第44話 キラキラとした感情
「ラジワットさんは、14歳で、たった一人で日本に渡ったのですか?」
「ああ、そう言えば、丁度ミユキと同じ年の頃になるんだな、私の家では、日本語の教育も成されていたから、簡単なコミュニケーション程度は問題なかったが、曽我館長が、私を中学校に転入させると言い出してな、大変な事になったんだ」
そりゃ、大変なことになるでしょうね!、と幸は思う。
これだけのハンサムっぷりに、この剣術の腕前、そして転校生という危険なキーワード、、、、女子が放って置くはずがない。
「その学校で、、、、奥様と?」
「いや、真理子は、私が中学校で困らないよう、一所懸命に勉強を教えてくれた、創生館館長、曽我先生の一人娘だったんだよ」
、、、、え?、住み込みの剣術道場の一人娘、、、それもかなり年上の、、ドヒャーッ!、本当にもう、ラジワットさんったら!
真理子は、丁度その年に大学を出たばかりで、新任教師として高校で教鞭を取り始めた頃だった。
まるで弟のように可愛がってくれた真理子さんに、憧れを抱くのは当然の事だろう、しかし、そんな淡い恋いを、本物にしてしまうあたりが、流石ラジワットだと幸は思った。
面倒見の良い真理子は、不慣れな日本での学生生活を不憫に思い、高校進学は自身が教鞭を取る学校へ、との思いから、受験をさせることに。
こうして、高校教師である曽我 真理子と、高校1年のラジワットとの禁断の関係はスタートして行く。
もちろん、入学当初は二人とも多少の気持ちはあったにせよ、男女の仲には発展しなかった。
真理子の弟、曽我 典明は、既にこの高校の1学年先輩でもあったため、この3人で連む事は多かった。
特に弟の典明とは、剣道部の先輩後輩として、学内外ともに本当に世話になったらしい。
そんな二人に、変化が訪れたのは、ラジワットが高校3年の時だった。
ラジワットは、持ち前の学力を活かし、大学受験にまで至っていた。
そして、合格発表後、創生館は、何かトラブルに巻き込まれてしまい、館長の曽我 宗明の依頼を受け、今度は真理子をこちらの世界へ避難させた、という事情らしい。
「やむを得ぬ事とは言え、こちらの世界に日本人を入れた事はほとんど無い、間違えて入ってくる事はあっても、意図して入るという事はリスクを伴う」
あれ?、今、リスクを伴うって言ってた?
ん?、、、、じゃあ、私は?
「あの、、、意図して入ったのであれば、、、私もですよね」
「、、、、ああ、そうだな、ミユキも、それなりのリスクを伴う。だが安心してくれ、どんなことがあっても、私が必ず守るから」
思いがけず、またハンサムな言葉をかけられ、少し照れてしまう幸であったが、どんな経緯でラジワットと真理子がこの世界に来たのかについては、あまり詮索しすぎない方が良いかとも思った。
まさか、、、、駆け落ち?!
いや、流石にそれはないか。
いずれにせよ、年の離れた二人は、手に手を取ってこの世界に逃げてきて、二人は結婚したのだ。
他人事ながら、真理子さんはきっと、ロマンティックな旅をしたに違いない、そう思えた。
なぜなら、今、自分自身がとてもキラキラとした感情を抱いて、ラジワットと旅をしているのだから。
「私が初めてミユキに会った時、私が日本人だと言った理由、解ってもらえたかな?」
ああ、確かに大学受験までしているのだから、国籍を持っているのだろう、、、、どうやって?。
幸は、自分では解らないことと言うのは、沢山あるのだと思いながら、ラジワットの横顔を見ていた。
そんな、悲しそうなラジワットの励みになることが出来たらいいな、と思いながら、幸は少しづつ眠りについたのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます