第35話 恋

 これほどロマンチックなお祭りがあるんだと、幸はもう目が回りそうだった。

 まさか、この私が恋をする?、そんなバカな!。

 そう思って、ラジワットの横顔を見ると、、、あれ?、いつもよりドキドキ感が凄い!

 上半身裸の時より、今のラジワットさんの方が、何故かトキめいてしまう、、、私はもしかして、制服フェチなのか?と素っ頓狂な考えを巡らせる。

 無理もない、こんな感情、何か理由付けでもしなければ、現実を直視できない。

 これから二人は、、、、二人っきりで旅をするのだ、、、こんな恋心を抱えて旅なんてしてみろ、、、鼻血だけで出血多量で死んでしまうわ。


 再びテンションの高い音楽が鳴り出すと、村人は乱戦状態でグルグルと回り出す。

 もはや、誰が相手であっても、何も問題ない、と思えるほどのテンション。 

 幸は、さっき感じたラジワットへの想いを、一旦このダンスのテンションに任せて保留にしようと思った、冷静になったら負けだ、と。


 物凄いテンションだった。

 ダンスが終わるまでに、幸は男子から3人くらい告白された、だが、なんだか社交辞令程度にあしらってしまう。

 ダンスの相手は、いつの間にか女子同士でも関係なくなっていた、本当にめちゃくちゃで楽しい、こんなカオスも悪くない。


「ねえフェアリータ、男子から告白されていたでしょ!、あなた人気者よ!」


 幸は、ダンスが楽しすぎて、「へー」くらいにしか思わなかったが、平常心であればきっと赤面して俯いていただろう。

 アシェーラは、テンション高く今度はラジワットに抱き着いた、いつもの幸なら、多分嫉妬しただろうが、めでたい席での事は無礼講なんだと、思わず幸も連れてラジワットに抱き着いた。

 するとラジワットは、二人を抱えると、そのままくるくると回転し始める。

 光の洪水が、幸の目の前でキラキラと回転し始めると、幸のテンションはおかしくなってきた。

 

 ダンスは楽しい!


 それがリチータ祭を体験した、幸の本音である。



 さすがに勢いよく踊り過ぎ、持久力に自信のあった幸もクタクタになってしまった。

 一体、どれほど踊ったのだろうか。

 きっと、ディスコという場所も、こんなテンションなんだろう。

 幸は、少しだけ大人になったら行ってみたいとすら思った、、、。


 お祭りは最後、花火でラストを飾る。

 日本の花火ほど派手ではないが、一発上がるごとに歓声が凄い。

 ダンスのテンションと疲労が手伝い、幸とラジワットは帰路に着いた後も、べったりとくっ付いて歩いた。


 傍から見れば、子供と保護者のようにしか見えないが、幸はとても幸福な気持ちである、、、この時間が永遠に続けばいいのに、とさえ思う。


 愛おしい我が家が近付いてくると、ラジワットに密着していた幸は、なんだか急に恥ずかしくなって来た。

 考えてもみれば、今晩幸とラジワットは一つ屋根の下で寝るのだ。


 、、、、あれー?、、、私、これから、どうしたらいいの?


 知恵の実を食べたアダムとイヴの、、、イヴの方、なんだか急に、自分が裸でラジワットの前に居るような恥ずかしさが襲う。


 ちょっと、、、これは、、まともにラジワットさんの顔を見られない!

 もういっその事、酒を煽って寝てしまいたいほどに、、、、いや、私、未成年だから!


 そして、あの祭りの異様なテンションの高さには、もう一つ秘密があった。

 それは、焚火にくべられた媚薬のようなアロマの効果と、出された甘い飲み物が発酵していて、少し酔ってしまう効果があった。


 そう、幸はこの時、程よく酔ったような状態である。

 体の芯が熱い、それは初めての経験。


 同時に、幸の眠気も刺激して、、、気付けば幸はぐっすりと寝てしまうのである。


 ラジワットは、そんな幸を大事そうにお姫様抱っこしながら彼女のベッドへ運んだ。

 申し訳ないと思ったが、借り物の礼装なので、上着だけは剥いだ。

 そして毛布を掛けると、幸福そうな幸の顔を満足そうに見つめながら、ラジワットもまた、自室で眠りに就くのである。


 二人は、それぞれ祭りの夢の中で、とても幸福な気持ちを共有しながら。

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