修学旅行の夜は恋バナ

夕日ゆうや

なんてことない話

「ねぇ。安達あだちは好きな人いる?」

 修学旅行の夜、旅館の一室にて。

「うーん。でも浪川なみかわ芦田あしだくんのことが好きなんでしょ?」

 浪川は見た目ギャルっぽいけど、中身は初心うぶでシャイな子だ。

 強がってばかりで、芦田くんとは仲良くなれずにいた。

「言わないでよ。まったく……」

「うん。ごめん」

 これまでがテンプレだね。

 まあ、私にも好きな人はいるけど……。

「それで? 安達は?」

「うーん。いるっちゃいるけど……」

「へぇ~。どんな子?」

「ええと。イケメンで、いざというとき剣を振るって守ってくれる。でも二人きりになると、とても甘えてきて、いつも私のプレゼントしたアクセサリーを身につけてくれて、金髪碧眼。すらっとした体躯で、優しい目の中に厳しさを讃えていて……」

「ちょっ! ちょいまち。そんな子、クラスにいた?」

「ん。二次元だけど?」

 私はさも当たり前のように呟くと、浪川は頭痛がするのか、頭を抱える。

「あんたに聞いたあたしがバカだった……」

「そう? 浪川はさっさと告っちゃいなよ」

「人ごとだと思って……」


 これはなんてことない。

 修学旅行の一幕。

 でも楽しければいいのだ。


 こんな何げない話が、思い出話になるのだから――。

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