26.【大罪の悪魔】
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【
もちろんダンジョンの前に人間達がいるのは知っていた。その人間達が忌々しい【ライネルラ王国】内において相応の立場を持っているものであるということも知っていた。
むしろ知っていたからこそ良いタイミングだとほくそ笑み、ダンジョンから飛び出したところがあるのだ。そのまま魔物の軍勢を持ってして踏み潰す。虫けらのように踏み潰す。殺す。そうして――【王都ミラクル】へと攻め入るつもりだった。
だが。
……【
死んでいるはずだった。
しかし現実はどうか。
【
まるで冴えない。
というのが【
それほどまでに男からは力を感じないのだ。マナの奔流にすら乏しいのだ。体つきからの洗練されたものはない。まったくもっての凡才。恐らく――攻撃が当たりさえするのであれば男は簡単に死んでいただろう。
しかし男は死んでいない。
生きている。
当たり前のように……。
【
ゆえに【
余裕の微笑みを浮かべるサブローに対して。
「――見事だった」
「……魔族に褒められても嬉しくはないよ」
「貴様は勇者であろう」
「勇者だね、一応は」
「いまは等級のようなものがあると聞いたが?」
「誰に聞いたのさ」
「言えぬわ」
「じゃあ聞かない」
それはまったくもって対等な者同士の会話だった。本来であればあり得ぬ光景でもあった。【
だが【
「貴様は」
「なに?」
「なぜ我らの目的を読めた?」
「読めた? 読めてなんかないけど」
「ほざくな。我に見抜けぬと思うか?」
「……まあ、僕は目が良いからね」
「目、か」
「目だよ。たぶん、君よりも遙かに目が良い」
「……笑える話だな」
「僕はべつに笑えないけど」
「訊いておこう、貴様の名を」
「訊かなくて結構」
「答えろ。名はなんだ」
「サブロー」
「覚えておこう」
そうして、すれ違う。
攻撃はしなかった。する気すら起きなかった。なぜならば当たる気がまるでしないからだ。どうせ避けられる。【
サブローと名乗った勇者の背後には優秀な人間達がいる。当初はこの人間達が本命だと思っていた。真に踏み潰すべき強敵かと思っていた。だが……。余裕の微笑みを浮かべるサブローに対してその人間達は怯えていた。【
つまりは【
ゆえに通り過ぎる。魔物の軍勢を率いて【ヨイマイ森林】を抜けていく。目指す場所は決まっていた。人間達の住処――【ライネルラ王国】である。その王都である。
【
――面白い。
ではサブローはなにをするのか? 決まっている。長くダンジョンXを装っていた【トトツーダンジョン】において既にことは進んでいるのだ。こちらの計画は順調に進んでいるのだ。その計画を阻止しようとしているのだろう。そのために我々を回避してその場に残ることを決断したのだろう。
強く、聡い。
なるほどこの時代にもまだ勇者はいたか。勇者は生きていたか!
それは歓びなのか。どんな感情によるものなのか。【
そうして
我々の目的はただ一つだ。
ただ、一つ。
上より
――――魔神の復活を盛大に祝え!
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「【ハートリック大聖堂】より宣告いたします。――魔神が復活いたしました」
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