第43話 真理子
「日本人、、、、ですか?」
幸は思わず聞き直してしまった。
それは、予想外の言葉だった。
それまで、この世界でとてつもなく妻の座を狙う女達をさんざん見てきた後だけに、幸は勝手にこの世界のさぞかし高貴な女性を妻に娶ったものだとばかりに思っていった。
ラジワットは、幸の質問に、躊躇うでもなく淡々と答えた。
「ああ、前に言っただろ、私は日本人だと、だから当然、妻も日本人なんだよ」
幸は一瞬、ラジワットと同様に、奥様もまたこの世界から日本へ時空間転移者だと思っていた。
ところが、ラジワットの言葉は、更に幸の予想を遙かに越えたものだった。
「妻は、、、真理子は、私の高校時代の担任教師だったんだ」
、、、、、、、、、、、。
えーっ!、ラジワットさんの?、担任?、え?、高校?、ラジワットさんが、日本の?、え?、こっちの?、、、、高校教師?。
幸が描いて来た、これまでのラジワットからは、とても想像できないような一言。
そもそも、ラジワットにだって学生時代はあっただろうが、まさか日本の高校に通っていた訳ではあるまいと思っていた。
「ラジワットさんは、、、日本の高校に通っていたのですか?」
「ああ、言語の問題があったからな、大変だったぞ」
いやいや、論点はそこではないだろ、と幸はツッコミたくなったが、それこそ、大変な話しを聞いてしまったのではないかと。
ラジワットさんって高校生なのに、担任の女教師と恋仲に、、、
もしかして、ラジワットさんって、、、、
不 良 、、、、!?
そうだわ、きっと、生徒と教師の、越えてはいけない線を越えて、ついに二人は一つに、、、、キャーッ!!!、なにそれ!、ちょっ、、不良ー!
それまで、聖人のような生活ぶりだったラジワットを見てきた幸にとって、このラジワットの発言は、大いに見る目を変えてしまった。
この人は、男の人の中でも、唯一大丈夫な人、だと思っていたのに、まさかそんな男性だったなんて。
幸は、なんだか急にラジワットとの二人旅が怖いと感じるようになっていた。
憧れだったラジワット、の、まさかの恋バナ。
しかし、怖いからこそ、この話しはしっかり聞かないといけない、そう思った。
第一、もう興奮して寝られない。
「ラジワットさん、、、、もう少しお話、聞いてもいいですか?」
ラジワットは、少し苦笑いしながら、奥さんの真理子さんの話しを始めた。
ラジワットの家柄は、帝国内でも屈指のシャーマンの家系で、その能力は皇帝一族と肩を並べるほど強力と言われている。
そんなハイヤー家からは、代々異世界である「日本」への行き来を繰り返し行っていた。
しかし、それは帝国内でも公言が許されていない機密事項で、一族であっても、ごく一部しかこの事実を知らないのだそうだ。
そして、ラジワットの代では、これまで単なる往来程度の行き来を、いよいよ長期間滞在にシフトする話しが持ち上がる。
それは、異世界「日本」との文明の差が、あまりにも大きくなり始めていたからであった。
ラジワットが14歳になった時、その任務を命ぜられたのがラジワットである。
彼は、兼ねてから交流のあった剣術道場「創生館」館長、曽我 宗明を頼ることになった。
こうして、未だ14歳だったラジワットは、日本での生活をスタートさせるのである。
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