第62話 大地の叫び
「ラジワット、、、?」
ワイアットは、覚悟の一振りを前に、目の前にとても非常識な光景を目にし、一瞬戸惑ってしまった。
ラジワットは、ユニホンの幼獣ユキにまたがり、それはまるで騎士の如く巨人に迫る。
その姿は、まるでユニコーンに乗った、神々しい騎士の姿であった、、、ユキがもう少し大きければ。
ユキがまだ幼獣であり、サイズ的にはまだロバくらいの大きさだったことから、ラジワットの大きさと相まって、ユキが余計に小さく見えてしまう。
しかし、そこは幼獣とは言えサイの一種、パワーは相当のものがある。
一撃を加えたあと、大きく弧をを描くように反転一回りしたあと、再び巨人に迫り来る。
「ラジワットさん、、、凄い!」
幸は思わず呟いてしまう。
こうして見ると、ユキちゃんは確かにユニコーンの原型と言えた、それは白い毛を纏い、二本の角が際立って見える。
それに乗って、剣を振るうラジワットは、何とも勇敢な戦士に見えた。
ラジワットの更に一太刀が、再び巨人を襲う、すると、今まで左手に持っていた獲物を放し、右手の棍棒を握り直すと、いよいよ戦闘態勢に入った。
ユキと共に、巨人に突進するラジワット。
二つの大きな質量は、交錯する一点に向かい真っ直ぐと突き進む。
スローモーションのように大振りの棍棒に、余裕で交すラジワット、ところが、先ほどまでのゆっくりとした動きに反して、突然巨人は俊敏に前蹴りをラジワットに放った。
これには流石のラジワットも不意を突かれ、ユキと共に吹き飛ばされてしまった。
「ラジワットさん!」
数メートルは飛ばされたラジワット、それはまるで白昼夢でも見ているように、何故だか他人事のように思え、その現実を受け入れる事が出来ずにいた。
ラジワットが動かない、、、まさか。
この、絶対的な質量の差は、そのままこの勝敗の行方を示すかの如く、意味を持っていた。
顔面蒼白の幸、動かないラジワット。
ユキちゃんが、ゆっくりと動き出すと、幸の白昼夢は覚めたように、現実感を少し取り戻す、それでも、幸は、目の前で起こっている事を、未だ受け入れきれていない。
「嫌、、、、嫌だよ、、そんな、、、私、、、ラジワットさんを失ったら、、、どうして?」
そう呟く幸は、呼吸を荒くしつつ、腰の後方に装着していた短剣をゆっくりと抜くと、ふらふらと巨人の居る方へ歩き出した。
「やめて!フェアリータ!、だめ!!、止まりなさい!」
サナリアの叫びを遮るように、加速度を増して巨人に突き進む幸。
そんな幸に気付いた巨人は、一瞬だけ幸を視認したが、それはまるで相手にしていないように無視をすると、巨人の興味は倒れているユキちゃんとラジワットに再び向けられた。
「、、、、何をする気?、ねえ、あなた、、、ラジワットさんとユキちゃんを、、、どうする気?」
守らなくては
そう思う幸の怒りは、次の瞬間、頂点に達する。
巨人が、まるで獲物を持ち上げるように、ユキちゃんの後ろ脚に手をかけたのだ。
悲鳴を上げるユキちゃん。
「嫌だ、、、、、嫌、、、嫌、嫌、嫌、、、、イヤーーー!」
幸は、怒りに任せて思いっきり地面に短剣を突き刺した。
彼女の目には、地面を這う数匹の「龍」のようなものが映っていた。
その内の一匹を、怒りに任せて突いたのだ。
そして、大地に大きな衝撃が走ったのである。
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