第27話 同士の情愛
「ええっと、、、、私にも、何が起こったのか、、私はラジワットさんに言われた通り、ただ真っ直ぐに棒を振り下ろしただけです」
すると、先に反応したのは剣士3人のほうであった。
「何?、すると君は、あの術式を、よく解らず行った、というのか?、流石に信じられぬ、、、おい貴様、ラジワット様を近衛連隊長と知っていて、何か含むものがあるのではないか?」
含むもの、、、、幸は、カウセルマンの言うことが、難しくて解らなかった。
しかし、この発言に少し腹を立てたのは、他ならぬラジワットであった。
「よさないかヨワイド、ミユキはそのような類ではない、そもそも、初めて出会った時から知っているのだから、そのような思惑が入り込む余地はない、第一、、、、彼女はこの世界の人間ではない」
一同は、一瞬、表情が凍り付いた。
「ラジワット様、、、、私めが口を挟む事でない事は十分承知で言わせて頂きます、この少女は危険です、それに、皇帝陛下にそれが知られたら、ただでは済みますまい、即刻この者を元の世界へ帰すべきです」
「解っている、ミユキは巫女だ、この世界にはない力を持っている、、、まさか、あのような術式を展開出来るとは思っていなかったが、私もそれが禁忌に触れる事は十分承知の上なのだよ、ヨワイド」
「それならば、せめて私たちをお供に加えて下さりませんか!」
「それはならぬ、第一お前たちには軍務があろう、大丈夫だ、息子の件が片付けば、必ずオルコに帰ってくる」
「軍務でしたら、問題ありません、必用であれば、私は軍籍を捨てる覚悟です、それでしたら、私だけでもお供に」
ラジワットは、すっかり困り果ててしまった。
お互いに譲らない駆け引き、それが、双方の優しさ故の駆け引きであることは、幸にも伝わった。
「ヨワイド、、、どうか困らせんでくれ、貴君の気持ちはよく解るが、考えてもみろ、帝国軍の上級将校が二人も一緒に国境をこえたらならば、タタリアに要らぬ詮索をされる、私一人でも危険な旅だ、どうか自重してくれないか」
ヨワイド・カウセルマンは、ラジワットの正論を聞き、納得せざるを得なかった。
それでも、悔しさを隠すことなく、拳は固く握られたままである。
「ミユキ、、、殿と言ったな、、、先ほどは済まなかった、私たちにとって、連隊長閣下はとても重要なお方、代え難いものなのだ、どうかそこを理解してもらいたい、、、、連隊長を、、、ラジワット様を、どうかよろしくお頼み申す」
そう言うと、深く頭を垂れるカウセルマンに、幸はただ恐縮するのみである。
それでも、この男同士の友情、上司と部下の愛情、なにかそれすらも超越した軍人同士の情愛のようなものを、幸は強く感じる事が出来た。
ラジワットは、3人を泊まってゆくよう誘ったが、彼らはそれを丁重に断った、近くに宿を取っているからと。
ならば、一緒に食事でもどうかとの誘いには、3人は快諾したのである。
こうして5人は、夜の酒場に繰り出した、、、5人は?。
「え、私は大丈夫です、皆さんで楽しんできてください」
「何を申されます、ミユキ殿が主役ではありませんか」
「そうだぞミユキ、君が今回の騒動の功労者だからな、一緒に祝いの席へ行こう、多分、村人も集まっているから」
ん?、、村人?、、なんで?
幸は、ラジワットの言っている意味が、最初理解出来ないでいた、しかし、それは村の中央から感じられる熱波のようなエネルギーを感じた瞬間、理解する事が出来た。
幸は当初、この3人の騎士に夕食を振る舞うものと思い、どのような料理を出したら良いか、正直困っていた。
騎士の口に合うか解らないし、流石にいつもの通りラジワットと調理なんてしようものなら、カウセルマン中佐に睨まれて、その鋭い眼力で穴が開いてしまうかもしれない。
5人は村の中央に向け進むと、この小さな村にこれほどの人が居たのか、というほどの人が集まり、まるで村祭りのような雰囲気だった。
「ラジワットさん、今日はお祭りか何かですか?」
すると、ラジワットは笑ってこう言った」
「何を言っている、ミユキ達が魔獣を倒した記念パーティーではないか」
ん?、、、んんん?!
え、それって、そんなに凄いことなの?
それで、これだけの、、お祭り?
「フェアリータ!!、こっち!、みんなもう待ちくたびれているわよ!さあ、早く!」
アシェーラと、さっき学校にいた女子生徒たちが、満面の笑みで幸を呼び寄せる。
ああ、本当に自分が主役のお祭りなんだと、嬉しさと恥ずかしさがこみ上げてくる。
幸にとって、初めての体験となった。
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