第201話 金 貨

 一体、いくら入っているのだろうか、この袋の中の・・・・金貨は!。

 そうか、今の幸の服装は、漫画やゲームなんかに出てくる服装とよく似ているんだ、だから可愛いし格好いいんだと、倫子は納得した。

 ・・・・しかし、剣を振るって冒険するような国が、今現在あるのだろうか?、シルクロードの方とかに行けば、もしかしたらまだあるのかも?・・・・。


「ねえ、その金貨は、どこの国の、いつ頃の金貨なの?、もしかして、考古学的な価値が高いとか?」


「え、普通に日本の金貨だよ、天皇陛下御成婚記念とか、御即位記念とかの」


 いやー、見た目に比して、中身は意外と普通だな。

 それでも、金貨ばかりでこの量、ちょっと不便だと感じる。

 第一、怪しまれると思う。


「ねえ幸ちゃん、とりあえず今日は家に来ない?、ここよりはいいと思うの」


「ありがとう倫子ちゃん、やっぱり持つべきものは親友ね、でも、さすがにお母さんに何て言い訳するの?、私は新しい部屋が見つかるまでは、ここでいいわ」


 確かに幸は、行方不明の当時中学生、母親が知れば即通報だろう。

 幸がここまで無事を名乗り出ないと言う事は、よほど何かあるのだろう。

 倫子は、幸に送られながら、大蔵省管理地の入口まで来た。

 

「あ、どうも、こちらの女性を送りに来ました」


「あー、はい、どうもね」


 え、えええ?、何?、どうして敷地の入口に管理人らしき人?、無人じゃないの?

 それに、幸ちゃん、妙にこの管理人さんと親しいみたいだし。

 第一、どうして管理人さんは、この幸ちゃんの異常な服装を見ても、何も感じないの?


「あの・・・・幸ちゃん?」


「ああ、大丈夫、ここの管理人さんは、こちら側の人だから」


 こちら側・・・・?・・・・どちら側!

 ああ、もう、幸ちゃんのする事の全部が謎だらけだと、倫子は思う。

 これは、自分が想定しているよりも、根深い話のようだと感じた。だから今日は黙って帰るしかない、と。

 キャンプ・ドレイク跡地の入口に、笑顔で手を振る幸の姿を見て、倫子は複雑な思いで家路を急いだ。

 ・・・・こんな非常識な話、一体誰に相談したらいいのだろう。

 佐々木・・・・いや、彼は都内で一人暮らし、電話はまだ引いていないと言っていた。

 それに、緊急の連絡先も聞いていない。

 モヤモヤとした気持ちを抱えたまま、倫子は東武東上線を乗り継ぎ家路を急いだ。

 帰りの車内で、窓の外を眺めながら、今日一日に起きた事を振り返る。

 ・・・・男性4人に襲われ、行方不明の幸に助けられ、コーヒーを飲み・・・・

 ああ、ダメだ、丸一日非常識の塊だ。

 今になって、倫子は男たちに襲われ、人生で初めて異性から性的に見られた事、暴力と悪意を向けられた事を認識し、再び恐怖したのである。

 家に着く前に、思わずトラウマになりそうで、一度途中下車して休憩を入れた。

 

 ・・・・幸ちゃんは、あんな怖い思いを、もう何回も経験しているんだ・・・・


 そう思うと、倫子はこの世の無情さに心を痛めた。

 どうしてみんなが幸せになる世の中にならないのだろうと、一人親友の不幸を嘆くのであった。

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