第40話 凸凹の憂鬱

 風呂を上がった幸とセシルは、年齢は離れているものの、すっかり打ち解けて親しくなっていた。

 そのままラフな格好になるのかと思っていたら、セシルのお母さんが二人分の礼服を準備してくれた。


「あの、これからお夕飯なんですよね」


「ええ、もちろん!、だからお洒落しないといけません!」


 はあ、お洒落とな?。

 なんで食事をするのにお洒落が要るのか幸は解らないでいたが、リビングに通された時に、その理由が解った。


「、、、、え、なにこれ?」


 幸は、夕食会というので、もっとラフな感じの家族団欒をイメージしていたが、そこには村中の大人が詰めかけ、しかもさっきラジワットに倒された5人が一番先頭でラジワットの接客を務めていた。

 、、、これは、夕食会ではなく、、、壮行会では?、と思えるような、何かステージのようなものまである。

 一番の上座には、ラジワット、そして、その隣にはもう一つ大きな椅子が置かれていた。


 、、、、幸は、嫌な予感がしていた、、そして、それは的中するのである。


 セシルが幸を、問題の大きな椅子へと案内する。

 やっぱりこの椅子は、自分用だったようだ。

 二人が揃ったところで、なにやら壮行会は始まった。


 幸は、お腹が空いていたため、早く食べたい、くらいに思っていたが、村人は真剣そのものだ。


 、、、何が始まるんだろう、、、

 まさか、さっきの山賊の公開処刑なんて始まらないだろうな、と不安になる。

 しかし、その壮行会は意外な方向へと進んで行った。

 

 壇上に進んだバシラは、全員に向かってこう言い放った。


「私、バシラ・ロウメイは、本日ラジワット・ハイヤー様に剣で屈しました。本日この瞬間より、私達5人は、ラジワット様のためにこの身を捧げるものであります」


 あー、遂に言ってしまった、、、、どうなるんだろうこの旅路は。

 まさか、何処までもついてくる気じゃないでしょうね、と幸は心配になる。

 なんとなく、未だ幸は、ラジワット以外の大人の男性を怖いと感じてしまう。

 しかも、山賊の若者、ギラギラしたこの感じは、ラジワットやカウセルマン達にはない野生を感じる。


 そんな幸の想いを気にすることなく、会場は盛大な拍手で満たされた。


 そして、族長のガーセルがラジワットとのこれまでの関係と、自身も同様にラジワットにこの身を捧げた経緯を述べると、盛大な乾杯と共に宴が始まる。


 そして、最初は堅く引き締まっていたセシルの正装は、なんとなく会が進むにつれて緩くなっていったように思えた。

 最初は、この地方の礼装を見慣れていないから、そう見えるのだと思っていたが、この村の正装は、ランカース村の正装とよく似た真っ赤なドレスで、幸も今日で2回目の着用であるため、、、なんとなく、解るのだ、、その着こなしが乱れていることに。


 これは、、、、ラジワットさんに迫っているのでは?、セシル!

 ああ、もう、胸のところなんて、あんなに下まで下げちゃって!

 一瞬、幸も対抗しようかとさえ思ったが、自分の胸のサイズでは、うっかりストンと落ちてしまうかもしれない。

 そう思うと、こと体形の差が、何とも疎ましく思えてならない。

 

 、、、、私もセシルさんのように、もっと凸凹のはっきりした体形だったら、ラジワットさんは自分に振り向いてくれるだろうか、、、、

 

 幸は、そんな事を考えながら、盛り上がりつつある宴を楽しみ始めるのである。

 

 セシルの露出は、ある程度の線まで下がると、そこで停止し、さすがに恥じらいを見せた。

 そんなセシルを横目に、何ら興味を示す事の無いラジワットに、さすがの幸もセシルが可愛そうにすらなって来た。


 、、、、まさか、本当に女性に興味が無いとか?!


 いや、、、それでは、息子さんがいるのもおかしいし、、、。


 ひょっとして、どちらもイケる口!



 こうして、宴の席の盛り上がりとは別の所で、幸自身も盛り上がりを見せるのであった。

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