第200話 ・・・・できないの
「それで、幸ちゃんは、どうしてこんなところで生活しているの?、怖くない?、なんだか不気味だわ」
倫子が言うのも無理はない、実際にかなり不気味な場所ではある。
しかし、幸はキャサリンからある一定条件を提示されていた。
それは、これ以降のミッションは、基本的に未来人であるキャサリンやMOMを頼ってはならないと言う事。その代わり、金銭に関しては、経費として多額を準備するので、と言う事だった。
「え?、お金は沢山持っているってこと?、じゃあ、こんな所、すぐに引き払って、マンションにでも移ればいいじゃない!」
「いやー、そうも行かないのよ・・・・だって、私、行方不明の中学生なんだよ」
倫子も、ああそうか、と直ぐに納得はした。
いや、それならば、当時の友人でも頼ればいいのに、と。
「それなら、どうして私を頼ってくれなかったの?、幸ちゃん、友達でしょ!、私、なんだってするよ!」
「ごめんささい、一度はそれも考えたんだけど、あなたを巻き込みたくないって思ったの」
「どうして?、ずっと心配してたんだよ!、第一、それなら名乗り出ればいいじゃない、行方不明だった中学生ですって!」
「ごめんね倫子ちゃん、それは・・・・できないの」
倫子は、幸がかなり深刻な事情を抱えていることを理解はしていた。
それでも、行方不明であったことを、警察にも言えない事情とは、何なのだろうか?
「・・・・ねえ幸ちゃん、日本海側でね、カップルで海岸にいると、外国の工作員に誘拐されるってオカルト話があるの。幸ちゃんは、なにかそれに係わっているの?」
「日本海?、私、そっちは解らないわ、でも多分それ、オカルトではないわ、本当の事だと思う」
「なら、もうここを出ましょう、詳しくは解らないけど、ここは危険よ」
「私なら大丈夫、さっきも見たでしょ、私、自分の身は自分で守れるわ」
「いや、そう言うことじゃなくて!、ここは日本よ、暴力で何でも片づく世界ではない、幸ちゃんが今までどんな国でどんな事をしていたかは知らないけど、ここは日本よ」
ああ、倫子はオルコやロンデンベイルの事を、外国だと思っているらしい。
今日、全てを理解させるのは無理だと、幸は思った。
それでも、係わらないようにしようと思っていた大親友の倫子と、このような偶然によって再会できたのだから、幸は一つお願いをしようと考えた。
「ねえ倫子ちゃん、もうこの際だからお願いするんだけど、私、お金はあるんだけど、戸籍上の問題があるから、部屋を借りたり、買い物に行くことが出来ないの、倫子ちゃんの名義で、部屋を借りてもらえないかしら」
「それはいいけど、お金、大丈夫?」
「ええ、そっちの心配はないわ」
幸はそう言うと、メロンくらいの大きさの袋を両手で持ち上げた。
え?、なに?、これって冒険者とかが金貨を入れておく袋みたい。一体何が入っているのやら。
「・・・・まさか、そこにお金が入っている訳じゃないわよね」
「あら、よくわかったわね、そう、金貨が入っているわ」
「金貨・・・・金貨?!」
倫子が驚くのも無理はない、平成の世に、金貨を袋一杯にして持ち歩く人間は皆無なのだから。
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