第3話
「リジー」とクロネッカーが呼びかけてくる声に対して、私はハッと我に返った。
「あ、ごめんなさい..............」
(いけない!ボーッとしていたわ...............)と思いながらも私は彼に謝ることにした。
しかし、クロネッカーはそれ以上追及することはせずに再び話し始めてくれたのでホッとした反面申し訳ない気持ちにもなったのである..............。
それから、しばらくの間彼は熱心に私にアドバイスをしてくれたのだが、そのどれもが的確で参考になるものばかりであったので、とても助かったのだ。
その中でも、レオンに同じ気持ちを味わってもらい振り向いてもらうという提案は、なんとも妙案であった。
「ありがとう!クロネッカーのおかげで、助かったわ!」
私が素直に感謝の気持ちを伝えると、彼は照れ臭そうに笑った後で、こんなことを提案してきたのである。
「じゃあ早速だが、作戦通り次の休日に一緒にどこかに出かけないか?きっとレオン様は、君の様子を見て嫉妬に駆られるに違いないだろう。」
(え!?それってお誘い?)と一瞬戸惑ったが、せっかく誘ってくれたのだからと思い、承諾することにした。
(よし!気合を入れていこう!レオンにどう思われるかは怖いけれど...............)と思いながら、私は当日の準備をするために家に帰ることにしたのだが、道中で考え事をしているうちに自然と口元が緩んでいることに気づき、ハッとして我に返るということを繰り返していたのだった..............。
(普段友達と遊ぶことがあまりないから、ああもう.............私ったら浮かれ過ぎね)と思いながらも、やはり気分が上がるのを抑えられなかったのである..............。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そしてあっという間に、作戦の日はやってきたのである。
「お待たせ!ごめん、待った?」と私が慌てて謝ると、クロネッカーは笑顔で首を横に振った後で言った。
「いや全然待ってないよ」
ふんわりと笑うクロネッカーに、ありがとうと一言お礼を告げる。
(良かったわ.............)とホッと胸をなで下ろしつつも彼と歩き出したのである。
2人で映画館に行くと話題になっていた恋愛映画があったので観てみることにした。
(わぁ.............!)私は感動のあまり涙が出そうになってしまったが、何とか堪えることに成功した。しかし、隣の彼は既に泣いているようで鼻を啜っているような音が聞こえてきたため思わず笑ってしまうと、彼も照れ笑いをしていた。
レオンに見られたらまずいな、と心の中で思いながらも、どういった反応を返してくれるのは気になった。
今はまだレオン自身に伝える勇気が無かったので、もう少し様子を見ることにしたのだったが、これが間違いだった..............。
次に私たちはショッピングに出掛けることにしたのだが、クロネッカーが何かに気づいた。
咄嗟にお店の中を歩いている最中に手を握られ、驚きや恥ずかしさが込み上げてきた時だった。
「...............リジー?」
レオンの声が聞こえた。
彼は、私とクロネッカーを訝しむように見て、繋いだ手を見た瞬間きつく睨んできた。
私は慌てて手を離して言い訳しようとしたのだが、その前にレオンは踵を返して歩き出してしまい、私はただ呆然とその後ろ姿を見ることしかできなかったのである。
「................リジー!ごめん!作戦の為とはいえ、やりすぎたよね。」とクロネッカーが謝る声が聞こえたが、それでも私は動くことができなかった............。
ーー次の日、学園でクロネッカーに会うと彼は落ち込んでいる様子だったので、心配になり話を聞くことにしたのだが、彼は何も話してくれなかったのでひと、ひとまず放っておくことにして授業に集中したのだった。
はぁ..............と1人ため息をつきながら廊下を歩いていると、ふと後ろから声を掛けられた。
「ねえ、リジー」
聞き慣れた声に振り向くと、そこにはレオンが立っていたので驚いたが、すぐに平静を装って返事をすることにした。
「..............レオン、何か用かしら?」と尋ねると彼は少し間を置いてから口を開いたのである.............。
「昨日のことなんだけど.............、」と言われた瞬間、私はドキッとして冷や汗が流れたが、なんとか表情に出ないように注意して笑顔で答えた。
(大丈夫...........バレていないはず)と思っていたのだが、次の彼の言葉で私の考えは打ち砕かれることになったのである。
「.............クロネッカーとは、どういう関係なんだ?」
(え?)私は一瞬頭が真っ白になってしまったが、すぐに気を取り直して誤魔化そうとするも、上手く言葉が出てこず焦っていた............。
すると、レオンは私の様子を見て何かを察したように深いため息をついた後で言った。
「..............やっぱり、クロネッカーとそういう関係だったのか?」
私は否定しようとしたが言葉が出なかった...........そしてそれと同時に涙が溢れてきたのだ。
(ああ、............もうダメだわ)と思った瞬間、私の意識は遠のいていったのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(あれ............?ここは何処だろう?)
目を覚ますと、そこは自分の部屋だった。
(そうか、私は確かレオン様に問い詰められて............あれから何が起きたんだろう?)と徐々に記憶が蘇ってくるにつれて、自己嫌悪に陥ることになったのだが、それと同時にレオンとの関係がどうなっているのか、気になって仕方がなかったのである。
(それに、クロネッカーは大丈夫かしら.............?)と心配していると、部屋のドアがノックされたので返事をすると、そこに立っていたのはなんとレオンだった。
彼は、部屋に入って私を見るなり安堵の表情を浮かべた後で、優しく微笑んでくれたのである。
その笑顔を見た瞬間、私は胸が締め付けられるような感覚に陥り、涙が溢れ出てきたのであった。
「................ごめん!リジー!」と言って頭を下げるレオンに対して、私は慌てて首を横に振った後で言った。「いえ、私の方こそごめんなさい.................」
そしてお互いに謝り合った後、私は気になっていることを聞いた。
「................あの後、私はどうなったの?記憶がないのだけれど。」
「ああ、リジーはあの後寝不足で倒れたみたいなんだ。.........大丈夫だった?」
レオンがここまで運んでくれたのかと考えると、
なんだか嬉しいような、恥ずかしいような気もした。
(...................そうだ、なぜクロネッカーとの関係が気になったのだろう?もしかして、嫉妬してくれたのかな.............?)などと考えつつ、彼の顔を見上げると、少し顔が赤くなっているような気がしたので思わずドキッとしてしまった。
「リジー、本当にごめんね。...............クロネッカーに嫉妬してしまってたみたいだ。君を失うことが怖かった。」
そのまま私が彼の美しい瞳を見つめていると、彼は照れ笑いしながらこう言ったのだ。
「これからも、仲良くしていこう」と言うと、彼はそっと手を差し伸べてくれたのである。
私はその手を取りながら「はい!もちろんです!」と満面の笑みで答えたのだった............。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
それからというものの、私とレオンの関係は良好だったと言えるだろう。
クロネッカーとは、あれから彼とは何もしていないが、お互いに友達として接することが出来ていたと思うのだ。
しかし、私の心の中にはクロネッカーに対する不思議な想いがあるのもまた事実であった。
(どうしたら良いのだろう?)と思いながら、日々を過ごしているうちに、季節は夏を迎えようとしていたある日のことだった..............。
この日、私は休みを利用して街へ買い物へ行っていた。
(................せっかくだから、レオンに何かプレゼントでも買っていこうかしら?)と考えつつ歩いていると、不意に後ろから声をかけられた。
驚いて振り返ると、そこにはクロネッカーが立っていたのである。
しかも、彼は少し疲れ切った様子だったので、私は心配になって声を掛けたのだが、返ってきた答えは予想外のものだった.............。
「リジー.............」とただ名前を呼んで抱きついてきた彼に困惑しつつも、私は彼から離れようとしたがなかなか離れないので困っていると、クロネッカーは私のことを強く抱きしめながら耳元で囁いてきたのだ。
その言葉を聞いた瞬間、私の心臓は飛び跳ねるように大きく跳ね上がり、顔が真っ赤になってしまったのである...............。
そして私は、小さく頷いたのであった。
小さくため息をつきつつ、私は今レオンと一緒に過ごしている。
「どうしたのリジー?ため息なんかついて」と彼が尋ねてきたところで、我に返る私だったが、何とか誤魔化そうとするが上手く言葉が出てこないままだったので、諦めることにしたのだった............。すると突然、彼は私の手を握ってきたのである。
驚きのあまり固まっている私に対して、彼は微笑みながら言った。
「ねえリジー...............そろそろ僕に話して欲しいんだ、クロネッカーことについて」と言われてしまった私は、観念するしかなかったのである................。
そして私は、クロネッカーについて全てを話すことにしたのだった。
「.............とまぁ、こういうわけなの」私が話し終えると、彼はしばらく無言で考え事をしている様子だったが、やがてゆっくりと口を開いた。
「要するにリジーは、僕のことが好きでたまらないってことだよね?」と言われて、私は恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になってしまったが、それでも小さく頷くと彼は満足そうに微笑んだ後でこう言ったのだ。
「ありがとう、リジー..............僕も君のことが愛おしいよ」
その言葉を聞いた瞬間、私は嬉しさのあまり泣いてしまいそうになったのだが、何とか堪えて彼に抱きついた後で言ったのである。
「こちらこそありがとう.............レオン」
それを聞いた彼は一瞬驚いた様子だったが、すぐに笑顔になって私の頭を撫でてくれたのだった。
私も照れてしまって、お互い恥ずかしい雰囲気になった。
(幸せだなぁ)と、私は心から思ったのである。
(こんな素敵な人と出会えて本当に良かった.................!)と思いながら、彼と一緒に過ごす時間を十分に楽しむことにしたのであった。
4月になり、学園に登校したのだが特に変わったことは無く、いつも通りの生活が続いていたある日のことだった。
いつものように授業を終えた後に帰ろうとすると、クラス委員長であるアルフェッカ様に呼び止められてしまったのである。
「ねえ、リジーさん!!あなた本当にレオン様のことが好きなのかしら?」と言われた時には、流石に驚いてしまったものの、すぐに冷静さを取り戻した後で言ったのである。
「................ええ、もちろんよ」と言った後でアルフェッカの方を見ると、彼女は不敵な笑みを浮かべていたので何か嫌な予感がしたのだが、その時は気にせずそのまま帰宅したのだった。
そして次の日に学園へ向かうと、校門の前でレオン様が待っていたので、私は思わず固まってしまったのだが、彼は私に向かって手招きをしてきたので、恐る恐る近づいていったところ、突然手を握られて引っ張られたのである。
私はドキドキしながらも、そのまま彼に付いていくことにして歩いていると、突然彼が立ち止まったので何事かと思って見上げると、そこには真剣な眼差しをした彼の姿があり、私は思わずドキッとしてしまったのであった...............。
それからというもの、レオンは毎日のように私に会いに来てくれるようになり、他愛ない話を続けて楽しんだ。
それは嬉しい反面、少し不安でもあったのだが、それでも彼が会いに来てくれることを思うと、自然と笑顔になってしまう自分がいることに気が付いた時には、既に手遅れかもしれないと思うようになったのだ。
ーーある日のことだった。
朝学園へ来ると、クラスの皆からの視線を感じたので不思議に思っていると、突然クラスの女子達に囲まれたのである................。
一体何が起こっているのか分からず、困惑していると、彼女達は次々と質問を投げかけてきた。
「リジーさん、あなた本当にレオン様の婚約者なのですか?」と代表して、アルフェッカ様が言ってきたので、私は頷いて答えることにした。
すると、彼女は納得した様子で去って行ったのだが、その直後、今度は取り巻きの女子たちから声を掛けられることになったのである。
彼女らは口々に「どうしてあなたのような方がレオン様に選ばれるの!?」とか「レオン様にはもっと相応しい人がいるはずよ!」などと言ってきた時には、怒りを通り越して呆れてしまったものだ................。
しかし、そんな中でも唯一私の味方になってくれた人物がいた。
それは、クロネッカーだったのである。
彼は私の前に立ちながらながら「...............リジーは僕の友人なんだ、やめてくれないか」と言ってくれた時は本当に嬉しかった。
それからというもの、私に対する嫌がらせが始まったのである..................。
それは徐々にエスカレートしていき、つい先日などは鞄の中に虫を入れられたり、机の上に落書きをされるなどの嫌がらせを受けるようになったのだ...............。
正直言って辛かったのだが、それでもレオンの姿を見るだけで心が癒されるような気がしていたので、なんとか耐えることが出来たのである.............。
ーーそんなある日のことだった............私はいつものように教室へ行くとそこには信じられない光景が広がっていたのである............。
何と教室が荒らされており、椅子や机などが壊されていたのだ..............。
しかも、その中心にはレオンがいたので私は慌てて声を掛けたのだが、彼は何も言わずにこちらを振り向くと、虚ろな瞳で私を見つめたまま動かないでいた。
私は心配になって彼に近づこうとしたのだが、その時突然背後から誰かに抱きつかれてしまい、身動きが取れなくなってしまったのである...............。
その人物とは、アルフェッカだった。
彼女は、私の耳元で囁いた後でこう言ったのである。
「リジーさん、あなた本当にレオン様がどうなっても、お好きでいられるのかしら?..............-ねえ、教えてちょうだい」
私は必死になって抵抗したが、無駄だった。
レオンを人質にとられていると、考えるとむやみやたらに手を出すことはできない。
そしてついに観念して、全てを話すことにしたのである。
すると、彼女は納得した様子で頷きつつ言ったのだった。
「やっぱりね..............リジーさん、あなたはレオン様を利用していただけなのよ。だからあなたは彼に相応しくないの!分かったかしら?」と言われてしまい、私は辛い思いのまま何も言い返せなかったのである。
その後彼女は私を無理やり立たせると、そのまま何処かへ連れ去ってしまったのだが、その時には既に抵抗する気力さえ残っていなかったのである................。
気が付くとそこは使われていない教室だった。
どうやら私は気を失っていたらしい..............。
起き上がろうとしたところで、体が動かないことに気がついた。
(まさか.............?)と思っていると、目の前にアルフェッカがいた。
彼女は私を見下すような視線を向けつつ、言ったのである。
「リジーさん、あなたが本当にお好きなのは、レオン様なのかしら?..............クロネッカー様とは、何も無いのね?」
その言葉を聞いた瞬間、私の頭の中は真っ白になってしまった..............。もしかして、彼女はあの日あったことを知っているのだろうか?
そして、なぜ彼女がそのことを知っているのか分からなかった。
私が動揺していることを感じ取ったのであろう彼女は、続けてこう言ったのである。
「あなたはレオン様を騙していたのね...............」と。私はその瞬間頭が痛くなったが、それでも必死に反論しようとしたものの、上手く言葉が出てこなかった.............。
そして彼女が言った次の言葉で、完全に打ち砕かれてしまったのだ。
「あなたは、ただの婚約者に過ぎないのよ!それ以上でもそれ以下でもない、分かるかしら?」と言われた瞬間、私の目から涙が溢れ出てきた。
そんな私を見た彼女は、嘲笑を浮かべながら私に向かって言ったのだ。
「ねぇリジーさん、あなたはこれからどうするつもりなの?このままレオン様の婚約者を続けるおつもり?..............それとも、クロネッカー様に変更するのかしら?」と聞かれた時には、すでに私の心は壊れてしまっていたのかもしれない..............。
(もう、どうでもいいや................)と心の中で思っているうちに、私は意識を失ってしまった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
目が覚めると、そこは保健室のベッドの上だった。................どうやら私は、保健室で寝かされていたようである。
私が起き上がると、そこにはレオンとクロネッカーの姿があり、二人は私に対して心配そうな視線を向けていたようだったが、私はそれを無視してその場を立ち去ったのである。
軽傷で済んだことだけが、不幸中の幸いだろう。
その後、自宅に帰るまでの間ずっと考えていたのだが、答えは出なかった。
(私は一体どうしたらいいのだろう............?レオンもクロネッカーも、どちらも私のことを大切に考えてくれているわ.............。)と思い悩んでいるうちに、自宅へ着いてしまったので中に入ることにした。
自室に入ると私はすぐさまベッドに横になり、天井を見つめながら考え込んだ。
(このままの状態が続くのは嫌だなぁ............)と思いながらも、解決策が見つからないまま時間だけが過ぎていく中で、私は眠ってしまった.............。
翌日目を覚ますと、既に正午近くになっていた。急いで学園へ行く準備をして家を出ようとしたところでふと考える。
(そもそも、なぜ私は学校に通っているのだろう.............?)という疑問が浮かんだのである。
(考えてみれば、これまでずっとレオンのことを追いかけたくて勉強も頑張ってきたんだよね?きっと、アルフェッカ様も同じ気持ちなんだろうなぁ.............)と思ってしまった私は、学校に行くのをやめて自宅にいることに決めた。
そしてその日は一日過ごしたのである。
次の日、私はいつものように登校したのだが、教室へ入るとそこには誰もいなかったので、驚いてしまった。
(............あれっ?もう授業まで時間が無いはずなのに、みんなどこへ行ったのかしら?)と思って首を傾げていると、突然背後から声をかけられた。
振り返ると、そこにはアルフェッカの姿があったので、私は驚きながらも挨拶をした。
すると、彼女は笑顔で答えてくれた後に私に近づいてくると、「リジーさん、少し話があるのだけどいいかしら?」と言われたので、私は黙って頷いた。そしてそのまま彼女に連れられるまま、人気のない場所までやってきたところで立ち止まった後、彼女は静かに口を開いたのである.............。
「ねえリジーさん、最後にもう一度聞くわよ。 あなたがお好きなのは誰かしら?教えてちょうだい?」と聞いてきたので、私は正直に答えることにした。「ええ............、私が好きなのはレオンよ、嘘偽りないわ。」そう答えた瞬間に、私は涙が溢れ出してきたのだが、それでも必死に耐えていると彼女は笑みを浮かべながら言ったのである。
「あら、泣いているじゃない。答えを出せたことがそんなにも嬉しいのかしら?」と..............。
私は何も答えられずにただ俯くことしかできなかったのだが、次の瞬間彼女が近づいてきて、私の耳元で囁いたのだ。
「リジーさん、よく頑張ったわね」と言ってきたので私はついに我慢できなくなって大声で泣き叫んでしまったのであった...............。
その後しばらく泣き続けた後で、落ち着きを取り戻したところで、彼女に言われたのである。
「リジーさん、あなたには特別に打ち明けるのだけど...............。私、実はクロネッカー様のことが好きなの。だからクロネッカー様と仲の良い貴方に、強く当たってしまっていたの、...............本当にごめんなさい。」と。
私はその告白を聞いて驚いたが、同時に納得もしていた。
なぜなら、彼女はいつもクロネッカーと一緒にいることが多く、度々彼にアプローチをしている姿を目撃したことがあったからである。
今思えば、それは好意からだったのかとしみじみと感じた。
(.............なるほど、そういうことだったのね!)と心の中で思いながらも、話を聞くことにした。
「それでね、リジーさんにお願いがあるんだけど..............聞いてもらえるかしら?」と言われた時には、嫌な予感しかしなかったのだけれど、断るわけにもいかず話を聞くことにしたのだ。
その内容というのが、私とアルフェッカが話しクロネッカーの気を引いて欲しいというものだった。
つまりは、私とアルフェッカで共謀してクロネッカーの気を引こうという作戦である。
私は躊躇したが、結局断れずに承諾してしまったのである...............。
クロネッカーの性格上、そういう作戦ごとは好きではなさそうだけど...............大丈夫かしら?
不安を抱えながらその後私たちは、放課後に三人で会うことになり、その時にクロネッカーの気を引く演技をすることになっていたのだが、私は正直不安しかなかった。
そして、約束の時間がやってきた..............。
待ち合わせ場所に着くと、既に二人は到着しており私を待っていたようだったので、慌てて駆け寄ったのだが、何故か二人とも機嫌が悪いように見えたため、私は不安に駆られた。
その後しばらく沈黙が続いた後、最初に口を開いたのはクロネッカーだった。
「君たちは二人で何を企んでいるんだい?」と言われた瞬間に、私たちは一瞬ドキッとしたのだが、何とか平静を装ってやり過ごすことに成功したのだ。
だが問題はここからだった.............。
まず最初に動いたのはアルフェッカだった…彼女はクロネッカーの手をそっと握ると、上目遣いで見つめながら「ねえ、クロネッカー様。私もお話に混ぜて欲しいです」と甘えたのだ!
(おお、これはなかなか上手い演技かもしれない................!!)と思いつつ、私は心の中で感心していたのだが、対するクロネッカーの反応は、思った以上に薄かったのである。
どうやら彼は、全く興味が無い様子でアルフェッカのことを、冷たく突き放してしまったのだ。
これにはさすがの彼女もショックを受けてしまったようで、俯いてしまったのを見て私も慌ててフォローすることにした。
「クロネッカー、私、アルフェッカ様ともっとお話してみたいと思っていたの!だから、よろしかったらご一緒させてあげても?」と言ってみたところ、今度は効果があったようで、彼は渋々といった様子で承諾してくれたのである!!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その後私たちは、三人で街を散策することになったのだが..............正直言って気まずい空気が流れていたため、会話らしい会話は全くなかった。
唯一得られた収穫といえば、アルフェッカがとても嬉しそうだったということくらいである............。
そして別れ際になって、ようやくアルフェッカは私にお礼を言ってくれたのだが、その笑顔はとても疲れ切ったものであった。
私もその日は少し疲れたので、足早に帰宅をすることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。