第22話 フェアリータ
そうだ、確かにアシェーラの言うとおり、自分はラジワットにとって、一体何なのだろう。
随行者?、生徒?、扶養?、、、配偶者、、、な訳ないか。
「私は、、、ラジワットさんの巫女です」
もう、幸には、それしか思いつかなかった。
まあ、無難な答えだろう、程度に幸は考えていたが、アシェーラのリアクションは、幸の予想外のものだった。
「あなた、、、まさか、、巫女様なの?、本当に?、その若さで?」
ん?、、あれ?、、、私、なにか言った?、、地雷踏んだ?、感じ?
幸は、まさかアシェーラがそれほど驚くとは思っていなかった。
言葉、合ってるよね、巫女で、、、。
覚えたての言語で、自分はうっかり間違った単語を言ってしまったのではないか、と不安になった。
「巫女って、そんなに凄いことなの?」
「はーっ、やっぱり都会のお姫様は違うわね、あっちじゃ巫女様なんて沢山いるのかもしれないけど、この村には、来た事すら希よ、もう何年も来ていないと思うわ」
ああ、なんて余計な事を言ってしまったんだろう、と幸は言葉選びを後悔した。
適当に従者とでも言っておくんだった。
「ほら、見えてきたわフェアリータ、あそこが学校よ」
ん?、フェアリータさん、学校だそうですよ、、、と思っていたが、それが自分だと認識するのに、少し時間がかかった。
やはり、このフェアリータというのが自分だと認識するまでには、少し時間がかかりそうだ。
「おーい、アシェーラ!」
彼女が指さした学校には、同年代の女子が数名待っていたらしく、遠くから自分たちを見つけると、手を振ってアシェーラを呼んだ」
「凄い、本当に連れて来ちゃうなんて!」
「ええ、思ったより話しやすい方だったわ、紹介する、巫女のフェアリータさん」
すると、やはり小さく歓声が上がると、幸は質問責めに会った。
国が違えどお年頃、男女が二人きりで旅をしているなどという話は、やはり女学生の大好物である。
覚えたて西タタリア語をフル回転させても、彼女達の質問を訳すのに追いつかないような、それはまるで機関銃のような怒濤の質問の嵐。
それでも、幸の耳にはっきりと識別できる語彙がった、、、。
「あなたは何番目の奥様を狙っているの?」と。
それは、幸が一番聞きたくなかった言葉かもしれない。
ラジワットに子供がいる以上、当然独身ではない、しかし奥様の話は、敢えて聞かないようにしていた。
そんなデリケートな空気の中で、飛び出したのだ、この単語は。
「何人目の奥様」
それは、この世界が、普通に一夫多妻制を容認している事を如実に示していることだった。
「私は、ラジワットさんの妻になる予定はありません」
なんとなく、この話は胸がザワザワした、だから、早く話題を変えたいと思っていた。
しかし、幸が妻の座を狙っていない事が解るや、今度はラジワットを紹介してほしいという申し出が殺到した。
「あの、ラジワットさんって、どのような方なんですか?」
すると、それまで機関銃のように西タタリア語を話していた女子たちの会話がピタリと止んだ。
「まさか、、、フェアリータさん、、、、ラジワット・ハイヤー様が、どのようなお方か、ご存じではないのにあれほどの御寵愛を受けていらっしゃるの?」
どうやら、ラジワットは有名人のようだった。
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