不倫する理由になりますか?

「ごめん。嫌だった?」


キスするんだと思った時に、諒哉さんが謝ってきた。


「嫌じゃないです」

「でも、乃愛さん泣いてる」


泣いてるのは、わかってる。

だけど、これは嫌だからじゃない。


「こんなに優しく触れられるのっていつぶりかなって思ったら泣いてました。だから、嫌とかじゃないです。本当に嫌とかじゃないです」

「乃愛さん、先に進んでいい?」

「はい。諒哉さん……」


諒哉さんに答えるように私は左手で頬に触れる。

ゆっくりと優しいキスが降ってくる。

欲しいと思ってもらえているキス。

まだ、私が女であると言ってもらえてるように包み込まれるハグ。


「この下着で、ここまで?」

「あっ……恥ずかしい」


ブラウスのボタンを外されて、少し期待して付けてきた高級下着が見られてしまった。

あの日、散々馬鹿にされた私の勇気。


「これは、ヤバいね。凄く綺麗で興奮する」

「嬉しい……」


涙がさらに流れてくる。

本当は、私。

こんな風に言われたかったんだと思う。


「素敵な下着だね。初めて見た」


諒哉さんの優しさは、私の傷だらけで血だらけの心をそっと拭ってくれる。


「もっと見てもいい?」

「はい……」


レスは、不倫する理由になりますか?

私の行為は、間違ってますか?

その答えがわかるのは、いつか。

そのいつかまでに、私の心は死んでしまう。

愛していなければ、簡単に別れられたのに……。

こうやって、諒哉さんに優しくされながらも心は知典を求めているなんて……。


「乃愛さん……綺麗だよ」


ポタポタと諒哉さんの涙が頬を濡らす。

あーー、諒哉さんも奥さんを愛してるんだ。

愛しているけど、その愛に答えてもらえなかったから……私と……。


「大丈夫。同じだから……奥さんだと思ってくれていいから」

「乃愛さん……俺も旦那さんだと思ってくれていい」


誰かに代わりを努めてもらわなくちゃいけないぐらい。

心が死んでいたなんて気づかなかった。


諒哉さんがくれる優しいキスに、優しいハグに……。

癒されていく。

満たされていく。


私と諒哉さんの声が重なる。

愛されたい人は、愛してくれない。

そんな事を気づかせてくれたのは、諒哉さんと出会って頑張ったからだった。


私が不倫する理由。

知典が愛してくれるまでなのかも知れない。

それがいつになるかわからない。

それまで、私の心が持つかもわからない。

だけど、同じ思いを抱えている諒哉さんがいるから……。

明日からも頑張れる。


『ありがとう……』


全てが終わり見つめ合った私達は、同時に呟く。

最後まで、優しく手を繋がれていた。

満たされる。

心も身体も……。



レスは、不倫する理由になりますか?




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

レスは不倫する理由になりますか?♡乃愛編♡【カクヨムコン応募中】 三愛紫月 @shizuki-r

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ