第2話

 男は玄関を開けてそっと、寝静まってる婦人を起こさないようにとキッチンリビングへと入った。婦人がやり残した洗濯物を終えて乾いた服が畳みしまい忘れたのか?白いワイシャツが一着床に落ちていたのだ。男はふいに、そのワイシャツを取るやテーブルにたたんで置いた。


 その自宅は邸宅もしくわ屋敷と言っても過言ではない間取りはある裕福な暮らしが垣間見てとれた。


 そして、自身の今仕事帰りに着込んだ灰色の背広や赤いネクタイを緩めて脱いで白い肌着のままとなった。天井にはやや小さめなシャンゼリゼの常夜灯がともっていた。


 どっと男は椅子にもたれ疲れるように腰掛けた。数秒そうしてる合間に、喉も渇き冷蔵庫へと歩み寄る。透明な清涼水をコップに注ぎ一気に飲み干した。何か生き返ったような感じだった。男はついシャワーを浴びるのを忘れていた。婦人が就寝してる寝室へと寝るために行った。ダブルベットには婦人が寝てると思いきや…


「おかえりなさい…サルヴァトーレ…」と寝てると思っていた白いシルクのネグリジェ姿見のその身体が細っそりとした婦人は、声を掛けた。


「ごめんよ。起こしてしまって…」


「良いわよ。大丈夫…ちょうど目が覚めたところなのよ。」と片手を長い茶髪が薄ら混じりきな髪の毛を額からかき分けた。


 男は黙って彼女の横へと身体を沈めた。

「そう言えば、お母様から電話があったわよ。あなたにね」


「そうかい…」男はもう随分と声を交わしてないと、ふと思った。


 婦人は窓を少しだけ開けて風通しをして寝ていたので…アンティーク調のウインドチャイムの細いメタルチューブが風に揺られてカランカランと鳴った。いわば風鈴であった。その風鈴で夜も涼しさを感じさせて、更に音が寝込みの睡眠へと導入してくれるのだ。


「もう随分と音沙汰みたいなのね。ついお母様と長話したわよ。」とても心配していた事を伝える。


「母がまたどうして電話を久しぶり…どころではないが…自分ももう長い間…妹だけに面倒を見させていたよ」


「そうよね。一番大切な事を伝えたくて連絡してきたのよお母様は…」と一呼吸置いて婦人は話た。


「アルフレットの葬儀を近いうち行うのだそうよ。」


 いまさらながら男の名は母親が電話にも出ずに音沙汰ぶりのサルヴァトーレと言う名前だ。サルヴァトーレ…は動揺をしたが、横たわる彼女に動揺を悟られずに冷静を装った。


 揺れる風鈴は、だんだんと音が静まりつつある。外の天候が急変しかけているのだ。徐々に曇りがかり稲光が時として閃光を走らせた。まるでアルフレットの虫の知らせのようにその天候は稲妻でサルヴァトーレに知らせるが如くにあった。


 アルフレットはサルヴァトーレにとって最も人生で大切な友…いや師匠なのかも…心友なのだ。それは重大でその事については、急がなくては行けないと考えた。婦人の側に横たえて動揺を隠すために、婦人には背を向ける格好で窓の外を眺める。まだ夜更けの時間帯で稲光りは青白く彼の瞳の映写機を開かせようとしていた。


 そうあの頃の遠くの想い出はそう遠くでもない昨日の様に彼の心に宿ってる。


 あの日は随分と楽しかった…大人になって責任感も出て人生の楽しみとは幸せはなにかとふと噛み締めるような今のサルヴァトーレはアルフレッドの一言一言がつい懐かしく、今日の自分が存在するのもアルフレッドのお陰なのだと悔やむ。


「トト…元気でやってるか?」とどこからかアルフレッドの声が囁かれた。彼の瞳は潤って涙が流れ落ちるのを堪える。白いシーツに握った手には何故か涙がいつの間にか手で拭って濡れていたのだ。

 

 白いその建物は凛と町内に浄らかに佇んでいた。神父が教会の礼拝室で神に祈りを捧げてる最中だった。


 神父は聖杯を片手に神の御前へと掲げて祈りの言葉を告げる。


「汝らとその僕にも崇高なる血の聖水を分与えたまえ…そして…その契りにて…永遠たる民の祝福を誓い…え…えっへん」と神父はわざとらしく咳き込んで見せた。チラッと横目で見た先には、白いスカプラリオを身にまとった。小さな男の子が、片膝をついては座りながらもう片膝に肘をつき頬を支えながら居眠りこいていた。


 うぅ…うぅ…と神父は堪えたが、男の子の役目は真鍮の洋鐘を鳴らすことで祭典は進行するのだ…がその鐘が鳴ってくれない…神父は堪忍袋が切れた。聖職者がそう努めてはならないが…我慢できなかった限度がある神父も人間なのだ。


「トト…トト…」と呼びかけた。

すると男の子は、ハッと我に返りカランカランと素早く手に握った洋鐘を鳴らした。


 祭典は、なんとか事を運ぶことが叶ったが…それにしてもと神父はこの小さな小僧めおやつ抜きとしばらくアルバイトを禁止にしてやろうか?と考えざる得なかった。


「トト…お前さんが居眠りこいて鐘を鳴らさなかったら、免償符を与えられないじゃないか。困った物だ」


 サルヴァトーレは回想の中、瞳を潤し微笑み見せた。よくもまぁ私がここまで登り詰めた物だ。それは心友のアルフレッドだけじゃない母親や神父さん関わってきた人が今の自分を築きあげてくれたのだ…と思い焦がれた。

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ニューシネマパラダイス ネオまさよし @jackie2023

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