第175話 囲まれた?

「まさか・・・囲まれた?」


 以上なスピードで疾走して来た幸であったが、退路である出口付近には、数十名のタタリア兵が待ち受けていた。

 既に、弓兵の矢も、こちらに照準を合わせている。

 どうする?、後ろには、マルスル達が、幸の救助を待っている。

 ここで自分が、敗北する訳には行かない。


 幸は考えた、考えて、考えて、もう、これしか思いつかなかった。


「おい、なんだ?、この巫女、戦意喪失か?」


 兵士の一人がそう言う。

 幸は、短剣を鞘に納めると、防具を外し、脱ぎ始めた。


「ねえ・・・私の防具を、外してくださらない?、私、もう、暑くて」


 その一言で、いきり立っていた兵士の空気が、一気に変化した。

 この駐屯軍に、女は皆無だ。

 今は忌々しい将校もいない。

 自分たちが、ここでは王様なのだ。


 つまり、目の前の巫女をどうしようと、誰も咎める者はない。


 そんな考えが、包囲した兵士の頭に過るのだ。

 幸は、とても女性らしく成長していた。

 硬い防具を外せば、豊満な胸や足のラインは、どんな男の目も楽しませるほどに美しいラインで魅了する。


「へへ、、、へへへ、、もう堪らんぜ!」


 一人の兵士が、思わず本音を発すると、他の兵士も剣を納め、幸に迫ってくる、ゆっくりと、そして大量に。

 幸は、あの練馬で自分を犯そうとしてきた中年男を思い出していた。

 本当は、怖いし気持ち悪い。

 こんないかがわしい視線が数十と自分に当てられる、それは嫌悪感以外に何も生まなかった。


 だが、活路があるとすれば、兵士が剣を下げた時だけ。

 それには、このお色気作戦は必須だ。


 胸の防具を留めていた革ベルトを外すと、鈍い金属音がして落下する、同時に、豊に成長した幸の胸が飛び出してくる。

 下品な歓声が挙がり、幸はすっかり男たちの慰み者になり果てた。


『ごめんなさい、ラジワットさん、あなた以外の男性に、私、裸を見られることになりますけど、必ずあなたを助け出しますので』


 心の中で、ラジワットに申し訳ない気持ちで一杯になる。

 悲しさよりも、怖さが勝り、涙は出なかった。

 それでも、清い身体を、ラジワットに捧げたかった。

 唯一、自分が心を許した男性、ラジワットのために。


 シャツにズボンだけになった幸に、男たちの汚らわしい手が伸びる。


 誘うフリをする幸。

 男を一人、人質にして、開いた退路に全力疾走する。

 もう、それしかない。


 しかし、幸が思っていたのとは少し違う行動に、幸は思わず人質に取る事が出来なくなってしまった。

 胸や股の部分を、いきなり鷲掴みにしてくるのだ。


 男たちの猛々しい欲求が、いきなり向けられる。

 怖い!、嫌だ!、助けて!、ラジワットさん!

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