抱かれたいのはワガママですか?
知典が寝室にやって来る。
いつものように、サイドテーブルにスマホを置き。
布団に潜り込む。
私は、眠ってるフリをしてわざと抱きついてみた。
「乃愛、やめろよ。明日も早いんだから……。えっ?」
知典は、私の腕を退けようとしてパジャマではない感触だと気づいたようだ。
何故か、知典はベッドから降りた。
パチン……。
電気がつけられる。
「うーーん。どうしたの?」
寝ぼけたフリをして知典を見ると軽蔑した目を向けていた。
「知典、どうしたの?怒ってる?」
バサッ……
毛布が捲られて裸の私が現れる?
「どんだけ必死なんだよ!気持ちわるっ」
吐き捨てるように言った後で知典は、私を見つめる。
「好きな人に抱かれたいと思うのはそんなに……。軽蔑されなきゃならない事なの?」
「いや、そこまで必死なの気持ち悪すぎだから。女が必死だと男は萎えるから」
「何でそんな言い方するの」
「正直。乃愛が母親になれるとは俺は思わないよ。自分の性欲すらコントロール出来ない奴が親になんてなれんの?」
「そんな言い方しなくてもいいじゃない。知典が私としてくれないから……。私なりに考えてやってるんだよ」
知典は、サイドテーブルからスマホを取る。
「悪いけど、リビングで寝るわ。後さ、俺。仕事してるんだよ。遊んでるわけじゃないんだよ。あのさ、若い時と違って生活もあるんだよ。そんなに乃愛みたいに一日中エッチする事ばっかり考えれるわけないだろ」
「何で、そんな言い方するのよ。私だって一日中考えてなんかいないから……」
「いや、考えてるだろ?ここ最近、気持ち悪い事ばっかりしてたのそれだろ?だいたい、乃愛はワガママなんだよ。普通に暮らせるだけでも感謝してくれよ」
言い合うのがめんどくさくなったのか、知典は私を睨み付けて寝室を出て行った。
気持ち悪い、気持ち悪い。
頭の中で、その言葉が響く。
ワガママ……。
好きな人に抱かれたいと思う事は、結婚すればワガママって言葉で片付けられてしまうのだろうか?
涙が頬を濡らす。
私は、最後の賭けに負けたんだ。
裸で知典に抱きついて。
抱き締められる事もなく……。
気持ち悪いと言われただけ……。
拭っても、拭っても……。
溢れてくる涙を止められなかった。
ブブッ……。
【どうか、今日はうまくいく事を願っています】
諒哉さんからのメッセージを見て、さらに泣いた。
誰かに優しくされる事は、こんなにも救われる事なんだ。
【レスは、不倫してもいい理由になるでしょうか?】
滲んだ画面に文字を打ち込んだ。
「こんなの送ったら怖すぎでしょ」
私は、作成したメッセージを消去する。
【今晩も……駄目でした】
その文章だけを送信した。
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