第24話 3人の剣士

「フェアリータ、あなた、どうする気?、危ないわ!」


 アシェーラが幸にそう叫ぶ。

 無理もない、4頭もの大きな魔獣を前に、幸は崩落した建材の一部を木剣のように持つと、破壊された教室から出て行こうとするのだから。


「君、下がりなさい、魔獣は興奮している、今は刺激してはいけない」


 教員も、後ろの方から叫ぶ。

 もちろん、自分の剣術で、この獣を撃退出来るとは思っていない、それでも、もう運命に流されたくない、自分の道を、自分自身で切り開いてみたい、幸はそう思っていた。


「お嬢ちゃん!、そんな棒で戦うなんて、無茶だぜ!」


 振り返ると、獣と対峙する幸との真横に、剣を持った3人の男達が立っていた。


「おおお、剣士様、剣士様が助けに来てくださった!」


 教師が窓の外を見て、そう叫んだ。

 、、、剣士?、これが本物の、、、。

 幸は、ラジワット以外の本物の剣士を初めて見た。

 3人とも、揃いの装備に揃いの色、、、、軍人だろうか、なんだか妙にカッコいい。

 

「勇敢な娘よ、下がっていなさい」


 一番リーダー格の男が、幸にそう言うと、剣を抜いた、それに合わせるように、残りの二人も剣を抜く。


 そして、幸と対峙していた一番大きな魔獣は、それを見て戦う相手を幸から剣士達へと変更させた。

 幸は近くに居て、獣が興奮しているのを感じた。

 それは熱気とでも言うのだろうか、凄まじい圧力だ。

 

 剣士と獣の対峙は、とても長く感じられるほど、間を置いたものだった。

 そして、獣が前足を蹴ったその瞬間、剣士3人は良く訓練された兵士の如く、連携して獣に襲いかかった。

 それは、幸が東京の組事務所で見た、ラジワットの動きによく似ていて、とても人間業とは思えなかった。


 先頭の獣が一瞬で切り倒されると、剣士の刃は2頭目、3頭目に同時展開してゆき、3頭の獣は一瞬で倒されてしまう。

 そして、剣士の刃は、最後、一番小さな獣に向けられる。

 その時だ、幸が駆けだして、小さな獣の前に立ちはだかったのだ。


「勇敢な娘よ、そこを退きなさい、魔物は小さくても危険だ、さ、我々で駆除するから」


「だめです、この子、とても怯えています、、、私が引き取りますから!」


 幸は、頭が真っ白な状態で、思わずそう叫んでいた。

 それでも、小さいとは言え、魔物は魔物、幸の背中を頭部で押すと、幸は前へ突き飛ばされた。

 その瞬間に剣士の一人がものすごい勢いで倒しに入る。


「やめて!」


 幸がそう叫び、手に持った棒を真っ直ぐ振り下ろした瞬間、剣士と獣の間に閃光が走った。

 その場に居た者達は、それが何であるか一切解らないでいたが、3人の剣士には、それが理解出来ていたようで、もうそれ以上、幸と獣に近付こうとしなくなった。

 幸が起きあがり、獣の方へゆらゆらと近づき、先ほどの衝撃からか、意識を失って倒れてしまった。

 小さな獣は、幸に近付くと、口を使って幸の髪を撫でるような仕草をした。


「副連隊長、、、、これは」


「うん、凄いな、これほど幼いのに、魔獣を使いこなすなんて、、、」


 薄れゆく意識の中で、慌てて駆けつけるアシェーラ達女学生の姿と、そんな事をつぶやく剣士達のやりとりを聞きながら、幸の意識は飛んだ。

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