第4話
私は家に帰ってからも、クロネッカーのことが頭から離れなかった。
(2人を結ぶには、一体どうすれば良いのだろう...............?)と思い悩んでいるうちに夜が明けてしまい、そのまま学校へ行く準備をして家を出たところで、再びアルフェッカと出会ったのである。
彼女は私の姿を見るなり駆け寄ってきて、「昨日はごめんなさい、本当に反省しているわ................。せっかくリジーが頑張ってくれたのに...........。」と言った後、深々と頭を下げたのである。
私は慌てて頭を上げるように促した後、「気にしないでちょうだい。.................それよりも、クロネッカーのことは大丈夫?彼が失礼なことをしちゃって申し訳ないわ。」と聞いてみたところ、彼女は力強く頷きながら答えてくれた。
「ええ、大丈夫よ!ちゃんとアピールしてきたもの!」と自信満々に言う彼女を見て、私も少し安心したのだが、それでも不安が完全に消えたわけではなかったためか、自然とため息が出てしまった。
それからしばらくの間、私たちは三人でよく行動するようになったのだが、クロネッカーは相変わらず冷たい態度を取り続けていた...............。
そんな中でも、アルフェッカだけはめげずに頑張っていたのだが、ある日ついに我慢の限界が来たらしく、彼に文句を言いに行ったのだ。
「どうして、私のことを避けようとするのですか.................?私が何か悪いことでもしたんですか.............?」と詰め寄る彼女を、目の前にして私はハラハラしていたのだが、当のクロネッカーは冷静にこう答えたのである。
「僕は君のことを愛していないし、興味も無いんだよ。」と...........。
それを聞いた瞬間、私は頭が真っ白になった。
それと同時に、胸が締め付けられるような痛みを感じていたように思う。
そしてその瞬間から、私の世界は一変してしまったのである。
「アルフェッカ、大丈夫..............?」と言って駆け寄る私を、クロネッカーは不思議そうな目で見つめていたのだが、私は構わず彼女の側へと駆け寄って行ったのだ。
すると、彼女は涙を流しながらも、気丈に振る舞っていたが、内心はかなりショックを受けている様子だったため私も心配になってしまったのだが、結局その日はそのまま解散することになったのである。
次の日からというもの、私は毎日のようにクロネッカーの側にいるようになったのだが、彼は相変わらず冷たい態度を取り続けており、私に対しても少し塩対応を続けていたため、私は毎日のように落ち込み続けていた..............。
そんなある日のこと、アルフェッカが私の元を訪れてきたのである。
「リジーさん、最近何か悩んでることでもあるのかしら............?もし良ければ相談に乗るわよ...........?」と言われてしまったが、さすがにこの悩みを打ち明けるわけにもいかず黙っていたのだが、それでも彼女は諦めずに私を問い詰めてきた。そして、ついに根負けした私が全てを話すと、彼女は悲しそうな表情を浮かべながらも私の手を握ってくれたのだ。
「リジーさん、そんなに辛い思いをしているなんて知らなかったわ...............。でもね、大丈夫!私もクロネッカー様とお友達から始められるよう、頑張ってみるわ!」そう言って励ましてくれたことで、私は少しだけ元気を取り戻すことができたのである。
その日の夜、私は眠りにつく前にクロネッカーのことを考えていたのだが、どうしても彼のことが頭から離れず、なかなか寝付けない状態に陥ってしまっていた.............。(ああ..............どうすれば良いのだろうか.............?)と悩みながら、寝返りを打ったりしているうちに、いつの間にか眠ってしまったようである。
次の日目を覚ますと、既に太陽が昇っており、学校へ行く時間が迫っていたため急いで準備をして家を出たところで、思わぬ人物と出会うことになったのだ。
その人物というのは、なんとクロネッカーだったのである。
彼は、私の姿を見るなり声をかけてきたのだが、その声はいつもとは違って優しい声だったために、私は戸惑いを隠せなかった.............。
どうしたのかと尋ねてみると、とても嬉しい返事が返ってきた。
「君の友人なら、悪い子ではないのだろう。...........アルフェッカさんと友達になってみるよ」
と言ってくれたのである。
私はその日からアルフェッカと一緒に過ごすことが多くなったのだが、それと同時にクロネッカーとの関係も深まっていったように感じた..............。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「そういうことだったんだね、...............まさか、アルフェッカさんがクロネッカーを好きだったなんて」
一部始終を聞いていたレオンは、コーヒーを飲みながらふむふむと頷いた。
「私は、これで良かったと思っています。でも、少し寂しくもありますね」
私はそう言って寂く笑った。そんな私にレオンは優しく微笑むと、そっと頰に触れてくれて言った。
「...............大丈夫だよ、これからもっと素敵な出会いが待っているかもしれないし、まだ先はわからない。だから今は自分のことを大切にしていなさい」
その言葉を聞くと、私は嬉しく微笑みながら頷いたのだった。
(ああ、私はこの人に出会えて本当に良かったな................。)と心の底から思いながらも、私は心の中でレオンに誓いを立てたのだった。
ーー..........この先どんな困難が待ち受けているとしても、絶対にこの人を離さない、と................! そう心に決めた私は、レオンの手を握りしめながら笑顔でこう告げた。
「レオン、ありがとうございます。これからもずっと側にいてくれる?」
私の問いかけに、レオンは一瞬驚いた様子を見せたもののすぐに優しい笑顔に戻ると、
「もちろんそのつもりだよ。これから先もずっと一緒に過ごそうね」と言って強く抱きしめてくれたので、私も安心して身を委ねることにしたのだったーー。
ある日、アルフェッカから連絡が入り、放課後に二人で会うことになった。
一体何の用なのかと思いながら、待ち合わせ場所に向かうと、そこには既に彼女がいて待っていたようだ。
「急に呼び出したりしてごめんなさいね」と言って謝る彼女に、私は首を振って答えたのだが、どうにも様子がおかしかったので心配になり、聞いてみることにした................。
すると、彼女は真剣な眼差しで私を見つめてきた後こう言ったのだった。
「実は、リジーに相談したいことがあるの............。」と。
(一体どんな内容なんだろう...............?)と不安に思いながらも話を聞いてみると、どうやら彼女はクロネッカーと友達になりたいのだけれど、どうやって話しかければ良いのかわからなくなってしまった、ということらしい。
(確かにそれは難しそうかもしれないなぁ................。)と思いながらも、何とか力になれればと思いアドバイスをすることにした。
まずは相手の好みや趣味などを知るために、世間話から始めるのが良いと伝えると、彼女は真剣な表情で頷いてくれた。
「ありがとう、とても参考になるわね」と言って微笑む彼女の姿を見て、私はほっと胸を撫で下ろしたのだが、その直後に驚くべき出来事が起こったのである。
何とクロネッカー本人が私たちの目の前に現れたのだ。
私は、突然のことに驚いて固まってしまっていたのだが、彼女は違ったようだ。
冷静に対応すると彼に話しかけていた。
「クロネッカー様、少しお話ししたいことがあるのですが、お時間よろしいですか?」という彼女の問いかけに対して、彼は一瞬戸惑った様子を見せたものの、すぐに首を縦に振ってくれた。
私は、その様子を見守りながらも、彼女が無事に成功することを願っていた。
それからしばらく三人で会話を続けていたのだが、最初クロネッカーはぎこちなかったものの、次第に慣れてきたのか笑顔を見せるようになっていたため、私も安心したのだった。
やがて話題が尽きてきた頃、アルフェッカが勇気を出してクロネッカーの手に触れると、彼は驚いて固まっていた。
その様子を見た私は心の中でガッツポーズを浮かべながらも、二人の邪魔をしないように静かにその場を離れることに決めたのだった..............。
翌日、私はクロネッカーとアルフェッカがどうなったのか気になっていたため、登校してすぐ彼女の元へ駆け寄ったのだが、どうやら上手くいったようで彼女は嬉しそうに微笑んでいた。
その様子を見た私も嬉しくなって自然と笑顔になったのだが、そんな私達の元にレオンがやってきたので、挨拶をすることにした。
すると、彼は微笑みながら挨拶をしてくれた後、「君たちはずいぶんと仲良くなったみたいだね」と言いながら私の頭を優しく撫でてくれた。
アルフェッカの前で恥ずかしいわ................。
そんなアルフェッカは、恥ずかしそうにしながらもどこか嬉しそうな表情をしていたので、私は安心した。
そして、改めてクロネッカーの方を見ると、彼は複雑そうな表情をしていたのだが、それでもアルフェッカのことを気にかけているようだったため、私は少しだけほっとすることができたのである。
(さてと..........これからどうしようか...............)授業の合間の休み時間になり悩み事をしていると、隣の席に座っている親友が私に話しかけてきた。
「ねえリジー、何か悩み事でもあるの?」と聞かれてドキッとした私は、慌てて首を横に振りながら否定してみせた。
すると、彼女は安心した表情を浮かべて微笑んでくれた後、「何かあったら、いつでも相談に乗るからね。なんでもお話して!」と言って励ましてくれたので、私は嬉しくなり思わず彼女に抱きついたのだが、彼女もまた優しく抱きしめ返してくれたので幸せな気持ちになった。
その後も特に大きな出来事もなく授業は進んでいき、放課後になったところでアルフェッカが声をかけてきた。「リジーさん、一緒に帰らない?」と言われたので、迷わず承諾することにしたのだが、その際にクロネッカーも一緒に帰ろうと誘われたことで私は驚いて固まってしまった。
(ど、どうしよう..............?お邪魔じゃないかしら......?ここは断る方が正解なの...........?)と悩んでいる間にも、彼は私の方を見て笑ったので、仕方なく頷くことにした。
そうして三人で帰ることになったのだが、道中はアルフェッカとクロネッカーの会話が多く、私は後ろから2人を見守る形で微笑んでいた。
(よし、2人の関係は上手くいっているわね。)と心の中で思いながら歩いているうちに、いつの間にか分かれ道まで来てしまい、ここでお別れとなった。
「じゃあまた明日学園で会いましょうね」と言ってアルフェッカは去っていったのだが、私はクロネッカーと二人きりになることに緊張してしまい、何も話せずにいた。
そんな私の様子を見兼ねたのか彼が声をかけてきた。
「リジー、今日の君はどこか元気がないように見えるけれど、大丈夫?..............何か悩み事があるなら、いつでも聞くからね」
私はクロネッカーの言葉にとても嬉しく思い、正直に打ち明けることにした。
「実は.........レオンの王室問題があって.......引き継ぎとか色々大変そうなのよ。」
と言うと、彼は驚いた表情を浮かべ、続けてこう言った。「そっか、レオンはすごいもんね..........。だけど、僕で良ければ力になりたいと思っているから、いつでも言ってね。」そう言って微笑んでくれるクロネッカーに、私は感謝の気持ちでいっぱいになったが、それと同時に申し訳なく思ってしまったのである...............。
それからしばらくの間、クロネッカーと話をしていたのだが、彼が私の家まで送ってくれたところで別れることとなったため、お礼を言うと彼は微笑みながら手を振って去って行った。
(レオン..........忙しいのね...............。)
その日の夜はレオンからの連絡がなかったので、不安に思いながらも眠りについたのだったーーー。
(とりあえず、アルフェッカとクロネッカーの仲は上手くいったわ。力になれて良かった...........。)
そんなことを考えながら眠りについた翌日、学園に登校するやいなやレオンが話しかけてきた。
「リジー、おはよう!昨日はごめんね、連絡返せなくて.............。」と言って微笑みながらしょんぼりする彼の顔を見た瞬間、私は安心感と不安という矛盾な感情を覚えながらも、挨拶を返した。
すると、彼は心配そうな表情を浮かべながら、こんなことを言ったのである。
(そうか、この2人も私と同じ気持ちだったんだ...............。それならば、やるべきことは1つね。)
すると中から聞こえてきた会話の内容に、私たちは言葉を失ってしまったのである。
「レオン、本当に申し訳ありませんでした.............!」
という女性教師の謝罪の言葉に対して、レオンは静かに答えた。
「いや、謝らないでください。あなたのおかげで僕は救われたんですから..............。」そんな言葉を聞いた私は、思わず息を吞んだ。
(どういうこと?救われたって.............2人の間で、何があったの?)
疑問が頭を駆け巡っていく中、女性教師はさらに言葉を続ける。
「いえ、そんなことはありません。あなたを救うためとはいえ、こんな方法しか思いつかなくて...............。」と彼女が答えると、レオンは首を横に振りながら答えた。
「いえ、これでいいんです。」と言った後で、彼は小さく笑みを浮かべるのだったーー。
「先生のおかげで僕は救われました、本当にありがとうございました。」
私はここで我慢ができず、こっそりと中の様子をこの目で確かめてみた。
そんなレオンの言葉を聞いた女性教師は、感激したのか涙を流しながら、レオンのことをひしと抱きしめたが、彼はそれに対して何もせずに、ただ静かに微笑むだけだった。
その光景を目にした私は、1ミリも理解ができず呆然と立ち尽くしていた。
(どうして..............?どうしてレオンはあんな顔をしているの.............?)と心の中で自問自答を繰り返すばかりで、何も考えられないでいたのだが、ふと我に返ると、アルフェッカの様子もおかしいことに気付いた私は、慌てて彼女に声をかけた。
「..............アルフェッカ、大丈夫?」と問いかけると、彼女はハッとした表情を浮かべた後に頷いてくれたのだが、その顔は青ざめており明らかに無理をしているように見えたため、心配になった私が「顔色が悪いようだけど本当に大丈夫なの?」と問いかけると、彼女は弱々しい声で答えた。
「ええ、大丈夫よ、気にしないで..............。ちょっと驚いただけだから.............。」と言う彼女の表情は、どこか辛そうに見えたため、私は心配になったが、それ以上は何も言えなかった。
その後、私たちは重い空気のまま教室へ戻って行ったのだが、その間もアルフェッカは俯いたまま、一言も喋らなかったのである。
そんな様子に戸惑いつつも、声をかけることができなかった私は、彼女を見守りながら一緒に歩いていたのだが、いつの間にか皆は帰る支度をしており、気づいたら下校時間になっていたようだった。
その時、突然アルフェッカが立ち止まったため私も足を止めると、彼女はこちらに向き直りながら言った。
「リジー、あなたはレオン様のことがお好き?」と尋ねられたので、私は驚きながらも正直に答えることにした。
「ええ、もちろんよ.............!じゃないとあんなことしていないわ。」と答えた私に対して、彼女は真剣な眼差しを向けてくるのだった。
その瞳からは、何か強い意志のようなものを感じ取れたのだが、それと同時にどこか悲しげな表情を浮かべていたようにも見えた。
それからしばらくの間沈黙が続いた後で、急に彼女が口を開いたかと思うと、驚くべき言葉が飛び出してきたのである。
それは何とこういったものであった。
「................じゃあ、レオン様が他の女性を好きになったとしても?」というものであった。
それを聞いた私は、一瞬固まってしまったが、すぐに我に返ると慌てて反論しようとしたのだが、その前に彼女が続けて言った。
「リジー、私は大切なあなたに幸せになってもらいたいの!」という彼女の真剣な言葉を聞いた私は、思わず後ろに1歩下がって息を吞んでしまった。
何故なら、彼女の目には涙が浮かんでいたからである..............。
満点の星空のように美しい涙を流す彼女に、ハンカチをそっと差し出すと、微笑みながら涙を拭っていた。
そんな姿を見た私は、何も言えなくなってしまったのだが、そんな私に対して彼女は言う。
「だけど、もしもレオン様があの女性教師のことを好きになってしまったら..............と思うと、不安で仕方がないの。だからお願い、リジー..............あなただけはどうか幸せになって............!」という言葉を聞いた私は、胸が締め付けられるような思いになったが、それでも自分の気持ちに嘘はつけなかった。「アルフェッカ、あなたの気持ちはわかっているわ..............!だからといって私は決してレオンを裏切らないし、もちろんあなたのことも裏切るようなことはしないわ!約束する!」
と答えたのと同時に、彼女は嬉しそうな表情を浮かべてくれた。
それを見て私も笑みを浮かべることができたのだが、心の中ではまだ不安が渦巻いていた................。
それからしばらく経ったある日のこと。
私は、遂に決断を下すことになる。
それはレオンの学園での立場を揺るがしかねない重大な事件であり、今まで以上に注意深く行動しなければならなかったのだが、それでも私は自分の役目を果たすべく覚悟を決めたのである..............。
そして、放課後を迎えるとすぐに行動を起こしたーーそれは、レオンの後をつけることだった。
私は必死になって彼を追いかけていく中で、胸が高鳴り始めていたのだが、その一方で罪悪感も感じていたのである。
だがそれでも、私にはやらなければいけないことがあるのだ..............!
そう自分に言い聞かせながら、彼の後を追うこと数時間後ーーついにその時が訪れたのである。
レオンはあの女性教師と、二人きりで校舎の裏へと入っていったのだ。
私は胸騒ぎを覚えながらも、急いで後を追いかけることにしたのだが、その時背後から声をかけられたのである。
アルフェッカだ!彼女は息を切らしながらこちらまで駆け寄ってくると、私の腕を掴んで言った。
彼女の目は真剣そのもので、私を真っ直ぐに見据えている。
...............まるで、心の内を見透かされているような感覚に陥ってしまった私は、動揺してしまいそうになったのだが、ここで怯むわけにはいかないと思い直すと、意を決して口を開くことにした。
そしてはっきりとした口調で言う。
「私は何があってもレオンのことを信じている。」と。
すると、それを聞いた彼女は小さく微笑みながら頷いた後で、再び私の手を引くようにして歩き始めたのである。
私は彼女の手を握り返しながら、その後に続いたのだった。
そして辿り着いた先には、信じられない光景が広がっていたのだ.............。
そこに広がっていた光景とはーー女性教師が、レオンの手に触れているところだった。
レオンはされるがまま自らは何もせずに、明後日の方向を眺めているように見えた。
その光景を目にした瞬間、私の思考は完全に停止してしまった。
そして、女性教師の表情を目にした瞬間、私の胸は締め付けられるような思いに襲われたーー。
次の瞬間には、もう何も考えずに駆け出していた。
それからしばらく走り続けた後で、辿り着いた先は人気のない路地裏であり、そこでようやく足を止めることができた私は、荒い呼吸を繰り返しながらも何とか気持ちを落ち着かせようとしていた。
そんな私の姿を見た彼女は必死に追いかけてきてくれて、心配そうな表情で話しかけてくれる。
「大丈夫..........?リジー............?」と。
だが、私はその言葉に答えを返すことができずに俯いてしまったのだが、それでも何とか呼吸を整え顔を上げると、私は意を決して口を開いた。
そして、その言葉を彼女に伝えたのである。
それは私が長年胸に秘めてきた想いであり、絶対に口にしてはいけないと思っていた言葉であった。
だが、それでも言わずにはいられなかったのだ。
なぜなら............今この瞬間を逃してしまったらきっと後悔することになるだろうと思ったから。
そう考えた私は、勇気を振り絞って彼女に告白した。
するとそれを聞いた彼女は、驚いた表情を浮かべつつも静かに涙を流し始めたのである。
そして泣きながらも笑みを浮かべてくれた彼女を見て、私も思わず笑みを零したのだが、その時不意に背後から声をかけられたことで心臓が止まりそうになった。
振り向くと、そこに立っていたのはレオンの姿だったのである.............。
彼は、呆然と立ち尽くしたままこちらを見つめていたが、やがて我に返った様子で口を開いた。
その口調は穏やかで優しかったものの、その目は真剣そのもので、私を真っ直ぐに見据えている。
「レオン、さっきは何をしていたの?............まさか、他の方と手を繋いだりなんかしていないわよね?」と私が言った直後だったーー。
アルフェッカが私の手を引くと、そのまま駆け出し始めたのである。
突然のことに驚いた私は、戸惑いつつも彼女について行ったのだが、その間もずっと手を握られたままだったため離すことができずにいた。
そうしてしばらく走り続けた後で、辿り着いた先は校舎の屋上であり、そこに辿り着くや否や彼女は手を離してくれたのである。
そこでようやく一息つくことができた私だったが............その時になって、初めて自分がとんでもないことをしてしまったのだということに気付いたのである。
すると、彼女は優しい笑みを浮かべながらも言った。
「リジー............、突然連れ出してごめんね。 でも、あなたのことを考えるとあれが得策なのかなと思って...........。」という言葉を聞いた私は、思わず彼女を見つめてしまった。
そんな私に対して彼女は続ける。
「あなたはレオン様のことが本当に好きなんだよね?それなら、その気持ちをちゃんと伝えなきゃダメだと思うの。 私はあなたたちにすれ違ってほしくないわ..............。」と言って、真剣な眼差しを向けてくる彼女を見た私は、改めて自分がしでかしてしまったことの重大さを痛感していた。
「ねえリジー、最近は何か変わったこととかはないかい?例えばその............他に好きな人ができたとか.............。」
(えっ!?もしかして、私がレオン以外の人を好きになるなんてことを想像しているのだろうか.............?)と考えた瞬間、私は慌てて否定した。
「ううん、私はレオン一筋よ!だって私が愛しているのは貴方だけなんだもの!」と言って抱きつくと、レオンは心底安心したような表情で、私の頭を撫でてくれた。
しかしその一方で、アルフェッカがじっと私たちの方を見ていることに気がついた私は、不思議に思ったものの特に気にすることなく過ごしたのだが、この時から何か嫌な予感を感じていたのだったーー。
(やっぱり、アルフェッカとクロネッカーのことが気になるわ..............。)
授業を受けながらも私の心は2人のことでいっぱいになっていた。
というのも昨日から、2人の様子がどうもおかしいことが気になっていたからである。
授業中も上の空だったり、時折考え事をしているような様子を見せたりしていることが多く、さすがに心配になった私は、2人に思い切って話しかけてみることにした。
「ねえ2人とも、何か悩みでもあるの?」と尋ねると、2人は驚いた表情を見せた後に、黙り込んでしまった。その様子を見てますます不安になってきた私が、2人の次の言葉を待っていると意外にも答えはすぐに返ってきたのである..............。
「実は最近、確信は無いのだけれど、レオン様の様子がおかしいなと思ってね.............。」と話を切り出してくれたのは、アルフェッカだった。
「どういうこと...............?」と不安になり私が聞き返すと、クロネッカーも真剣な表情で語り始めた。
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