最も恐れていた言葉だった.............。
その言葉を聞いた瞬間、私は目の前が真っ暗になったような感覚を覚えた。
まさか、こんなことになるなんて思ってもいなかったから。
私はその場に崩れ落ちそうになるのを必死に堪えてその場に留まったが、それでもショックは隠しきれなかったようだ。
私の様子を見た国王陛下は、申し訳なさそうに顔を曇らせた後で口を開いた。
「リジーよ、レオンとの再婚約については、一旦保留にしようと思う。」
そう言って彼は深々と頭を下げた後に、言葉を続けた。
私はその話を呆然と聞いていたが、しばらくして我に返ると慌てて口を開いた。
「待ってください..............!どうして急にそのような判断を下されたのですか..........?あんなにも国王陛下も嬉しそうにしていたではありませんか!」しかし、国王陛下は静かに首を横に振るだけだった。
そして一言だけ、口にしたのである...............。
それを聞いて私は愕然としてしまった。
何故ならそれは、私がレオンとの婚約を諦めるべきだということを、意味しているからだ。
私は泣き崩れそうになったのだが、寸前のところで堪えると、震える声で問いかけたのである。
「なぜ.............どうして.............!?理由をお聞かせください.............!今まで頑張ってきたことは、全て無意味だったということですか............?」
すると、国王陛下はゆっくりと深呼吸をした後に口を開いた。
「リジーよ、お前は本当によく働いてくれた。カーティス王子の婚約者として、立派に務めを果たしてくれたのだ。」その言葉を聞いた瞬間、私の心は少し喜びに満ち溢れたが、しかしそれも束の間のことで、すぐに現実へと引き戻されることになるのだった。
なぜなら、私がレオンとの再婚約を諦める必要がある理由が何なのかという疑問がまだ浮かんだからである。
国王陛下は一体何を考えておられるのだろうか.........?
そんなことを考えているうちにも、話は進んでいき、遂に核心に迫る部分に差し掛かっていた。
それは、私とカーティス王子の婚約についてである。
「リジーよ............君とカーティス王子との婚約、レオンとの関係性については、もう一度考えさせてくれないか............?色々事情があるものでな............。」
まさかこんなことになるなんて、思ってもいなかった。
私はそれでも耐えてその話を聞いているとーーそれから数時間にわたって話し合いが行われたが、結局結論は出ないまま終わってしまった.............。
私はその間ずっと考えていたのだが、結局何も思いつかなかったのである.............。
その後私は自室に戻ると、ベッドに突っ伏して泣き崩れたが、やがて一つの結論に辿り着いた。
それは、国王陛下の考えを変えることは、絶対とは言わないが不可能だということ。
そして、私がレオンとの婚約を諦めるしかないのか?という疑問も、まだある。
それでも諦めきれずにいた私はーーある一つの方法を思いつくと、それを実行することに決めたのである。
それは、レオンと共に心から国王陛下にお願いをすること。
それが無駄な行為だとしても、私は最後まで頑張りたかった。
私は覚悟を決めると、彼の部屋に向かおうとしたのだが..............向かう途中で通る応接室には、思いがけない光景が広がっていた。
なんと部屋の中にいたのは、レオンだけでなく、国王陛下とカーティス王子も同席していたのだ。
私が驚きを隠せないでいると、カーティス王子が微笑みながら口を開いた。
「やあリジーさん、どうしたの?」彼は優しい口調で話しかけてくれたのだが、その表情からはどこか不思議さが感じられた。
私が戸惑いながらも部屋に足を踏み入れると、カーティス王子は国王陛下に向かって話しかけた。
「国王陛下、僕からもお願いします。 レオン王子なら、必ず彼女を幸せにすると思います。」それを聞いた瞬間、私は愕然とした.............まさか彼からそんなことを言いだすなんて、想像もしていなかったからである。
私は恐る恐る国王陛下の顔を見上げると、彼は苦しそうな表情を浮かべながら口を開いたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。