第85話 稲妻の小さいような
それは翌朝の事。
ラジワットが一番最初に起きて、窓を開けた。
空は、薄っすらと夜明けの気配を感じさせた。
ラジワットと寝たのは、何時ぶりだろうか。
女性陣が加わってから、こうして一緒に寝る事は無かった。
「、、、マリト?」
ラジワットがつぶやく。
幸も、どうして疑問形なのかが不思議であったが、同じくマリトを見てみた。
、、、、特別、何かおかしなところがあるだろうか?。
「ミユキ、ちょっと、マリトを抱きしめてくれないか?」
はい?、えっ?、いやっ、、、えー♡!
いくら父親の許可が出たとは言え、、、、いいのかしら!、私、なんだか、ちょっと、、、複雑です。
そう思いながら、幸は言われた通りマリトを抱いてみた。
「、、、、あれ?、、、マリトちゃん、、、」
「やはり、、、、やはりそうか、ミユキもそう思うよな!」
ラジワットの表情が、見る見る笑顔になって行く。
そんな二人を不思議そうに見るマリトがようやく目を覚ます。
「、、、、どうしたの、お父さん、、、ミユキお姉ちゃん」
「マリトちゃん、気が付かない?、あなた、少し大きくなってるんじゃない?」
マリトは、幸にそう言われると、まさか、という表情を浮かべながら、ベッドから降りて立ってみた。
「ほら、、、やっぱり!」
マリトの身長は、10センチ近く伸びていたのか、寝間着が小さく感じる。
「凄いじゃないか、凄い!、やった、やったぞ!」
ラジワットがそう言うと、ちょこんと立っていたマリトを力いっぱい抱きしめた。
幸も思わず二人をまとめて抱きしめる。
よかった、全然効果がないのでは無かったのだ。
「しかし、なんだって少しだけ伸びたんだ?、ミユキ、何か心当たりはないのか?」
急にそんな事を言われても、当然あるはずも無かった。
、、、いや、、無くは無いのかもしれない。
昨日の夜、眠りに落ちる前、、、あの、稲妻の小さいような、あれを握って、、、、潰した事。
幸は、もう、そのままをラジワットに話た。
すると、ラジワットは驚いたように幸を抱きしめた。
なに?、今度は、、、、なに♡?
幸はとても嬉し恥ずかし状態であったが、今はそれどころではない。
ラジワットは、多分何かの結論に到達したのだ。
少なくとも、そうでなければラジワットは自分に抱き着いたりなんてしない。
「あの、ラジワットさん、私にも解るように、ご説明願えますか?」
ラジワットは、ゆっくりと幸を離すと、彼女の両肩を大きな手で掴みながら、嬉しそうにこう言った。
「ミユキ、それは君が持つ特別な力なんだよ、ハイヤー家の秘術と同等か、それ以上にね」
ラジワットが言うには、ハイヤー家の人間は本来、そのような人の目には見えない「龍脈」のようなものが見える体質なんだそうだ。
これが見えるから、幸が巫女であることも察知出来た。
そんな不思議な能力が、幸にも備わっていたのである。
「じゃあ、昨日見たあの稲妻って、、、夢ではないの?」
これは意外なことであった。
昨日の肩たたきでは、その小さな龍脈を捕える事が出来ず、多分外して叩いていたのだろう、とのことだった。
つまり、逆を言えば、その小さな稲妻をイメージしながら捕えて肩を叩けば、巫女の秘術は効果を発揮する、という事になる。
「おはようフェアリータちゃん、、、様子は、、、、いいみたいね」
サナリアが病室に飛び込んでくると、その後ろから他の3人も次々と入ってくる。
昨日の悲壮感を払拭するように、明るい朝となった。
「では、あらためまして、、、、私、肩を叩きますよ!」
幸の二度目のチャレンジが始まった。
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