第185話 秘密の晩餐

「本当にお久しぶりね・・・・フェアリータちゃん、で、いいのよね」


 幸はとても驚いた、現れたのは、かつて共に旅をしたメンバーでもあるキャサリン・コーネリーであった。

 それは、国王からのサプライズでもあり、今日ここにキャサリンが来ている事を、サナリアも知らないでいたのだ。


「まあ、キャサリン、今までどうしてたの?、本当に久しぶりだわ、もう3年になるかしら、あなた、私達と最初の国境を越えて、そのまま別れてしまうんだもの。それにしても、変わらないのね、まるでさっき別れたように、本当にそのままなのね」


「そうね、ある意味、それは正しい認識だと思うわ。逆にフェアリータちゃんの変貌ぶりには驚かされるわね」


 幸だけが久々なのではない、マッシュやサナリアにとっても、久々の再会なのである。

 マッシュは、この再会が嬉しくて仕方が無かった。


「フェアリータ、そしてセシル、だったね、顔を上げなさい、今日は国王と捕虜の関係ではない、秘密の仲間として、この部屋に居る全員は、俺の友人だ、それでは不満か?、フェアリータ」


「いえ・・・・勿体なきお言葉」


「だから、それ、やめろって!」


「フェアリータ殿、マッシュもこう言っているのだから、そう堅くならずにリラックスしたらいい、今日は同窓会のようなものなんだから」


 幸は、このサプライズを少し嬉しいと感じつつ、やはりロンデンベイルの事が思い出されて辛かった。

 そんな複雑な表情を見せる幸を気遣って、セシルが話しかけてくる・・・・もちろん、この無茶苦茶な空間についても。


「フェアリータ様、どうして私達捕虜が、このような国王陛下と親しく話ができるのですか?」


「そうね・・・3年前にセシルたちと別れた直後に、この人たちがパーティを組んでいたところで合流して・・・・暫く一緒に旅をしていたのよ」


「・・・・旅?・・・国王陛下が?、フェアリータ様と?・・・」


 セシルは、その現実味の無い話に、全く付いて来れない様子だった。

 こうして、かつてのパーティメンバーが揃った4人組とセシル、そして幸の6人による、秘密の晩餐が始まった。

 実はキャサリンを除く3人は、密かにこのような秘密の会合をよく開いていたらしい。

 マッシュも立場が立場なだけに、中堅将校であるワイアットと対等に話す事が出来ず、3人はこの部屋を使って酒を酌み交わしていたのである。

 

「それにしても、どうしてキャサリンは今日、ここに来ることが出来たの?」


「だって、フェアリータちゃんの一大事だって聞いて」


「聞いてって・・・・誰から?」


「誰って・・・・ねえ、」


 どうやら、サナリアには秘密の、特別な連絡方法がマッシュとキャサリンの間には存在しているようだった。

 考えてみれば、謎の多い人物だ。

 そんなミステリアスなキャサリンが、突然幸に提案を始めるのである。

 それは、秘密のテンションに少し気分が良かったマッシュとサナリアを、驚きの表情に変えるほどの内容であった。


「ねえフェアリータちゃん、実はあなたに、いえ、あなたにしかお願い出来ない事があるの」


 急に深刻な表情を浮かべるキャサリン・コーネリー。


 それでも、少し自暴自棄の幸には、この際なんだって聞いてやろうと思えるのである。

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