『セレンの戦い』2/2

 セレンの泉は直径30メートルほどで、真円に近かった。清冽で静謐な水面は暁光ぎょうこうを浴びて煌めき、ほとりには色とりどりの花が咲き乱れている。人の手が加えられた様子のない、自然の奇跡。この泉の前では、信仰無き者も何かしらの神秘や尊さを感じずにはいられないだろう。

 だが――今はしかし。

 草花に埋もれるように、くすんだ防具と白骨が散乱している。頭蓋骨の眼窩に赤い花が咲き、黄金の光を失った鎧の上で蝶が羽を休めている。ヘップたちは臨戦態勢を取りながら、骨の数が増していく方向――泉からほど近い広場に向かって慎重に歩を進める。


「天国と地獄が一緒になっちまってんな……。バァバめ、この状況知ってたんじゃねえのか?」

 骨を避けて歩くことをとっくに諦めているセラドが、誰に言うともなく言った。

「どうですかね。問題が起きていることは知っていた口ぶりでしたが」

 と、ヘップ。

「具体的にどうこうってのは、知らなかったんだろうヨ」

「なんでそう言える」

「ドゥナイ・デンに行った時ね。アタイとホーゼはオジイやバァバの会話をその場で聞いてたんだ。里を離れたドーラと連絡が取れない、ニンジャに探させている……そんな感じだった」

「ニンジャ? エルフの爺さんの手記にあったアレか。……つくづく得体の知れねぇババアだ」

「いまは目の前の戦いに集中しましょう」

 ヘップが声を潜めて言った。


◇◇◇


「間違いなくここだな」

「ですね……」

 ほどなくして広場に到着した一行は、おびただしい数の骨を見て溜息を吐いた。土質はまるで耕されたばかりのように柔らかく、黒みを帯び、湿っぽい。この広場一帯の建物だけが例外なく全壊しており、敵のテリトリーの境界線が一目でわかる。

「出てこない、ですねー……」

「そんじゃ、作戦どおりアタイが叩き起こしてやるヨ」

 ルカがグルグルと肩を回し、ひときわ亡骸の多い一点を見定める。

「では、サヨカさんはオイラと一緒に少しさがって。ホーゼさん、セラドさん、お願いします」

「戦闘中のですますはやめろって言ったろ」

「ホッホ。お任せを」

 ホーゼがスペルを詠唱し、ルカのガントレット――【メイジフィスト】に炎をともした。

 セラドは【エヨナのシンギングソード】を抜き、リズムを刻むように刃を踊らせる。しんとした広場に『遮蔽の賛歌』が響き、対スペルシールドが全員に付与された。

 ヘップは自分の両耳を塞いでから、合図を待つルカとホーゼにアイコンタクトを送った。小さく頷いたホーゼが次のスペル詠唱を始める。同時に、ルカは前方に大きく跳躍、空中で両拳を振り上げ――

「出て、来いヤァッ!」

 大地を叩いた。大岩が天から落ちたような轟音と震動。爆発的な勢いで炎と泥土でいどが噴き上がり、聖女戦士たちの残痕が四散する。ヘップは聴覚に集中する。ばらばらと土が降り注ぐノイズに混じって、地中から微かな音が聞こえた。

「あそこ」

 ヘップは10メートル先の地面を指した。立ち位置を調整したルカが、深く息を吸ってストライカーの構えを取る。あたり一帯の鳥がけたたましい鳴き声を発し、一斉に飛び去ってゆく。そしては、水面から静かに首をもたげるシーサーペントの如く――グズグズと泥土を押し分け、姿を現した。


「シィィィィィィィゥルルゥゥゥ……」

「よう」

 ルカは、臆さずにヒュドラープラントを睨み上げた。不気味なほど鮮やかな黄緑色。3つの頭部は、大柄なルカの3倍近く高い位置にあった。長く青い舌をヌラヌラと伸ばす頭たちは蛇そのもので、首をめぐらす仕草はドラゴンにも似ている。しかし体表には蛇の鱗甲りんこうも、さざ波立つような竜鱗りゅうりんも存在せず、巨大植物の茎としか言いようがない。

 6つの目がルカに集中した瞬間、一行が『首C』と名付けた首――向かって右側の首がブルブルと震えた。フェルパーが言っていた毒吐きの予備動作。ルカは一気に踏み込み、燃える拳を首Cの胴体に叩きこんだ。グジュウッと、表皮の水分が蒸発する音。毒液を吐きそこねた首Cがグニャリと曲がる。

「シェァァァァァッー!」

 真ん中の『首B』が口を裂けんばかりに開けて、鋭い牙で襲い掛かってきた。ルカがサイドステップを踏んで避けた瞬間、『首A』が自らを鞭のようにしならせて横薙ぎに攻撃してくる。ルカは縄跳びの要領でやり過ごし、着地と同時にもう一度踏み込む。隙だらけの首Bに拳を見舞う。

「ルカさん!」

 ヘップの声を合図に、ルカは作戦通りインファイトをやめて離脱した。

「クソッ! 手応えナシ!」

 だが、予定通りのタイミングでホーゼが長い詠唱を終えていた。ヒュドラープラントの頭上に小太陽の如き灼熱の球体が生じ――垂直に落下する。

「アッつ! 爺さん威力高すぎだ!」

 バードのスペルシールドでは防ぎ切れぬ超高火力に、3つ首の魔物が1本の火柱と化した。充分に距離を取っていたルカの鼻孔にも、己の毛が焦げる臭いがこびりつく。

「ホッ! 久しぶりでチト張り切りすぎました」

 初撃を担うルカが接近戦で陽動し、特級メイジのホーゼが一瞬で灰にする。単純な作戦だが、相手は植物。功を奏したかのように思えた。


「ホーゼさん、二手目いきます!」

 このまま燃え尽きてくれれば。ヘップは期待を抱きながら、じりじりと距離を詰める。ポーチから【爆発の】矢のやじりを取り出し、右手に握る。プラチナム王国でセラドの快復を待っていたとき、「いつか役に立つ」とバァバに売りつけられた代物だ。強い火にくべるか、硬いもので衝撃を与えれば爆発するらしい。

 もしホーゼのスペルで即殺できなかった場合、敵は己の身体の火を消すために潜行する可能性が高い。二手目は、その穴に【爆発の】鏃を放り込み、ホーゼが火を注ぎ込んで起爆するというものだ。

 しかし。

 予想に反して、ヒュドラープラントが潜らない。焼け崩れもしない。もうもうと蒸気が立ち昇り、シュウシュウという音だけが広場に響いている。

「コイツ殴ったとき、グニャグニャでベチャベチャだったぞ。その水分?」

 ルカが言った。

「シューともキーとも言わねぇな」

 セラドが言う。

 その二言に、ヘップの背中に冷たいものが走った。


(体の湿り気は……泉の? 一声も発しないのは炎を飲まないように? )


「ホーゼさん、壁!」

「ホ、ホッホイ!」

 ホーゼが追撃の詠唱をキャンセルし、別の詞を呟きはじめた。白いもやのせいで、炎に包まれたヒュドラープラントのシルエットがぼやけていく。ヘップはやむなく振りかぶり、【爆発の】鏃を投擲しよう――とした瞬間、蒸気のカーテンを裂いて3つ首の頭部が現れた。

「ジィァァァァァッ!」

「まずっ……」

「ヘップ!」

 首Aの土砂ブレスは想像以上に凶悪だった。無数のつぶてに襲われ、咄嗟にクロスした両腕や下半身に激痛が走る。踏ん張りきれない。吹き飛ばされ――頭に鈍い痛み――

 ヘップは意識を失った。


「任せてください!」「ヘップ!」

 ルカの声より速く、サヨカがヘップのもとへ駆け寄った。ヘップとサヨカを守るように、ホーゼが氷で壁を作る。

「お嬢! スイッチしますぞ!」「ああ!」

 ホーゼが阿吽の呼吸で次の詠唱に入る。

「そんじゃあオレは」

 セラドが剣を大地に突き刺し、背中からリュートを引っこ抜いて弦をはじきはじめた。軽やな旋律がルカの動きを加速させる。

「ォラアァァァァ!」

 ルカは吼えながらヒュドラープラントに突進した。反撃の機会を与えぬ速さで連打を叩き込む。敵の特徴からして相性が良いのは斬撃、剣による切断。それは全員が分かっているが、5人のなかで超接近戦を続けられるのはルカだけだ。セラドは剣の扱いに長けているがまだ万全ではなく、なにより作戦の都合でバードの役割に徹している。ヘップのダガーは巨大植物に対してあまりに短く、得意の毒塗りも効果は期待できない。


(やってやんヨ!)


 ルカはひたすらに殴る。風が肌をなぞる。AABC、BCBA、CBAC――炎燻ほのおくすぶる3つ首が、全身をしならせて身悶えする。自慢の拳が致命の一撃に成り得ぬことは承知している。しかし限界を突破したルカの拳打は、確実に敵の動きを封じ続けている。

「ホーゼまだか!」

 敵を見据えたままルカが叫んだ瞬間。【メイジフィスト】に付与されていた炎が消え、両腕の周囲に、光輝く氷晶ひょうしょうが舞いはじめた。

「お嬢お待たせしました!」

「ッシャアアアアア!」

 鋭い冷気を帯びた右拳に力を込めて、土砂プレスを吐こうとした首Aのどてっ腹を打つ。続けて同じ個所を抉るように左、右、左。0.3秒の4連打。先ほどまでとは異なる打感が両腕に伝わってくる。首Aの表皮の一部が凍結し、ミシミシと悲鳴を上げはじめる。視界の隅、首Cから痰のようにねっとりとした毒液が飛ぶ。ルカは足元に転がっていた戦死者の黄金鎧を蹴り上げて毒液を迎撃しながら、首Aに渾身の――

「ウルァ!」

 水平チョップを放った。セラドの加速とルカのパワーが真空波を生み、硬化していた首を一刀両断した。ゴボゴボとと音を立てて、断面から土砂のような体液が溢れ出る。

「1本目ぇ!」

 ルカは一瞬だけ仲間の方に視線を走らせ、状況を確認する。セラドはリュートを弾き続けている。氷壁の陰でサヨカがヒールを続けている。ヘップの意識は回復したようだが、まだ動けるようには見えない。ホーゼは長い詠唱に入っていた。


(やれる!)


 ルカは正面に視線を戻す。次に狙うべきは、毒液を吐く首C。作戦上は最優先だった首。肉体はまだ加速に耐えられる。速く短く息を吸い、地面を蹴る。接近して、拳を引いた瞬間――隣の首Bがブルリと身を震わせ、天を仰いだ。

「オブルルルルルルアァァァ!」

 首Bの口から、透明な液体が噴出された。大量のそれは空に向かって水柱を作り、雨のように大地へと降り注ぐ。ルカたちは驟雨しゅううに打たれたように一瞬でズブ濡れになった。

「うおっ?」「うえっ」「これは……」

 想像を上回る水量だった。強い酒に似た刺激臭が鼻と喉に纏わりつく。サヨカとホーゼが激しくむせ返る。

「クソッ!」

 ルカは、一方の首に集中し過ぎた自分を罵った。だが酒だと思えば。フェルパー以外の種族にはさほど影響を与えないと聞いて、作戦上も首Bの優先順位を下げていたのだ。ルカは獣のように顔をブルブルと振って体液を飛ばし、目の前の首Cに集中する。

「……な」

 首Cが2本に増えていた。

 隣の首Bも2本…… 3本……。

 指先で目を拭おうとして、ギョッとした。

 指の数も増えている。視界が何重にもブレているのだ。

 背後で仲間たちが叫んでいる。どうやら同じ症状に襲われていると理解する。

「クソッ! アタイらには影響、ない、んじゃ……ヨ!」

 ルカは唾を吐いて構え直し、大地を踏みしめ、ユラユラと揺らめく首Cを打つ。正確に狙いをつけたはずの拳が2度、3度と空を切る。狙っている首がBなのかCなのかすら曖昧になり、意識が朦朧としてくる。

「オオ、オオオオオッ!」

 ルカは発奮し、大振りの水平チョップを放った。どちらの首か分からないが、手応えがあった。ルカはそのままその首にしがみつき、ホールドしながら同じ部位にチョップを打ちこむ。下半身の捻りが利かず、呼吸は乱れ、威力は半減する。


(もう少し、あと数発で、コイツ……だけでも)


 臭気もろとも息を大きく吸い、膂力りょりょくを漲らせる。捨て鉢になって2、3、4発と連打する。急速に意識が遠のいてゆく。


 目を覚ましたヘップは、ふらつく足に力を入れて立ち上がった。頭が多少ボヤつくが、機能している。隣でサヨカが昏倒している。やや離れた場所にいるホーゼは座り込み、呂律の回らない口でなにかを呟いている。濡れた体と強烈な臭いからして、例の体液が撒かれたのだろう。


(気絶していたから差が出た……?)


 ヘップは、いつの間にか出現していた氷の壁に手をついて、前方の様子を窺った。3本首のひとつ――Aが切断されている。ルカが、首Cにしがみついてチョップを打ち込んでいる。その彼女を、残るひとつの首が狙っていた。

「ルカさん! 避けて! ルカッ!」

 ヘップは叫びながら周囲に目を走らせた。ひとり足りない。


(セラドさんは?)


 疑問を抱いた直後、聞いた覚えのある口笛の音。猛然と走るセラドの姿が視界に入った。ルカを喰らおうとしていた首Bの頭部に、ショートソードが振り下ろされる。勢い乗った一撃だが断ち斬るには至らず、強い弾力に跳ね返される。セラドは怯んだ首Bを放置して、ルカに駆け寄った。ルカは首Cにしがみついたままチョップを繰り返しているが、その振りは弱々しく、頭は後ろに反り返り、白目を剥いている。


(ルカさん、失神して――)


 セラドが剣を地面に突き立てて、彼女の背中に密着、両腕を腰にまわした。そのまま自分の身体を横に大きく捻って――

「ぉらよっと!」

 ルカを放り投げた。セラドはその遠心力を使って高速回転しながら剣を掴み、彼女に代わって横一閃。……大木のような首が傾き、切断面から毒液が噴き出した。ドロリとした液体がセラドにへばりつく。

「グッ? ペッ! ……んのやろぉ」

 首Cはそのままゆっくりと、重々しく地に落ちた。

「セラドさん!?」

 よろめいたセラドが剣を取り落とし、両手で顔を覆いながら膝を突いた。間髪入れず真上から大口を開けて襲いかかった首Bが、セラドの上半身を咥え込んだ。

「セラドさん!」

 駆けようとして、転んだ。四つん這いになって手足に力を込め、なんとか起き上がろうとするが、臭気の影響が出てきたのか体が言うことを聞いてくれない。視界も微かにブレはじめる。首Bがセラドを咥えたまま天を仰ぎ、丸飲みの態勢に入った。

「そんな、だめだ……だめだ!」

 絶望するヘップの背後から、稲妻めいたひと筋の光が飛来した。それは雷鳴を引き連れて敵の胴体に突き刺さり、わずかな余韻を残して消滅した。

「ジェェァァァァァッー!」

 絶叫のはずみでセラドが吐き出された。

 振り返ると、遠方にジーラの姿が見えた。雷槍――賢者ホーカスがヴァルキリーに授けたという魔法の技――を投擲した姿勢のまま、彼女はゆっくりと倒れた。追いついた仲間たちが、ジーラを引きずって後退してゆく。

「う、お、お、おぉぉぉ……!」

 セラドが泥にまみれた剣を支えに、なおも戦いの姿勢を取ろうとしていた。壊れたリュートが背中にぶら下がり、その悲壮な後ろ姿が、満身創痍であることを訴えかけていた。

「お? へへ……幻覚、じゃねぇよな?」

 セラドが意味不明の言葉を発しながら、おぼつかない足で……残る1本の首に近づき、何かを確かめている。ヘップはボヤけつつある神経を研ぎ澄まして目を凝らした。セラドの胸の高さのあたり――雷槍がつけた傷だ。セラドは両手で剣のグリップ握り締め、その傷穴に剣先を突き刺した。ゆっくりと、残った力を振り絞るように、体重を乗せて剣身をズブズブと押し入れる。蛇竜が大呼して身をよじるる。その度に傷は広がり、ドボドボと噴き出す体液がセラドをずぶ濡れにさせる。

「うめぇ。もっとよこせよ。根競こんくらべだ」

 酒場で泥酔しているときの声と同じだ。

「セラドさん! 退いてください!」

「あ? ヘップ、……か? あー。そうそうヘップくんコレ……」

 蛇竜が全身を大きく曲げ、セラドを噛み殺そうとしている。

「落とし物」

 セラドがポケットから取り出したのは、【爆発】の鏃だった。


(オイラが気絶したときに――)


 セラドは剣を引き抜き、傷穴に鏃をねじ込んだ。敵の牙が迫る。セラドは鋼鉄の左腕を盾代わりにしてそれを受け止める。牙が左肘を貫通し、義手が神経ごとブチブチと引き千切られる。

「いってぇ! ……なぁ。ケンカ売ってんのか? ああ!?」

 右手一本で水平に振り抜かれた剣が、鏃を強かに打った。耳をつんざく破裂音と衝撃波に眩暈がする。大きく吹き飛ばされたセラドが地面に転がった。

「セラドさん……セラドさん!」

 なんとかセラドのもとへ這い寄ったヘップは、彼の顔を見て愕然とした。顔の右半分が赤黒く変色し、薄っすらと開いている右目の瞳は何も映していない。左目が微かに動き、こちらに向いた。

「……お。ヘップ? なんか変だな」

 ヘップは「やりましたよ」とだけ言って、彼の右手を握り締めた。全ての首を失ったヒュドラープラントは、枯れ木のように萎んでピクリとも動かない。セラドの指が小刻みに痙攣している。肌が青黒い。毒が全身に回っているのだ。解毒薬も治癒スペルも効かない毒……サヨカの言葉を思い出す。義手を失った左腕から大量の血を流しながら、セラドはうわ言のように呟いている。

「ヘップ。ヘップよぉ……。人間ってのはクソバカだぜ。他人のためによ。英雄気取りで……無謀な行動に出やがる。で、あっけなく死ぬのさ。……オレはどうだ? セラド様だ。オレはそんなバカな真似をしねぇ。そうだろ? なあ。……だから安心してよ、そこで大人しく寝てろ」

「はい。セラドさん」

 ヘップは臭気と涙で霞む目を拭い、ダガーで己の服を裂く。セラドの左腕に巻きつけ、力一杯に縛る。

「なあヘップ。キスポも、サンシャも、逝っちまってよ。オレはなんなんだろうなあ。サヨカも、ルカも、ホーゼも、お前も、……ああ借金、返さねぇとなあ。でも……少し休ませてくれ」

 セラドの呼吸が浅くなってゆく。左目の光まで消えようとしている。

「セラドさん? ……セラドさん! セラド! ねえセラド! セラドってば!」

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