第186話 私、不愉快です

 謎が多い女性、キャサリン・コーネリー。

 立ち振る舞いもファッションも、どうもこの世界とは異なる何かを持っている。

 異世界人である幸が見ても、何か違和感を感じるほどに。


 そうだ、キャサリンはこの世界の人間ではない。 

 あのUFOのような乗り物を駆使して、自由に時空間を行き来することが出来る。


 ・・・そんなレベルの人物が、自分に一体何をお願いしたいのだろうか。


「ここに居る人間は、少なからず関わりがあることだから、一緒に聞いて欲しいの。ラジワットさんの事よ」


 それを聞いて、幸は再び険しい表情に戻った。

 このメンバーで、ラジワットの話はしたくなかった。


「どうしてラジワットさんの話をするんですか、私、不愉快です」


 幸が語尾を荒げてキャサリンに反抗する。


「ねえ、最後まで話を聞いて頂戴、フェアリータちゃん、あなた、ラジワットさんを助けたいとは思わないの?」


 ・・・は?、


 一体、何を言っているのだろう、この人は。

 まさか、キャサリンはラジワットが虐殺された事を知らないのか?。


「ラジワットさんは、国境の丘で処刑されました・・・もうこの世には・・・・」


「ねえ、ちょっとキャサリン、流石にそれは非常識よ、フェアリータちゃんは、とても傷付いているわ、そのことは・・・やめましょうよ」


「違うのよ、ねえ、フェアリータちゃん、しっかり聞いて頂戴、これはとても大切なことなの、本来、ラジワットさんは、死ぬ運命には無いはずなの、この世界は、少しおかしな方向に向かいつつあるのよ」


 運命?、一体何を言わんとしているのだろうか。

 第一、運命が違うと言われても、それを自分にどうしろと言うのだろうか。


 何をしたって、死んだ人間は元に戻らない。


「なんですかキャサリンさん、それでは死んだ人間を生き返させる方法でもあるような言い方ですね」


「・・・まあ、そうね、ある意味、そう解釈してもらってもいいわ」


 謎の多い女、キャサリン・コーネリー。

 そうだ、あんなおかしな乗り物に乗って、時空間を自由に行き来できるこの人なら、もしかしてラジワットやマリトを生き返らせる秘術を持っているのかもしれない。

 それは幸の心を大いにザワつかせる内容だった。


「キャサリンさん、なら、詳しく話を聞かせてもらえますか、私は一体、何をすればいいのですか?」


「そうね、まず、私の任務について、少し話す必要があるわね、ちょっと複雑な話だけど、聞いてもらえるかしら?」


 それが、どれほど複雑な話であろうが、難解な話であろうが、一瞬の光明を見出した幸にとって、聞かない選択肢など無い。

 もしかしたら、キャサリンの話の先に、まだラジワットとの未来があるのかもしれない。

 そう思うと、久しく幸の心ははやるのであった。

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